第443話 ジョン達のエイプ修行 その2
あっちの晩飯は侘しいな。来た時に作った物と同じだ。
こっちは猿肉と根菜のトマト煮込み。そして猿肉の唐揚げだ。羨ましそうに見ているジョン達にはなんの肉かは説明していない。
自分達も試してみればいいのだ。ミグルはコボルトの肉とか食ってたみたいだからそのうち猿を食べるだろう。
「ぼっちゃん、こうやって食うと旨ぇな」
「そうだね。唐揚げは黙ってたらただの旨い肉だね」
「うん、美味しい。夏のボアより好きかも」
確かにそうだ。夏のボアは獣臭さ満載だからな。エイプも冬だから旨いのかもしれない。
「ぼっちゃん、エールは持ってきてねぇのか?」
「エールは無いなぁ。お土産の焼酎がたくさんあるから、お湯割りにしてやろうか?」
「お、いいねぇ。お湯で割る前に炭酸で作ってくれねぇか?」
「レモンは入れる?」
「頼む。シルフィードも飲むか?」
「どうしようかなぁ」
「少し甘めに作ってやろうか?」
「なら飲むっ」
ダンは甘味無し、シルフィードには魔力を込めて甘くしてやる。砂糖も有るけど無くなったら魔力みたいに補充出来ないからね。
「唐揚げと合うね」
「おう、ぼっちゃん、もっと揚げてくれ」
「煮込みも食えよ」
「それは明日の朝食うわ」
なんだよ、煮込みは手間掛かってんだぞ。
唐揚げの追加を揚げながらぶつぶつ言う俺。あ、ニンニクを煮込みに足してみよう。
揚がるのを待つ間にニンニクを刻んでオリーブオイルで炒めていく。それを煮込みに投入。ショワワワッと音を立てるガーリックオリーブオイル。それをかき混ぜて味見を・・・。おぉ、めっちゃ旨くなった。
「はい、唐揚げのお代わり」
俺はアルコール抜きなので味付けしなおした煮込みを食べる。なんかガーリックトーストが食いたくなるな。しかし、パン焼いてないしな。フライドポテトでも作るか。
面倒なので皮付きのままクシ切りにして揚げる。あぁ、猿肉をハンバーグにして煮込めば良かったな。
「あっちは旨そうだし、楽しそうだな・・・」
常に物欲しそうなアル。
「ゲイル達は冒険じゃなく旅行だからな。羨むな。冒険を選んだのは俺達だ」
それを諌めるジョン。
「しかし、差が有りすぎるのじゃ」
ミグルも恨めしい目でゲイル達を見ている。
「昔もこんなのだったんだろ?」
「それはそうじゃが・・・」
「ミグルは風呂を作れたりするのか?」
「お主らが穴を掘れば可能じゃ。ゲイルみたいにちゃんとした風呂ではないがな。湯は出せるぞ」
「よし、ジョン。穴を掘ろう」
「どうやってだ?道具はないぞ」
「手で掘ればいいじゃないか。身体強化しながらやればなんとかなるんじゃないか?」
「そうかっ、ここならゆっくり寝られるし、今魔力を使っても問題無いな。よしやろう」
「ぼっちゃん、ジョン達何やってんだ?」
ダンにそう言われてあっちを見るとジョンとアルが金色に光りながら穴を掘ろうとしている。
「何やってんの?」
「秘密だっ!」
アルがそう答えてなんか嬉しそうにやってるからまぁいいか。
「そろそろ寝ようか。ダン達も部屋の風呂入れておくから勝手に入ってね。お休み~」
なんか疲れたので、さっさと寝ることにした。ダン達も軽く飲んで眠くなったようなのでさっさと寝るようだ。
マットと毛布が有るけどなんか物足りないな。明日から猿の毛皮で寝床作ろう。冬毛だから意外と柔らかかったんだよね。肉はハンバーグとジャーキー、後はなんにしようかな。アメリカのBBQソースとかスペアリブのソースみたいな味が合いそうなんだけど、どうやって作るんだろうな。明日から久しくやってなかった新調味料作りでもやるか。
「おかしい、なんだここは?表面の砂しか掘れん」
「大きい岩が埋まってるのかもしれんな。あっちを掘ってみよう」
ジョンとアルはゲイルがトカゲ対策に地面を硬く強化してあることを知らずにあちこち穴を掘るのを試していた。
「おはよう。あれ?見張り要らないのに眠れなかったの?」
目の下にクマを作っているジョンとアル。
「ゲイル、なんだこの場所は?身体強化してもまったく穴が掘れん」
あっ、自分達で風呂を掘ればいいと思ってたけど、地面を強化してあったの忘れてたわ。
「地面を強化したの忘れてたよ。下からいきなり飛び出してくるトカゲ対策にね」
めっちゃあちこち試したんだな。悪いことした。これが普通の地面なら掘れてただろうから、お詫びに風呂を作ってやろう。
「地面を強化?そんな事までしてあるのか?」
「今までにトカゲに2回襲われてるからね。念のためだよ。お詫びにジョン達が掘れた位の穴は作っておくよ。お湯はミグルに頼んでね。掘る予定だったのは1つ?」
「そうだ」
「なら、今日の修行の時に木とか伐って持って来なよ。そうしないとミグルがワシを覗くつもりかぁとか言ってくるよ。そのつもりなら取って来なくてもいいけど」
「覗くかっ!」
ほんとかなぁ?
