第378話 また仕切り直し
面倒だがまた追いたてられて明後日の方向に行くのは勘弁なのでコングを倒しながら元来たであろう道を戻る。
「こいつら何匹いるんだよって」
トライアングル陣形のまま四方八方から襲ってくるコングを倒していく。焼く暇も無いから死体はそのままだ。
ハァハァハァハァ
シルフィードの体力持つかなぁ。
回復魔法を全員に掛けながらコングの魔力を吸って魔力回復していく。
「ぼっちゃん、ここいらで一息いれてぇ。あの竜巻で殲滅してくれねぇか」
森林破壊は避けたいところだけど仕方がない。
ごーーーーーーっ
周りの木々達を捲き込んで吹き飛ばす。
「ふぅー、体力はぼっちゃんの魔法で回復してもらってるが、腹までは膨らまんからな。これで飯が食えるってもんだ」
辺り一帯を吹き飛ばしたことで一息付けた。1日飲まず食わずはさすがにしんどい。
「ゲイル様、申し訳ないですけど眠いです」
「そうだね。飯食ったらちょっと寝よう」
小屋を作って交代で睡眠を取ることにする。一応広場になった所にぐるっと壁を作る。飛び越えられないが破壊される恐れはある。が、その音で目が覚めるだろう。
ダンが見張りで俺とシルフィードを先に寝かせてもらった。持ってきて良かったスプリングマット。数時間爆睡して復活だ。
「ダン、代わるよ」
「おう、じゃ寝てくるわ」
小屋に入るなり熊の咆哮が聞こえだした。ダンも相当疲れていたみたいだ。
「ゲイル様、足手まといで申し訳ありません」
「そんなこと俺もダンも思ってないよ。十分に戦力になってるから。それよりオヤツ食べようか。こういう時は甘いもの食べたら元気出るから」
と言っても持ってきた材料が限られてるから干しブドウ入りのカップケーキくらいしか作れない。
ダンの分と予備を含めてせっせと作っていく。壁からゴンゴンと音が聞こえてくるがまだ破壊されるまでには時間が掛かるだろう。ダンもゆっくり寝かせてやりたいのでもう一重壁を作っておく。
さてカップケーキが焼き上がるまでもう少し時間が掛かるからお茶もいれていこう。
牛乳で紅茶を煮出すロイヤルミルクティーだ。砂糖は貴重なので魔力を流して甘味を付ける。シルフィードの魔力回復にもなるし一石二鳥だ。
「うあゎ、甘くて美味しい」
睡眠を取ったとはいえ完全に疲れが取れたわけではないから甘いものが身に染みるだろう。ようやくシルフィードにも笑顔が出た。
「はい、カップケーキも焼き上がったよ。まだ熱いから気を付けてね」
二人でホフホフ言いながらカップケーキとミルクティーを堪能する。
「エルフの里って本当に元の村の近くなんでしょうか・・・」
「まぁ当てずっぽうだからね。他に手掛かり無いし。シルフィードのお父さんが一回しか来てないならお手上げだけど、何回か来てるって聞いてるから離れてはないはずなんだよ。これを信じて探すしかないね。もし見つからなくても冬には一度戻ろう。真冬に捜索は難し過ぎるからね」
冬になって雪でも積もった日にはまともに動くことも辛くなるからな。
シルフィードと雑談しながら時間を潰しているとダンが起きてきた。
「もういいの?」
「あぁ、バッチリだ。」
ダンにもカップケーキとミルクティーを渡す。
「甘いもんがやたら身に染みて旨ぇな」
バッチリと言いつつダンも疲れているのだろう。日頃は甘い物をあんなに旨そうに食うことはないからな。
ダンのお腹が落ち着いたみたいなので出発する。
ゴンゴンと音が鳴る所を一気にぶち抜いて吹き飛ばす。壁を壊そうとしていたコング達が吹き飛んだ。
「さて、行きますか」
これを数日繰り返してエイプの縄張りに入った。
「来る時にあれだけ倒したのにまだこんなに居るっておかしくない?」
来た時と同じくらいの数が襲ってくる。本当にリポップしてんじゃねーだろうな?
普通仲間がこれだけやられたら警戒して襲ってこなくなるか逃げるかするのにどれだけやられてもお構い無しに襲ってくる。人間が来ない場所特有の現象だろうか?訓練の時のコボルトとか逃げだしたりしたけどな。
ギャーギャー喚くエイプどもをバンバン倒して、夜は土の小屋で睡眠を取る。エイプには小屋を破壊するほどのパワーが無いが石を投げてくるので二重壁にして防音対策だ。
これを繰り返して進むとミステリーサークルポイントに戻って来れた。
「道合ってたね」
「どうする?」
「前回はここから南下したけど、もっと西に進もうか。それで様子を見よう」
またエイプの森を進んで行くと南下した時と同じくコングの縄張りに入る。前回と同じく事の繰り返しだ。いい加減慣れたとは言え疲れる事には変わりはない。
エイプの森の周りはすべてコングの森なのだろうか?
