はぐれウサギと迷子のオオカミ

槻白かなめ

はじまり



 ある みどりめぶくおかのうえに

 いちわのうさぎが いました。


 ぽかぽかと あたたかいようきを

 たっぷりすいこんだ やわらかいくさの

 もうふにくるまり うさぎは

 ちいさなおはなを ぷうぷうとならしながら

 きもちよさそうに ねむっています。


 うさぎのけなみは うすいくりいろで

 ながいおみみは まっすぐしたにたれており

 あしをおりたたんでふせているため

 おみみのさきが じめんについて

 すこしまがっています。


 ふわふわしたみじかいしっぽを

 たのしそうに ゆらゆらとゆらして

 いったい どんなゆめをみているので

 しょうか。


 そんなふうに のんびりとねむっている

 うさぎのみみに さくさくとくさをふむおとが

 とどきました。


 うさぎはとじていたまぶたをあけて

 おとをたてないように おきあがりました。

 

 くさばのかげにかくれて くさをふむおとが

 するほうへそっとかおを のぞかせます。


 そこには むらさきいろのけなみをした

 いっぴきのこどものおおかみが

 あるいていました。


 こどものおおかみはあたりをみまわしたり

 うさぎよりながいおはなをじめんにちかづけ

 においをかいだりしています。


 うさぎは しっています。

 おおかみが とてもおそろしい いきものだと

 いうことを。

 

 うさぎがおさないころに うさぎの

 おとうさんとおかあさんは

 おさないうさぎのめのまえで

 りっぱなたてがみをもつ おおきなおとなの

 おおかみに たべられてしまったのですから。


 うさぎは りょうしんをあやめたおおかみを

 にくんでいました。

 にくいおおかみをこらしめてやりたい、と

 かんがえたうさぎは ゆうきをだして

 ゆっくり ゆっくり おおかみに ちかづきました。

 

 うさぎは ちゅういぶかく くさばにかくれて

 ちかづいていきました。

 ところが、

 とちゅうで けはいにきづいたおおかみに

 みつかってしまいます。

 

 おおかみが かおをあげ うさぎをみたので

 めがあってしまった うさぎは びっくりして

 しまいました。

 だけど かまうもんか、と

 うさぎは おおかみにとびかかろうと うしろあしを

 ちからいっぱい ふんばります。


 そのとき おおかみが おおきなおくちを

 あけました。


 うさぎは またびっくりして

 おおかみをみつめながら からだをこわばらせ

 うごけなくなってしまいました。

 

 そんなうさぎに おおかみは ぽかぽかとあたたかい

 ようきのように さんさんとわらいかけました。


 「こんにちは!」




 

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はぐれウサギと迷子のオオカミ 槻白かなめ @Tsuk1sh1r0

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