異世界から人類が滅亡したコッチの世界に飛ばされたワタシが猫と歩く漫遊記

桜雪

序章 望んだ結果

第1話 へぇ~喋るんだ

 誰もいない世界へ行きたい…。

 14歳にして人生を諦めたワタシは城に引き籠っていた。

 引き籠っていても城なので、意外と広い。

 なんだか侍女とか煩わしくもあり、ありがたくもあり、有体に言えば総じて面倒くさかった。

 侍女とかと比べての自己評価は容姿は上の下くらい。

 あまり城の外を知らないので、あくまで自己評価だ。

 走ったことがないので運動神経はよく解らない。

 城から見上げた月に、ある夜祈ってしまったのは年相応の些細な願い。

「誰もいない世界へ行きたい…」


 しっかり叶ってしまった…。

「ホントに誰もいねぇな…」

 明らかに違う世界に飛ばされて3時間ほど、人が暮らしていたであろう街を眺めて、その静けさに早くも飽きてきた。

 誰もいないって、案外、面白くないものだと知って1時間が過ぎた頃である。

「ホントに人がいるよ…クロさん」

「うん…久しぶりに見たねチョビさん」

 静かな街に人の声。

 クルッと振り返ると…誰もいねぇ。

「下だ人」

 視線を足元に移すとネコと呼ぶには大きい黒いネコと小さ目なキジトラ。

「ん?」

「ん??」

 しばし、お互いに視線を逸らせずに黙り込む。

「ヒト…言葉解るか?」

 まさかのネコに言葉が解るかと問われるとは…。

「えぇ~、なんか不愉快」

 ワタシに話しかけてきたのは黒いネコという生物であった。

 チョビさんと呼ばれたキジトラが話しかけてきた。

「なにが不愉快? そのカッコ、誰もいないから独りでコスプレ?」

「チョビさん、僕知ってるよ姫だよ、姫気取りだよ、このヒト」

 なんか馬鹿にされている気分。


 どうやらコッチの世界では人類は滅亡してしまったらしい。

 そしてネコとやらは喋るらしい。

 この2つだけワタシは理解した。

「ネコ…ワタシは姫気取りではない、姫だ」


 この出会いから早や1か月、ワタシはなぜかこのネコ2匹と、この世界をブラブラ漫遊している。

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