第5話:二人目の居候。

愛彦は母親と兄を呼んで、一部始終を話した。

母親も兄も愛彦の後ろで、神妙にしてる中国人風の女を見て、


「どこから連れてきた女」だとか 「勝手に女を連れ込んで」

だとか愛彦を攻めたが、本心は 愛彦の性格からして、そんな器用なことはできないと分かっていた。


風呂敷包のいきさつと、それが善右衛門の持ち物だったことから

半信半疑ではあるが、愛彦の言ってることを信じた。


生前ほとんどの国に行ったことがある善右衛門。

ひいじいさんなら、そんなこともあるだろうと、母親も兄も思っていた。


それに、なにより目の前にいる飛飛を見て納得せざるを得なかった。

飛飛の透けた衣装から両方の乳房が透けて見えていたので、兄は目の

やり場に困っていた。


そう言えば母親が自分が子供の頃、中国人の女の子が店に出て接客していたことを

おぼろげに覚えていた。


いくら否定しようが目の前の現実を受け入れるしかなかったわけで

それに年頃の娘を追い出して、ましてや「ホームレス」になれとも言えなかった。


その間、飛飛は愛彦の後ろにいて 時々、指をくるくる回しながら、訳の分からない言葉をしゃべっていた。


「分かりました・・・しかたないですね、これもひいおじいさんが残した

形見だと思うことにします・・・」

「それから、うら若い娘がそんな下着みたいな格好で家の中をうろうろ

されたら困りますからね・・・」


母親は皮肉たっぷりにそう言った。


「愛彦さん、あなたこの子の着るもの買ってきてあげなさい」


「え、僕が・・・」


「他に誰がいるの・・・これはあなたの責任です」

「お願いしますよ」


「まいったな・・・女性ものの服なんて分かんないよ」


そうして飛飛は愛彦に続いてなしくずしに如月家の二人目の居候になった。

それから、夜になると彼女は愛彦のあとを金魚のうんこみたいに、ついて回った。


「ね、お母さんも言ってたでしょ、あなたの責任だって・・・」


「俺たち、相思相愛だもんな・・・」


「そうだよ、ヨシヒコ」


「あのさ、そうやってどこにでもついてくるつもり?」


「そ、愛彦は私の彼氏だから、もし愛彦になにかあると 私にもなにか影響を及ぼすかもしれないでしょ、

私の役目は彼と一緒にいることと彼を守ること・・・私の仙術はそのために

あるの 」

「それに​、することないし・・・ヒマなんだもん」


「家の中で僕を守ったってしょうがないだろ?」


「いい?・・・私とヨシヒコは、一心同体」

「善右衛門が生前に私を鏡に封印したのは、私が鏡の外に出てる時に、 自分が事故かなにかで亡くなったら、私もいっしょに消えるんじゃないかと思ったから・・・

だから自分がそうなる前に私を封印したんじゃないの? 」


「だからヨシヒコになにかあったら私までヤバいかもしれないでしょ」

「分かった?」


「なんで、そう言う理屈になるのか分かんない」

「けどトイレまで一緒ってのは勘弁してくれない」


つづく。


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