取りあえず風呂を掘っておく。ジョンとアルが同時に入れるくらいの大きさにしておいてやろう。二人が掘ったらここまで大きくはならないだろうけど努力賞だ。
柵を開けてやって3人朝からは修行再開だ。柵から出ると待ってましたとばかりにエイプが襲い掛かって来る。
「ミグル、ファイアボールはこっちに撃つなよ。お前達のテントが燃えるぞ」
「分かっておるわっ!話し掛けるなっ」
ミグル必死だな。
「馬鹿者っ!ワシが詠唱してる間は前後でワシを挟めと言ったじゃろうがっ」
「数が多くてそんな余裕は・・・」
「んぎゃぁぁぁぁぁっ」
あ、ミグルに猿が山盛りになってる。大丈夫か?
慌ててジョンとアルがその猿達を斬り付けるとサッと猿は離れる。
「だから言ったじゃろうがっ!んぎゃぁぁぁぁぁっ」
ぐちゃぐちゃ喋ってるからまた
「アワワワワッ」
ジョン達が斬りつけようとすると猿がまた離れる。
「何度言えばわかるんじゃっ!んぎゃぁぁぁぁぁっ」
二度目は悲劇、三度目は喜劇と言うが、見てる分にはめっちゃおもろい。
魔力量のせいか、弱いと見られてるのかエイプはミグルを集中的に狙ってくるようだ。
「あ、開けるのじゃぁぁぁっ!」
こちらへ逃げ込んでくるミグル。
「まだ10分も経ってないぞ」
「こいつらが作戦通りにやらんのじゃっ!ドワンならこんな事には・・・」
と、言い掛けてミグルは昔の事を思い出した。
ドワンは一度もワシやアイナに魔物を近付けなんだな・・・。それが当たり前じゃと思ってたが、ワシは守られておったのか・・・
パーティーの連中はみな自分に冷たいと思っていたが、ワシが分かってなかっただけというゲイルが言った事は本当じゃったんじゃな・・・。
「ミグル、治癒魔石補充しておいたぞ。作戦を練り直せ。このままだと同じ事の繰り返しになるぞ」
それはそれで面白いが10分やそこらで戻ってばかりだと修行にならんからな。
3人でなんやかんや打ち合わせてからまた出撃した。
今度は鳥籠を背にしてジョンとアル二人揃って前面の猿と対峙、ミグルがその間に詠唱してファイアボールを撃つ作戦か。鳥籠に乗ってる猿が居てるんだぞ。大丈夫か?
「んぎゃぁぁぁぁぁっ!」
ほれ、後ろから集られた。ちょーおもろい。
柵を開けてやると猿と一緒に雪崩込んで来たのでダンがその猿を斬る。
「ミグル、めっちゃおもろいわ。これ、西の街で劇にしよう。大ウケするぞ」
い○の めだかが大量のかん○いに集られるお約束のギャグみたいなのを想像すると笑いが込み上げてくる。
オープニングギャグとして完璧だ。
「ミグル、決まりゼリフは <これぐらいにしといたる> だからな」
「何を訳のわからん事を言っておるんじゃっ!人が死にかけてるのに笑ってる奴がおるかっ」
新喜劇を知らないミグルは盛大に怒っていたのだった。
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