モダンコースター
作者
仕事人ほど紛れてる①
とある住宅街に住む十七歳女子高生のひな。
あいにく恋人とは縁がなく、バスケ部に所属し放課後は部活に明け暮れる日々。
今日は友人のさらとテーマパークに行く約束をしている。
さらとは中学の時から所属していたバスケ部で出会い、意気投合して仲良くなった。
二人は優秀選手として共に戦い良い成績を残してきた戦友ともいえる仲だったけれど別々の道を歩むことになった。
ひなはバスケ部の特待生として強豪校に進学。さらは家の都合でやむなく特待生としての道は閉ざされてしまい、近所の女子高へ進学する運びとなった。
二人は時々連絡を取っていたけれど、部活の忙しさに休む暇もなく学校の都合でたまたま休みが取れて、さらとも予定があったのでせっかくだからテーマパークにでもという流れになった。
別々の高校になってから会う機会もなくなってしまい、久しぶりの再会だった事もありさらに会えるのをすごく楽しみにしていたひなだった。
「行ってきまーす!」
ウキウキで待ち合わせの駅に出発した。
さらは元気かな…………
テーマパークでは何に乗ろうかな……
想像を膨らませてふわふわスキップをするように歩いていると曲がり角を曲がった瞬間、杖をついたお婆様にぶつかった。
「うわっ‼︎」
お互いが逆方向によろけて目を見合わせた。
「ごめんなさい‼︎大丈夫ですか⁉︎」
すかさずすぐにお婆様の手を取った。
「大丈夫じゃ。でもなぁ、お前さん。体が宙に浮いとったら悪い輩に捕まるでのぉ」
「え?…あのぉ…私宙に浮いてましたか?」
「浮いとったぁ。風船のようにふわふわとなぁ」
ん……?
大丈夫かなこのお婆ちゃん………
浮くわけない……
だってちゃんと歩いてたし……
お婆様はすぐに歩いて行ってしまった。
変なの…………
曲がり角曲がったらすぐにぶつかったんだから、そもそも私の事見えてないはずなのにあの一瞬で分かるはずがない…………
「ん~まぁいっか。駅へ急ごう!」
ひなは待ち合わせ場所の駅へ向かった。
すでにさらは到着していた。
「さらぁ!」
大きく手を振りさらの方へ向かって行くひな。
「ひなぁ!久しぶり」
「ほんと。久しぶり。なかなか会えなかったしね。さらに会えるの楽しみにしてたんだ」
「元気してた?」
「うん」
少しウェーブがかったショートの癖毛に茶色の瞳。そしてサバサバした性格のさらととても気が合うひなだった。
二人は積もる話に花を咲かせながらテーマパークへ向かった。
「ねえさら聞いてよ」
「ん?」
「さっきさ、駅に向かう途中でお婆ちゃんとぶつかって変な事言われたの」
「なんて言われたの?」
「私が宙に浮いてるとか、風船みたいにふわふわしてたとか、悪い奴に捕まるとか、訳の分からない事言ってたの」
「何それ」
「意味分からないよね」
「まぁ、でもぶつかってもお互い無事で良かったんじゃない?」
「うん」
そうこう話をしているうちにテーマパークに到着した。二人は久しぶりの再会で胸が弾み、ウキウキモードでパーク内を存分に楽しんだ。
お昼時になりパーク内のお洒落なレストランのテラスでランチをする事になり優雅なひと時を過ごした。
そして午後からの予定を立てている最中だった。
「あれ?さら、あれ見て!あの建物前からあったかな?」
ひなが指を差している方向を見てみると、見覚えのないアトラクションが見えた。
「本当だ。新しくできたのかな」
「でも、新しくできたアトラクションにしては今風じゃないよね?」
「うん。確かに」
その建物は少し古ぼけた見た目はレトロでテーマパークにしては大きなお化け屋敷のような外観だった。
「せっかくだから乗ってみようか」
「うん」
二人はおしゃれなレストランで会計を済ませた後、入口にモダンコースターと表示された見覚えのないアトラクションに入って行った。
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