第2話:落ち人

「落ち人だぞ、スキルを鑑定しろ」


 え、なに、なんで、通り魔と戦っていたよな?

 どうしてこんな薄暗い所にいるんだ?

 通り魔と戦っていたのは、朝の通学時間だったよな?


「もう競売まで時間がありません、次の競売まで待たれた方が……」


「バカ言っているんじゃない、1カ月も無駄飯を食わせる気か?

 落ちてきた今の状態が1番元気で高く売れるんだ、覚えておけ!」


「申し訳ございません、覚えておきます」


 落ち人、競売、何を言っているのだ?

 死ぬ覚悟だったけれど、助かって病院にいるのか?

 以前読んだ小説のように、遺体安置室で生き返ったとか?


「さっさと手かせをして魔法陣に乗せろ」


「はい」


 偉そうに言われていた方の男が近づいてくる。

 暗くてわからなかったが、テレビ映画で見た神官のような服装だ。

 少なくとも日本の病院にこんな服装の人はいない、と思う。


「何をする気だ?!」


 アニメで観た、ドレイの自由を奪う手かせを俺にかけようとする。

 手かせ、競売……ドレイ、俺はドレイにされるのか?

 アニメで観た異世界転生や異世界召喚なのか?!


「黙っていろ、抵抗してもムダだ!」


 ガッシャ!


 しまった、とりあえず抵抗しておけばよかった。

 何も考えられなくて、やられるままになっていた。


 さっきは無意識に戦えたのに、人を殺したトラウマで動けなくなったのか?

 クソ、手かせをつけられてしまったら、逃げたくなっても逃げられない。


「こっちにこい」


 しかたがない、手かせをかけられた後で抵抗しても警戒されるだけだ。

 チャンスが来るまでは言いなりになって、油断を誘う方が良い。

 う~ん、魔法陣か、友達に言われて付き合いで観たアニメのまんまだな。


「【スキル鑑定】」


 呪文か、笑ってしまうくらい観たアニメと一緒だな。

 呪文を唱えた奴だけでなく、俺にも見られるのは助かる。


「パラメーター1:基本設定」


種族:汎人族

性別:男

年齢:14歳

体格:並

容姿:並


「パラメーター2:能力」


筋力 :10:筋力に関する適性で物理な攻撃や防御、力仕事などに影響

体力 :10:持続力に関する適性でスタミナや耐久力などに大きな影響

知力 :10:知性に関する適性で魔法の習得速度や成功率に大きな影響

精神力:10:精神に関する適性で魔力、精霊力、魔法力などに影響。

器用 :10:器用さに関する適性で命中率、素早さ、特殊能力取得などに影響

魅力 :10:好悪に影響して精霊魔術の習得や成功率、交渉の成功率に影響

信仰心:10:信心に関する適性で神聖魔術の習得や成功率などに影響


「パラメーター3:魔術属性」


陰属性:1:

陽属性:1:

木属性:1:

火属性:1:

土属性:1:

金属性:1:

水属性:1:


「パラメーター4:スキル」


調理 : 20:生物素材加工の能力と適性、調理の能力と適性

審美眼:  5:価値を見定める目と適性。

鑑識眼:  5:能力を見定める目と適性。


「パラメーター5:感覚力」


視覚: 10:目に映るものを判別する能力と適性。

音覚:100:音を判別する能力と適性。

触覚: 10:触れたものを判別する能力と適性。

味覚:100:味を判別する能力と適性。

嗅覚:100:匂いを判別する能力と適性。

六感: 73:魔力などエネルギーを判別する能力と適性


「パラメーター6:神与スキル」


鍛冶 :  5:金属素材加工の能力と適性

裁縫 :  5:繊維素材加工の能力と適性

革細 :  5:動物素材加工の能力と適性、皮革加工の能力と適性

木工 :  5:植物素材加工の能力と適性、木材加工の能力と適性

彫刻 :  5:鉱物素材加工の能力と適性、石材加工の能力と適性。

錬金 :  5:金属素材加工の能力と適性、金属素材錬成の能力と適性

調理 :100:生物素材加工の能力と適性、調理の能力と適性。

魔法 :100:魔法の能力と適正

異神眼:100:全てを見定める目の能力とその適性。


「パラメーター7:特記事項」


神運:神々からの寵愛を受けているとしか思えない幸運

地球での善行によって異世界神のお気に入りとなっている。

異世界での能力値が100倍になる補正が働いている。


「ちっ、落ち人のくせにスキルが低すぎる!」


「ですが各種能力は人並みですし、最低とは言え全魔術属性に適正があります。

 同じく低いとはいえ3つもスキルが有ります」


 あれ、こいつらパラメーター4までしか見えていないのか?

 パラメーター5からの数値はかなり高いはずだぞ。


「いいか、よく覚えておけ、落ち人は能力のどれかが100近い者が多いんだ。

 この世界の平均では、落ち人では考えられないくらい低いんだ。

 こいつは外れだ、金にならない外れだ!」


「全属性でも意味がないのですか?」


「ドレイにするんだぞ、何か飛び抜けた能力がある方が使いやすい。

 魔境で狩りをさせるにしても鉱山で働かせるにしても、弱い魔術しか使えないようでは役に立たん」


「調理スキルはそこそこなので、少しは高く売れるのではありませんか?」


「どこの誰が、自分を恨んでいるドレイが作った料理を食べるんだ?

 自分が口にする物は、信用できる子飼いに作らせる。

 20程度の調理スキルなら、この世界の人間にもいる」


「そうなのですね、覚えておきます。

 最後に教えてください、審美眼、鑑識眼は役に立たないのですか?」


「そこそこ珍しいスキルだが、探せばいない訳じゃない。

 恨みを持っているドレイは主人を騙すかもしれないから意味がない」


「ドレイから解放して恩を売っても意味ないのですか?」


「ない、最近の落ち人は少々のことでは恩に感じない。

 落ち人を助けて損をさせられた者が多かった、殺された者も少なくない。

 だからもう誰も恩を売らない。

 それに、近くに侍らせて審美眼や鑑識眼を使わせるなら、もっと美しい奴にする。

 こんなブサイクを近くに侍らせる貴族や大金持ちはいない。

 並の商人や金持ちでは、審美眼や鑑識眼は宝の持ち腐れだ」


「そうなのですね、勉強になりました」


「分かったらさっさと働け、その外れを競売控室に連れて行け!」


「はい!」


 まずいぞ、このままでは魔境で狩りをさせられるか鉱山で働かされる。

 佐渡金山の鉱夫が命がけの仕事だったのは、歴史の授業で習った。

 できるだけ早く逃げなければいけないが、絶対に失敗できない。


 慌てるな、パラメーター7の特記事項に有った神運を信じて待とう。

 神様から気に入られていると書いてあるのだから、必ず逃げる機会がやってくる。

 そう信じてチャンスを待った方が良い。

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