第三章 <転> 孤独を越えて
第36話 ノエル 傷ついた妖精を拾うルナ
꧁————前話あらすじ————꧂
ルカは不思議で仕方がなかった。自分をストーカーし、漏れ聞こえて来る心の声は惚れているに違いないルナが、何故親密さが増そうと言う時に遠ざけようとするのか。
それどころか他の女子に声までかけて苛立たされるルカ。わざと気を引こうとするのか、或いはからかっているのか。
我慢出来ずに遂に寝室まで押しかけ真相に迫ろうとした時、突如ルナの様子がおかしくなった。
それは神官から注意喚起を受けていたルナのトラウマ。地雷を踏み抜いたと思った。
慌てて取り繕いギリギリの所で持ちこたえた二人だった。
꧁——————————————꧂
<本文>
後日――――
落ち込むルナを優しいねぎらいで懸命にいたわるルカ。
だが取り繕ってもらう程にバツ悪く遠ざけてしまう。しばらくギクシャクとした関係となってしまう二人。
そこで策を講じたルカ。
周辺国での大量誘拐の情報をもぎ取って来ていたのだ。そこへの出動を提案すると、『それは今すぐ行くしか無いでしょ!』と鼻息荒く飛びつくルナ。
柔らかな目で『やっぱルナにはこれが一番だね』と嬉しそうにつぶやいた。
***
現地へ移動しつつルカは千里眼で情報収集。到着と同時に敵の魔導師の急所へとサイキック破裂攻撃開始。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093083553210415
『バフォンッ』と、一気に五体を撃破。
先日のサイ魔人戦でそのパワーに競り負けたルカは更なる強化の為、当面は自分にも多めに戦わせて欲しいと頼んでいた。
数百の湧き出る大量のザコはルナの千倍速カラテで一網打尽。他の戦士なら屈強だろうとその余りの数に手を焼くところだが、ルナには何の苦労も無い。
先ずは急いで隔離部屋へと救出に行く。そこには様々な年齢層の女子が50名以上も監禁されていた。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093083746486334
「皆さんもう大丈夫ですよ~。[取り返し隊]で~す! 犯人はやっつけたので今から帰りますが、大分遠い所に連れられてるので護送車が来るまで外へ出て待ってて下さ~い!」
二人して通りまで誘導し到着を待つ。表情が安堵へと変わってゆく被害者の子たち。
「今回のは年頃っていうより小さな子まで……もう何かなりふり構わないって感じ」
「敵も何かに焦ってるのかな? 上からのパワハラとか」
やがて2台の大ぶりな護送車がやって来て乗車開始を見届ける二人。
「ねえルナ、あの子、どうしたんだろ」
そんな中、乗車列の最後尾にずっとシクシク泣き止まない妖精の幼児。体は震え、目は怯えきっている。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093083746492132
「どうしたの? おうち、分からないの? お名前は?」
「……のえ……る……」
「何歳? お父さんお母さんは?」
「3才……むかし、しんだからいない……いつもねーねと。……でもねーね……つれてかれそうになって……
のえるが『やめて』っていったら……おまえもつれてくっていわれて……ねーね、まもってくれようとして、まほうでたたかったら……」
姉の惨殺を目の当たりにしたショックのフラッシュバックで泣き叫ぶ。
「ぎゃあ―――――っ、やだ―――――――っ」
思わず抱きしめるルナ。目に涙が溜まる。
「もう悪者は倒したよ……大丈夫……もう安全だからね……」
絶叫して泣き喚くノエル。更に強ばった青い顔となり
「うわあああ―――っ、しんじゃった―――――っ!!」
眉を
「可愛そうに、許せない……ねえ、この子今日はほっとけないよ、ルカ、連れて帰ろ」
「うん、とりあえずその方がいいよね。明日にでも他に身寄りがないか聞いてみよう」
***
そして寝ている時も抱き続けるルナ。
『あぐううっ』
と激痛に
「何でまたそんなスゴイ傷に! ヤッパリその子が?!」
「分からないけど自己治癒出来るから大丈夫
―――抱いてると発作が弱まるの」
「でもやっぱヤバイよ! 私、召喚された司祭に『妖精は魔力がやたら強いのがいるから気を付けろ』って! それにそんな沢山の深い傷を何度も受ける痛み自体は……」
「じゃあ見捨てろって言うのっ?!」
鋭く返すルナ。より愛おしそうに見つめ強く抱き直す。その後も度重なる引き裂かれ現象に耐え続け、3日3晩ノエルをその胸で温めた。
「ね、少し代わるよ……これじゃルナが先に参っちゃうよ。私はルナも心配……」
「アリガト。でもたまに優しい顔になる時が出て来たの。もうちょっと落ち着くまで……」
……親の虐待で泣いてるといつもお兄ちゃんがこうしてくれてたな……
多分こんな風にどうしようもなくボロボロで……お兄ちゃん……きっとこんな気持だったんだね……。
ああ、ボクの治癒魔法でこの子の心とかも治してあげられたら良いのにな……
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075897556413
「そうだ! ねえルカ、サイって精神の力が物や心に作用するんでしょ。それで何とかならないかな? そもそもルカはサイの基礎力が最初から高いけど何かやってたの?」
「私の天ノ川流合気術では敵の動きが読めるよう『整心』という第六感を鍛え、気を整えて心身の最高のパフォーマンスを引き出す為の修練法がある。
一種の気功とマインドフルネス。毒親かつ地獄の特訓でも私が変にならなかったのはそれを毎日やってたからかも」
「へ~……じゃあそれをさ、自分以外にも出来たりする?」
「対人で気を練って相互に整心するのは天ノ川流合気の得意分野だよ」
「そしたらそのサイの全力で対人の整心気功をこの子にやって見てくれないかな」
「うん、そうだね。妖精に気の錬成が通じるかは分からないけど」
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093075897561433
そうして更に2日ほどルナに抱えられながらルカの全力〈サイ・
その効果が作用したのか、次第に表情が柔らかくなるノエル。
引き裂き現象も消えて、遂にその可愛い口から
『ふぁあああ……』
と大きなアクビが出た。半開きの口で顔を見合わせる二人。
笑顔と共に二人も同時にアクビが出て思わず声を合わせて笑った。
「ボクたちも少し休もっか……」
そして二人で抱き抱えて仲良く眠った。
疲れが出たのか、深く、それは深く――――
翌朝、ルナ達が目を覚ますとノエルがいない。
「ノエルちゃーんっ!」
大声で名を叫ぶ。
慌てて家中探したが見つからず、青い顔で外に飛び出るルナ達。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093083746498353
< continue to next time >
――――――――――――――――――――
もし、こんな三人が報われる日が来るのを応援しても良いと思う方は、☆とフォローをいただけると嬉しいです。
――――――――――――――――――
イメージBGM (youtube)
▼ Ⅰ Love you, But Ⅰ′m Letting Go
https://youtu.be/te4OcZOoA6g
(激しく傷ついたノエルをじっくりと癒して行くような慈愛に満ちた曲)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。