雑魚ボスの悪役貴族(テイマー)に転生した俺、ゴミみたいなステータスのせいで何もテイム出来ない……と思いきや、奴隷なら誰でもテイム可能だと気付く~美少女達を使役してガンガン強くなり、最強へと成り上がる~
下等妙人
第一話 どうんすんのコレ
アルカディア・オンライン。
世界同時接続数が常に一〇〇〇万を超える、歴史上最高峰のVRMMO。
そんな超ビッグタイトルが今、終焉の時を迎えようしていた。
「マジでふざけんなよ、運営……」
塔型のダンジョン。その最上層にて。
眼下に広がる絶景を見つめながら、俺は独りごちた。
「何をどうしたら、あんなやらかしが出来るんだよ……」
アルカディア・オンラインのサービスが終了を迎えるのは、運営と開発を担う会社が桁外れな罪を犯しまくったことに端を発する。
裏社会との繋がりだの、先日起きた大統領暗殺に関わっていただの……
それらの罪が暴かれた際には、よくもまぁこれほどあくどいことをやっていたな、と、誰もがそう思ったことだろう。
ゆえに会社の倒産とアルカディア・オンラインのサ終は、残念ながら当然としか言いようがなかった。
「……お前とも今日で、お別れだな」
ふと視線を横へずらし、巨大な魔物の亡骸を瞳に映す。
馬鹿デカい虎のようなそいつは、ゲーム中でも最強レベルのボスキャラである。
俺はこいつを報酬アイテムを目当てに、数え切れないほど倒し続けてきた。
パーティーなど組むことなく、単独で。
「もうアレだな。お前が唯一無二の友人だったな。最終的には」
亡骸となった魔物へ笑いかけるが……なんとも虚しい。
「次にやるゲームでは、パーティープレイとか、やってみようかな? ……いや、やっぱ無理だわ。人と話すの難しいし」
コミュ障ぼっち(アラサー)にはネット上の繋がりさえ、キツいものに感じてしまう。
……と、そんなことを考えている最中も、終わりの瞬間は刻一刻と近付いていて。
「あと三〇秒、か」
目前に現れたメッセージウインドウ。
そこに表示されているタイマーがゼロになれば、本当に全てが終わってしまう。
「もう少しばかり、やってみたいことがあったんだけどな……」
アルカディア・オンラインは無数のスキルから一つを選択し、それを元にキャラクター・ビルドを楽しむゲームだ。
その大半は遊び尽くしたのだけど、それでもまだプレイしていないスキルがあった。
そう、たとえば……《テイム》とか。
「まぁ、後悔したところで、しょうがないよな」
残り一〇秒。
そこで俺はふと、空を見上げた。
闇夜に浮かぶ紅い月が、なんとも美しく……
「……ん? あれ?」
月の一部に。違和感を覚えた。
「あんな黒い部分、あったっけ?」
それがアルカディア・オンラインの世界における、最後の台詞と――
なるはずだった。
次の瞬間、意識が暗転し、そして。
『情報変換が完了しました』
『プレイヤー権限を獲得』
『――ようこそ、アルカディア・オンラインの世界へ』
◇◆◇
結論から言おう。
俺はアルカディア・オンラインの世界に転生した。
それ自体はいい。
実に喜ばしいことだ。
しかしながら。
転生先は自作の最強キャラ、ではなく。
とある伯爵家の子息であった。
名を、ゼクス・アルトリオンという。
字面だけを見ればそこそこ強そうに見えるかもしれない。
だがその実体は、とんでもねぇクソ雑魚ナメクジである。
ゼクスはプレイヤーのほとんどが最初に倒すであろう、チュートリアル的なボスなのだ。
ゆえに当然のこと、極端に弱く設定されており、慣れた者なら目を瞑っていても勝てる。
そんな彼は盗賊の下っ端的な存在としてプレイヤーの前に立ちはだかるのだが、元々は高名な伯爵家の出身であった。
しかしあまりの雑魚っぷりが災いし、父に見限られ、追放処分となる。
彼を倒すと手に入る装備品には、ゼクスの過去にまつわるフレーバーテキストが記載されているのだけど……これがまぁ~、ひっどい。
他人事であった頃も彼には同情していたものだが、当事者になった今では、それどころの話ではない。
今はまだ伯爵家の子息。
だが近い将来、あまりにも酷い末路を遂げてしまう。
……そんな将来的な不安も、十分に忌々しいものではあるが。
輪をかけて不愉快なのは、やはり。
「今日もしっかりと指導してやるよ、ゼクス」
小規模なコロシアムといった外観の、訓練場にて。
こちらを見下した態度で笑う、一人の少年。
アルトリオン家の四男にしてゼクスの異母兄弟である、ローグ・アルトリオン。
こいつがまぁ~、ほんっとにヒドい。
ゼクスには十数人の異母兄弟が居るのだけど、そのほとんどが無害である。
しかし、このローグだけは例外で、
「なぁゼクス、お前のスキルで
偶然が必然か、ゼクスのメインスキルは《テイム》であった。
これは使い手次第でアタリにもハズレにもなり得る、可能性の塊みたいなスキル、なんだけど。
俺の場合は。
「――来い、アスタリア」
と、こんな感じで呼び出した我が使役物は、強大な魔物……などではなく。
「にゃ~ん」
そこらへんに居た、真っ白な子猫である。
「ぶはははははははは! 何度見ても笑えるなぁ、おい!」
こちらの劣等生ぶりを嘲笑うというだけでも、けっこうムカつくのだけど。
しかし、こいつの場合は、そこからさらに。
「なぁ~にがアスタリアだッ! 死ねオラァッ!」
信じられるか?
こんなにも可愛い子猫を、容赦なく蹴り殺そうとするんだぜ?
猫愛好家としては、マジで許せん。
「くぅッ……!」
身を挺して子猫を守る俺の全身を、ローグは容赦なく蹴り続けた。
「ははははは! せっかくの《テイム》スキルも! 宝の持ち腐れってやつだな!」
彼の暴虐を止める者は居ない。
すぐ間近で見ている戦術指導者、ルブルスも例外ではなかった。
むしろ彼は無機質な顔で、
「良き蹴りにございますな、ローグ様」
などと讃える始末。
これがまかり通るのは、ローグという少年の実力と、その将来性にある。
まずその身に宿したスキル。
それは原作において、初心者救済用と評されし当たりスキル……《剣聖》であった。
そんなローグは現段階において、同年代最強格とされている。
また、このクソ野郎は原作シナリオにおいても大ボスとして登場しており……
ありとあらゆる意味において、俺と奴の間には、超えられない壁というものがあった。
「ふぅ~、今日もいい汗掻いたわ~」
こちらをボッコボコにした後、ローグは爽やかな笑みを浮かべ、
「お前みたいなゴミクズでも、存在価値ってモンはある。オレの玩具で在り続ける限り、お前のことは追放しないよう、父上に頼み続けてやるよ」
あいつはこちらの頭に唾を吐きかけてから、訓練場をあとにした。
「……弱きは虐げられる。呪うのなら、ご自身の無能ぶりを呪うのですな」
ルブルスに至っては、「お前なんで死なねぇの? はよ死ねば?」みたいな顔をしてくる。
ゼクス・アルトリオン、一五才。
追放された後も、最低最悪の人生だが……
追放される前の段階でも、十分に、生き地獄であった。
~~~~あとがき~~~~
ここまでお読みくださり、まことにありがとうございます!
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今後の執筆・連載の大きな原動力となりますので、是非!
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