第48話 神器を探して2
「船はあるかしら?」
イース湖は、面積19 km2、周囲長19.8km、最大水深50mと少し小さめな湖であった。この湖は、養殖業が盛んだったのか至る所に
「随分荒れた場所ね」
陸地には、爆撃の痕跡が目立つ。槍、剣、弾薬と大筒の砲台が無造作に放置されていた。
「…(ここで何があったのかしら、私達はあの対戦時には、この場所に立ち入っていない筈。少なくとも私の記憶する中では、アーネスもこの場所を攻撃場所に指定していない)」
「周囲を観察してみる」対岸を挟んだ「同じ場所に大筒」がある。小型船舶はなく、やたら「荷物と弾薬が多い」し無造作に放置されている。極め付けは、4m超えの「よくわからない」バリケードがある。「しかも一部、破損」しており、激しい「何かを防ごう」とした痕跡がある。
「おい、セーレ。どうしたんだ?」
「今、考え中なの。少し黙ってて」
マークに話し掛けられたが、仮説の考えを続けた。セーレが「導いた仮説」はこうだ。
まず、大筒が「ある向きで固定されている」のは「敵対ではなく、共通の敵と戦っていた」のではないか。
次に、「船舶がない」のなら「陸地戦闘をしていた」可能性がある。弾薬数から「その戦闘は大規模なもの」と想定される。
最後に、バリケードの大きさから何か「巨大な攻撃を防ごうとした形跡」がある。そこから、導き出せるのは、何か「巨大生物との大規模戦闘があった」ぐらいかしら。「くだらない」仮説ね。
「ごめんなさい。大丈夫、特にあなたへ話すことでもなかったわ」
「そうか、それならいいが」
マークは先導するも「戦闘の激しさを主張する」ものばかりで、「大した収穫は得られなかった」セーレは湖の周囲を捜索したが、小型船舶の貸出屋もなく、神器捜索は困難を極めた。
「セーレ反応は?」
「うーん、周囲1kmには反応はないわね」
黒縁眼鏡を掛けて、神器の反応を追うが、手掛かりが見つからない。
「ダメだわ」
「ちくしょう、湖の中心あたりに行けば反応があるかもしれないのに」
「うーん、そろそろ私を頼ってくれませんか?」
セーレとマークは気が付いた。「そうだ」亀がいたと。
「困難なんてなかったわね…」
「そうだな」
セーレとマークの呆けた顔をよそに、ビィシャアは、亀の錬成を始めた。
「少し聞いていいかしら」
「何ですか、セーレ?」
ビィシャアは錬成作業の手を止めて、セーレの話に耳を傾けた。
「作業中、ごめんなさい。あなたのウエストポーチにある錬成石について聞きたいの」
「はい、どうぞ」
マーク日記帳、ビィシャアの石についての記録。
その1、ウエストポーチの石の調達。この石は自然界の石を拾い集めて、別の袋に収集していた。
その2、どうやって作る。工程は全部で3つある。「工程 1/3」袋から取り出し、体に流れる意識と念を込めて、石の質を上げる。この石の段階を「
その3、「工程 2/3」念石を半日放置し、その石を燃やす。この作業は、ビィシャアが手に石を持ち3分ぐらい燃焼させる。この石の段階「
その4、「工程 3/3」燋石を30分放置し、その石を金槌で叩く。この作業は「スピードが命」であり、とにかく早く叩く。なぜなら「工程 1/3」で込めた「願いの念」が「溢れてしまう」からだと言う。叩き続けて、5分で完成。この石が完成形「
その5、石の最大数量。最大という「言葉が正しい」か不明だが、50個ぐらいは「在庫がある」ようにしている。
その6、錬成に必要な数量。精製物の「大きさ」に左右される。3m以下の馬なら1個。3m以上の亀なら2個。3mで1個という「考えが正しい」と言える。因みに「ビィシャアが呼び出せる」最大の精製物は9mの虎が呼び出せる。
その7、錬成の召喚時間。3mは30秒、3m以上は1分半、9mは5分と呼び出し時間に「ばらつき」がある。
「わかったわ、ありがとう」
「どういたしまして、あ、そうだ。ちょっとだけお花を摘みに行ってきてもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
セーレは、ビィシャアが来るまで、その場を動かず待機した。マークは周囲に「何か使える物がないか」遠くの方まで探索範囲を広げた。
10分後、ビィシャアが戻ってきた。
「ごめんなさい。直ぐに錬成します」
「生理現象は誰にでもあることよ。気にしないで」
そのとき、遠くの方で大きな声が響いた。
「セーレ〜」
声の方向を振り返ると、マークが小型船の上に乗り、オールを使いこちらに向かって来る。
「マーク、何してるんですか?」
「歩いてたら、小型のボートを見つけたんだよ。今からそっちに行くから待っててくれ」
そのとき、セーレの黒縁眼鏡に黄色点滅の反応があった。その反応に驚き、慌てて大きな声でマークを呼び止めた。
「神器の反応が合ったわ!」
「え…何だって……?」
マークは、セーレの声を聞くため、オールを漕ぐのを止めて立ち上がった。突然、銃声が2人の会話を遮る。
「何?」
マークは左胸を打たれ、血を流している。口をパクパクし「何かを伝えよう」とする。そして、白目を向き、湖の中へ落ちていった。
「え、マーク?」
セーレは突然の出来事に、頭の理解が追いつかなかった。
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