第445話 ジョン達のエイプ修行 その4
「なるほどな。それなら作業と変わらんな」
「だろ? だからジョン達に見られたらまずいんだよ。修行にならないから」
「コングにも同じ手使えるだろ?」
「そうだね。ほぼ無敵じゃない?」
「早速試すか」
「反対側から出よう。こっちなら小屋で見えないから」
俺達3人はジョン達に気付かれないよう小屋で死角になる場所に出て猿肉を仕入れにいく。
ダンとシルフィードが俺の背後に回り、俺は正面180度にデバフを掛ける。あっという間にのろくなるエイプ。俺達3人はくるっと入れ替わり、ダンとシルフィードがのろくなったエイプをサクサクやっつける。その間に反対側にデバフ。またくるっと回ってのろいエイプをサクサクと。
「シルフィード、後は任せた。俺は猿を回収してくる」
ダンは攻撃をシルフィードに任せて猿を回収。放置すると持っていかれてしまうのだ。
数が貯まったので鳥籠に待避。
「ぼっちゃん、楽勝だな」
「だろ?こんなの修行にならないんだよ。小屋の後ろで血抜きしてさばこう。骨も出汁が出るか試すよ」
3人で手分けして猿をさばいていく。昔々に猿の脳ミソが旨いとか見たような気がするが頭は捨てよう。たとえ旨くても食えないだろうからな。
肉は取りあえず保存魔法を掛けて魔道バッグの中に。
「シルフィ、裁縫出来る?」
「ミーシャちゃんほど上手くないけど・・・」
「ざっくりでいいよ。マットにこの毛皮を敷いたら気持ち良さそうなんだよね。」
猿の毛皮にクリーン魔法を掛けて同じ大きさに形を揃えていく。魔剣様々だ。めっちゃ綺麗に切れる。
土魔法で縫い針を作り、釣り道具のリールから糸を出していく。
細かく縫う必要はない。取りあえずくっついてればいいのだ。
3人分の毛皮の敷き毛布完成。冬毛のエイプは結構ふわふわで柔らい。
余った毛皮で便座カバーと食事の椅子カバーも作っていく。
「おう、こいつぁいいな。ケツが冷たくならねぇ」
「だろ? 座るとき勇気が必要だったんだよね。もっと早くにやればよかったね」
俺は座る前に温風で暖めていたのは内緒だ。
「今から新しいソース作りをするから、シルフィは燻製用の肉に塩胡椒をお願い。ダンはミンチにしていって」
各自に仕事を振り分けて作業をしていく。
トマトソースにタマネギと塩胡椒、ハチミツ、ニンニクと酢を少々。これを煮詰めて行く。んー、ちょいと醤油を垂らして、スパイスをちょいちょいと。クツクツ煮詰めて・・・、もうちょい甘さを足すか。砂糖を足しながら味見を・・・ こんな味だっけなぁ?
