第一章 ネコとワタシと

第4話 とりあえず衣替え

 ネコに教わり生きる術を得たワタシ。

 利害関係とでも言うのだろうか、ネコはワタシがいることで日々を満喫しておられる。

 ワタシはネコがいることで、コッチの世界で生きていける。

 そう、この世界でのワタシの立ち位置は活かされている十得ナイフみたいなものだ。

 そう気づいて夜空の三日月を眺めていたら涙が頬を伝った。


「ヒメ…起きろ‼ ごはんだ‼」

 とりあえず飯の催促をしてくるのはクロさんのほうだ。

 寝ているワタシの顔を前足でバシバシ叩いてくる。

「ヒ~メ~、今日はどこ行く?」

 ワタシを間延びで呼ぶの小さいのはチョビさん、いつも楽しそうなネコだ。

 とりあえずネコの缶詰を開けて、私は湯を沸かす。

 このカップ麺とは魔法のようであり、そして美味い。

 焼いていないのに焼きそばとは腑に落ちぬが、まぁいい。

「チョビさん」

「ん?」

「ワタシは洋服が欲しい」

「服…ヒトは毛がないから服を着るの?」

「いや…そういうわけでもないのだが?」

「チョビさん、ヒトは色々な服を着て出歩くものだよ変だけど」

 産まれた時から変わらない毛の色で包まれているネコには理解の外なんだろう。

「コッチの世界の服を着てみたい」

 ワタシだって年頃の女の子なのだ。

 オシャレは楽しみたい。

 誰もいない世界だからこそ色々チャレンジできそうな気がする。

「とりあえず昼寝したら行くかチョビさん」

「うん解ったクロさん」

 朝ご飯を食べたら即昼寝、それがネコ。

「ヒメ…起きろ‼ ごはんだ‼」

 つられて寝ていたワタシをクロさんが起こす。


 誰かが住んでいたであろう家で昼食を終え、ようやく街へ出かけることになった。

「ヒ~メ~、ココがいいんじゃない?」

「そうだな、ヒメ、ココはそんなような服が沢山あるぞ選べ」


 連れてこられたのはゴスロリ専門店なる代り映えしない服が並ぶ店だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る