第38話 追い詰めたのは
「セーレ様。また貴方様をお迎えできませんでした。なぜ、我らの想いは、すれ違うのでしょうか」
優勢思考の教団で、サーメスは十字架に祈りを捧げていた。そこに、扉をノックし入室する男がいた。
「サーメス。入るぞ」
薄暗い部屋の扉を開けたのは、マーガルであった。部屋の中は、不気味な蛇、鷹の銅像が左右対称に並び、部屋は黒のカーテンで締め切られていた。
「
「マーガルよ。セーレ様はまたしても、我らの想いを理解頂けなかったようだ。邪魔な虫を潰せば、
「わかるぞ。お前の辛い気持ち、我がシルカ様も姿、痕跡すら見当たらない。故に我らは、お互いに歩み寄り協力し合わなければならない」
サーメスとマーガルは、硬い握手を交わし気持ち悪い笑みを浮かべた。
「何だよ、この部屋。趣味悪いな」
「今、マーガルと大事な話をしている。何の用だ、オラクレ!」
「急に怒んなよ、サーメス。ボスからの伝令を伝えにきた」
マーガル、サーメスは、薄暗い部屋を移動し、大きなテーブルと椅子が4つある部屋へと移動した。
「オラクレ、ボス(司祭長様)の伝令とは何なのだ?」
「マーガル、焦んなって、デロスが来てから話をするよ」
「あぁ、司祭長様。ここ最近、姿をお見せしなかったのに。何か神からのお告げでも受けたのでしょうか」
サーメス、マーガルとオラクレが会話をしていると、扉を開ける音と共に、空きの椅子にデロスが腰を下ろした。
「あのジジイ、急に何の用かしら」
「おい、デロス。司祭長様と呼べ」
「うるさいね、サーメス。私の爺さんなんだから、どんな呼び方でもいいだろう」
赤ローブを着た4人が同じ部屋に集まった。マーガルは伝令内容が気になり、オラクレに催促を促した。
「さて、オラクレ。伝令を」
「はいよ、読むぜ」
オラクレは、緊張した面持ちで2つ折りの白の古紙を開いた。少しびっくりした表情になり、記載された文字を読み上げた。
「もうすぐ、帰るよーん」
4人は、腰を抜かし少し呆れた顔をした。
「あのジジイ、どうでもいいことを報告しやがって」
「ふふふ、司祭長様は御乱心してるだけ。この前は、セーレ様の居場所を教えて下さったんだ。きっとお疲れなのだろう」
「サーメス。わかるぞ、その気持ち」
「とにかくだ。ボスが帰ってくるんだ。これで、我らの活動も本格化できる。サーメスは、セーレ様。マーガルは、シルカ様。デロスは、アーネス様。俺は、ルーサー様。この4人をターゲットとして、布教活動を始めよう」
教団幹部達は、今後更なる布教活動を進めるべく、躍進していく。
「ここまで、来ればいいかな」
「ねぇ、ちょっと、あの人。カッコ良くない」
「うそ、ほんとヤバい。イケメンだ、きゃあー」
顔だけの男、ルーサーは逃げ回っていた。この街は、
「お嬢様方、ありがとう。宜しければ、今晩……」
「え、何。かっこいい」
ルーサーが女を口説いていると、筋肉質で上半身にハーネスメンズを装着し、黒ズボンを履いた男が突撃してきた。
「ルーサー!!」
「ゲ、もう追いついて来たのか」
「何あの男、変態男よ。きゃあー」
「お嬢様方。バクは変態ではないよ。そう筋肉美を自慢したいだけだ」
あまりの衝撃的な出来事に2人の女性達は、固まってしまった。しめたとばかりに、ルーサーは走り出す。しかし、バクはルーサーの背中へタックルを加えた。
「痛い、痛い」
「ルーサー、久々に会ったのに、逃げるとは失礼何じゃないか」
「変な格好の奴がいれば、普通逃げるわ。離してくれよ、バク。悪いことなんて、何もしてないよ」
「悪いことしたのか、白状しろ」
「いや、してないよ。あ…眷属ネズミを悪用したか……」
「眷属ネズミとは、何だ!!」
「うるさいよ、とりあえず離してくれ」
バクは、ルーサーの拘束を解いた。
「痛いな、君みたいに筋肉はないのだから、もう少し優しくしてくれ」
「ルーサーは、もっと筋肉をつけろ」
「話が通じないな」
「ところで、眷属ネズミの悪用とは何だ」
「頼まれただけなんだ。このネズミを使って、セーレに接近しろって」
「どういうことだ」
「あのネズミは、赤ローブの爺さんから渡されたネズミなんだ。何でもその人がいる場所がわかる術式が施されているらしいんだ」
バクは、ルーサーの顔を左手で軽く平手打ちした。ルーサーは、地面に寝転んだ。
「顔はやめてくれ。急に何で叩くんだ」
「ただ何となくだ。お前がしたことで、セーレが窮地に立たされたかもしれんしな」
「そんなことある訳ないだろ」
ルーサーは、服に付いた土を払いながら、立ち上がった。
「もういいだろう。バクと会えたのは懐かしいが、もう戦争は終わったし、関係ない筈だ」
「ルーサー。バクは、困っている」
「困っている? 何がだ」
「バクは、世界中を旅して迷子だ。久々に仲間と会えて、安心感を得ている」
「まさか……」
「バクは、暫くお前と行動を共にする」
ルーサーは、口から変な叫び声を上げた。バクは、その様子を見て、嬉しそうに高笑いしていた。
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