あれやこれやを足しながら作っていく。なかなかこれだという味にならずにどんどんと量が増えていった。
もう少し甘いコクが欲しいけど、ハチミツじゃないんだよなぁ・・・
魔力込めて甘さのみ足すか・・・ 魔法水を入れてしまうとバランスが崩れてしまいそうなので直接魔力を注いでみる。
うん、こんな感じだな。これでエイプのバラ肉を焼いてみよう。スペアリブみたいにしたいので、骨付きのままにした肉で試すことに。スパイスをまぶして1日寝かしておこう。これは明日の晩御飯だ。
今夜はダンがミンチにした肉で甘酢餡掛けの肉ダンゴだ。塩胡椒をしてダンにこねていってもらう。熊毛入れんなよ。
シルフィードにタマネギとニンジンの準備をお願いしておいて、こちらは餡作り。醤油と砂糖、酢とくず肉から取ったスープで作っていく。ちなみに骨のスープは臭いが強くなってダメだった。慣れたらいけそうなんだけどね。
最後に水溶き片栗粉でとろみを付けてと。
ダンがこねた肉を丸めて片栗粉をまぶしていく。先にタマネギとニンジンを油通しして、揚げた肉ダンゴをフライパンへ取り出して行く。
「ご飯炊けたよ」
「ありがとう。こっちも餡掛けしたら終わりだから」
シルフィードがご飯をよそって入れてくれたので、具材に餡を絡めて完成。
「美味しい!」
「ぼっちゃん、うめぇわ」
「そうだね。こういう濃い味付けの方がいいね」
今日の修行を終えたジョン達も塩の野菜スープを作って食べている。
「くっそぉ、なんて旨そうな飯を食ってるんだゲイル達は!」
「そう思うなら早く猿どもを圧倒するくらいになれ。いつまでも経っても肉が手に入らんぞ。ワシはもう猿でも構わんのじゃっ!」
「嫌だっ!絶対に鹿かボアを狩りに行くんだっ!」
「ミグル、じゃがいもをくれ。焼いて食べる」
ジョンも早く狩りに行きたいのは山々だが、まだ自分達の力が足りない事がわかっているので文句を言わずにあるものを食べる。焼きじゃがもバターが無ければさほど旨い訳でもなく、ポソポソの芋を水で流し込んだ。
「絶対に覗くなよ。ワシが風呂に入っている間にテントから出たらファイアボールをお見舞いするからな」
「誰が見るかっ!さっさと入って出て来い。俺達も早く入りたいんだ」
猿達の攻撃をかわしながら目隠し用の木を伐って来れなかったジョンとアル。でも風呂には入りたいのでこのような形を取るしかなかった。
ミグルは今から風呂に入るから部屋から出るなと俺達にも言いに来た。見られても減るところすらないだろ?とは言わなかったけどね。
ミグルが風呂から上がったので、ジョンとアルも風呂に入る。
「あー、気持ちいいな」
「あぁ、生き返る気がするな。ゲイルがどこに行っても必ず風呂を作るのがわかるな。外で入る風呂は格別だ」
「なぁ、俺達、いつ狩りに行けるかな?」
アルは野菜のみの食事が辛くて堪らないみたいだ。
「個人ではそこそこやれても狩りに行ける程でもない。やっぱり3人で連携しながら余裕を持って移動出来るようになるまでは無理だろう。理想は一人が狩った獲物の運搬。残り二人がそれを守れないとダメだ。すなわち、俺かお前が運搬役をすることになる」
「なら明日からはそれを想定して修行をしよう」
「そうだな」
まずは身体強化を使い慣れる事が先決と言われていたのに次のステップに進もうとする二人だった。
「今日は連携の修行するみたいだね。」
「あぁ、しかしなんか変な動きだな」
「自分達で色々と試してるんだろ。まぁ、その方が身に付くからいいんじゃない。それより俺達は何しようか。猿肉もたくさんあるし、暇だよね」
「俺はこいつの練習しとくわ」
ダンはそう言って魔銃を取り出した。鳥籠の中からエイプに向けての射撃訓練をするようだ。
「じゃあ、俺とシルフィは小麦と米でも育ててるよ」
まだ食料はあるが、ここで自給自足をする。調味料と油以外はなんとかなるのだ。
出来た米や麦を自然乾燥させていこう。温風で乾かしてもいいけど、急ぐ必要はない。夜露が当たらない様に屋根を作っておく。
昼は猿肉の串焼き。塩のみで焼いて食べる。それを羨ましそうに見ている3人。こっちはちょっとだけ気を使ってお前らでも食べられる食事にしてんだからな。いい加減気付けよ。
「我慢だ。この悔しさがバネになるのだ。今日の練習をもっとやっていけばもうすぐ肉を仕入れにいける」
「あぁ、そうだ」
「遊撃はアルの方が向いておるじゃろ。ジョンは倒した猿を4~5匹持ってワシの側にいろ。次はそうしてシミュレーションをやるのじゃ」
「おーっ!」
「なんか盛り上がってんな」
「上手く行きだしてんじゃねーか」
「そうだといいんだけどね」
見てると気になるので、見ないようにしてせっせと野菜を育て、ダンは射撃訓練に勤しんだのだった。
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