前回と同じタイミングでまた相談する。
「方向変えたけど同じ事の繰り返しだね」
「そうだな。取りあえずコングが出なくなるまで進んでみるか」
何が正解かわからないので一つずつ道を潰して確かめて行くしかない。
寝るときに久しぶりに自分のステータスを確認したら<猿殺し>こんな称号が増えていた。
それから一週間ほどかけて進むがコングが減ることは無い。
「ダン、これいつまで続くんだろうね。さすがにここまで離れてないと思うんだ」
「そうだな」
「ちょっと目印付けて行くよ。それでどこを捜索したか確認するね」
「どうやるんだ?」
「土柱を建てるよ」
周りの木より高く柱を建てる。目印になるように先端と目線の高さには1の形にしておいた。次から2、3と数字を変えて行く。
「ここから南下していこうか」
コング達も壁を二重にしたぐらいの厚さにしておけば破壊される事も無いことがわかったので、夜はきちんと眠れるようになったのは幸いだった。
毎晩寝た場所に柱を建てて行くが一向にコングの森から抜ける事が出来ない。
「ダン、食料がヤバいんだよね。野菜は種があるからなんとかなるけど肉類が底をつきそうなんだよ。このままだとコングの肉を食べるはめになる」
「しゃーねぇな、また戻るしかねぇか」
またもや仕切り直しだ。今度は元村付近まで戻って狩りをしに帰らなければならない。はぁーーー。
少し東に進んでから北上して戻って行く。すでに柱の数字も20を越えていた。
元の村の近くで鹿、ウサギ、時々オークを数日かけて狩る。ボアも見かけたけどこの時期のは臭いのでパスだ。
「ぼっちゃん、この村より北ってことはねぇか?」
「その可能性も捨てきれなくなって来たけど、北側は瘴気が流れてるみたいだし、そんな所に里を作るとは思えないんだよね。エルフが瘴気の影響を受けないのなら可能性は高くなるけど」
「いや、生き物はすべて影響受けるんじゃねえかな?」
「多分そうだよね。魔物ですら影響受けるみたいだし」
肉は確保し、米と麦を魔法で育てて炭水化物もここで補給していく。体力と気力回復も兼ねてしばらく滞在してから出発だ。やや危険な賭けだがこのまま南下してみることにした。瘴気が強くなった所で西へ移動だ。
またもやエイプが出だすが瘴気が強くなるに連れて狂暴性が増していく。強さも別の種類かと思うぐらいに上がって来た。
「これヤバいね。ここから西へ向かおう」
柱を建てて方向を代える
そろそろコングかと思われた時に異変が起きた。
コングじゃ無しにオーガが出始めた。
「オーガってこんなにデカいの?」
「いや、瘴気の影響だろう。変異種だ」
日頃は薄いブルーの肌を持つオーガだが、ここいらのはドス黒い水色って感じだ。やたらパワーがあり、爪で木を一裂きしやがる。スピードもなかなかだ。単発だと対応出きるが群れで来られたらヤバい。
「ダン、ここから離れよう。なんかヤバい気がする」
「そうだな。シルフィード、お前は走る事と攻撃を避けることに専念しろっ」
シルフィードを間にしてこのエリアを走って抜ける事にする。
ヤバいと感じた通り、オーガの群れが俺達を襲いかかってくる。
「シルフィード避けろっ!」
木の間から飛び出して来たオーガがシルフィードに襲いかかる。轟音とともに振られた爪がシルフィードを掠めた
「クソッ」
土の柱を飛ばしてそのオーガを吹き飛ばす。シルフィードの治癒の首輪が傷を癒したが今のやり取りで足止めされてしまった
「ご、ごめんなさいっ」
「そんな事はいい、しっかり捕まれ」
俺はシルフィードを抱き抱えてダンに叫ぶ
「ダン、飛び乗れっ」
足元に土の柱を隆起させるとダンがそこに飛び乗ったのを確認して一気に上昇させた。
上空から大量のファイボールを落として殲滅する。
「熱っつう」
辺り一帯を焼き付くした激しい炎の熱がここまで来たので慌てて大量の水で消火した。
「助かったぜぼっちゃん」
「ヤバかったよね。オーガの変異種があんなに強いとは思ってなかったよ」
俺がそういうとダンは唇をギュッと噛んだ。
「ゲイル様、あ、あれを・・・」
シルフィードが指をさした方向を見ると俺が建てた柱が見える・・・
「あれ?」
西から南へ進みながら建てた柱。多少のズレはあっても直線に並んでるはずなのに・・・・
「どういうこった?」
ゲイルが建てた柱は広大な森の中を円を描くように建っていた。
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