幸せの微熱

九戸政景

本文

「ん……」



 私は目を覚ます。ここはと思った瞬間に私はここまでの事を思い出した。



「そうだ……私、授業中に具合悪くなったから保健室に来たんだった。早退は……しなくても良いかな」



 しなくても良い、というよりはしたくないが正しかった。わけあって家族と仲がよくない事もあって私にとって家は居心地の良いところではない。だけど、この学校は違う。友達にも恵まれているとても良い空間なのだ。


 そんな事を思っていた時、枕元に何かがあるのに気づいた。見るとそれは、クラスメート達からの私の体調についての寄せ書きのようなものだった。



「こんなにたくさん……」



 クラスメートによって字の感じも使われている言葉も違ったけれど、たった一行の言葉だけでも私の心には染み渡り、思わず涙を流してしまうほどだった。



「……みんな、ありがとう」



 涙混じりに言っていた時、保健室のドアが開いて保健室の先生が中に入ってきた。



「あら、起きたのね。体調はどう?」

「少し寝たからかよくなりました。でも、まだ体がダルい感じがして……」

「それなら水分も取ってしっかりと汗もかいて、後はゆっくり休みなさい。お礼を言いたい子達がいるんでしょ?」

「はい!」



 私は笑みを浮かべながら答えた。今もちょっぴり熱っぽい気はする。でも、これはただの熱じゃない。私を元気にしてくれる幸せの微熱なのだ。

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幸せの微熱 九戸政景 @2012712

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