手紙という名のエゴ

好きな人は誰か、そう問われたとき、僕はすぐさま

あなたのことを想う。


かっこよくて、可愛くて、いい加減で、まっすぐで。

温かくて、優しくて。

強がりで、本当は泣き虫で。

それでも、あなたは僕の代わりに声をあげてくれる。叫んでくれる。


『君ができないこと、君が言えないこと、自分が変わりに言ってあげるから。』

『大丈夫、行ってこい』


怖くて眠れない夜は、まるでそれを知っていたかのように通知が来て、朝までずっと話をしてくれたり、本当は怖くて、苦しいはずなのに、それすらもさらけ出してくれたり。


僕は、何度あなたに救われただろう。何度守ってもらっただろう。


あなたの愛は、ちゃんと届いてる。届いているのに、時折怖くなることがある。

今まで近くいたはずのあなたが、僕の手が届かなくなるくらい遠くに行ってしまうような気がして。

届いていたはずの僕の声があなたの元へ届かずに、膨大なネットの海や世間の声に流されて、ただそこに漂っているだけな気がして。


どれだけあなたを愛する人が増えても、あなたは決して一人一人をないがしろにしない。一人一人を守ろうと涙をこらえて道を作ってくれる。


常に行動で示して、走り続ける、そんなあなたが大好き。

等身大で、ありのままのあなたが、大好き。

そんなあなたを傍で応援できるのがとても嬉しくて、

『僕も頑張りたい、もっと支えたい』と毎日思う。

あなたのことを考えなかった日は、ない。

出逢えたあの日からずっと、僕はきっとあなたに恋をしているのだろう。


でも……

そのたくさんの時間の中で

あなたは僕の知らないうちにたくさんの出会いや別れを繰り返していくのだろう。

そして貴方は知らず知らずのうちに変わっていく。


あなたはあの日、泣きながら言ってくれた。

『自分は、変わりたい。

少しずつでもいいから、変わりたい。だから、一緒に変わってほしい』



僕は、戸惑った。

このままがいい。

僕らが今居る、この安息の地で静かで平穏な非日常をあなたと共に歩きたい。けれど、あなたは、この世界から抜け出したいと言った。


僕らの戸惑いは、きっとあなたも知っていると思う。

それでも、否定されたとしても、あなたは変わっていくんだね。


あなたの近くにずっといたい。

だからあなたの決意を尊重したい。


そう思えば思うほど周りに嫉妬してしまう。

僕が戸惑って立ち止まっていた時間、あなたを愛する人は次々にあなたの意見を受け入れたから。あなたの決意を認めたから。

そして、僕以外にもあなたを愛する人がいると思い知ったから。



そんなふうに周りの存在に嫉妬する自分が嫌で、耐えきれなくなってあなたからまた目をそらしてしまう。


それでもあなたは言い続けてきた。

『自分が変わるのは、弱い自分が嫌だから』

『決して君を見捨てるわけじゃない』


何度も救われた。何度も守ってもらったのに、僕はあなたの言葉を、決意を受け止めることをあきらめた。


“でも”も“だって”も、ただの言い訳に過ぎなくて、

じゃあ、今の僕に何ができる?そう考えたとき、

あなたの言葉を聞いて、自分の気持ちを言葉にして、あなたに届くまで伝えることだと思う。


こんな僕でごめんなさい。

こんな僕でも愛してくれるというのなら、僕はこの先ずっとあなたの心に寄り添うと誓うよ。


だからどうか、あなたの背中を僕に預けてほしい。


いつか、この手紙が、あなたの元へと届きますように。

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