第377話 ええーい面倒だ

更に数日西へと向かって進む。オークやらオーガやらと闘いながらだから進むのが遅い。倒すのは良いけど焼くのが面倒なのだ。一応オークは肉として確保したけどダンに食べさせよう。俺は豚肉を喰う。ローストポークを作り、自分だけはオークと豚肉がわかるように分けておく。



「なんかいっぱいいるね」


木の上にいる魔物に囲まれている。


「多分エイプだ。こいつら厄介なんだよな。すばしっこいし頭が良くて狂暴なんだ」


猿系の魔獣か。


バシュッ バシュッと石が飛んで来る。コントロールいいじゃねぇかよっ


石が飛んで来た方向に土魔法を打ち返すがすばしっこくて当たらない。


フンッ


俺の背中側から飛んで来たエイプをダンが斬った。それを見たエイプが一斉にギャーギャー騒ぎ出した。


「めちゃくちゃ怒ってるよね」


「自分達から掛かって来てやられた癖に勝手な奴等だ」


俺達はトライアングルでの陣形を取り、背中をお互いに預ける。近くに来る奴はダンが、上にいるやつらは俺とシルフィードで魔法で撃ち落とす。


外れても構わないので乱れ撃ちだ。


俺は散弾銃のように細かな土魔法の玉を撃っていく。シルフィードはファイアボール連発だ。


不規則に動いているように見えたエイプ達の動きも規則性が見えて来るとどんどん当たるようになってきた。シルフィードも数匹仕留めている。ほかの群れも合流したのか数が一向に減らない。


そろそろシルフィードの魔力がヤバそうだ。


「ダン、シルフィード、伏せてっ」


木の上に向かって雷魔法を放つと何匹か当たって落ちたが木々にも吸収されるのか効率が悪い。


ええーい面倒だ!


俺達を中心にして竜巻を起こして吹き飛ばしてやるっ


ゴーーーーっと唸りをあげて竜巻が周りの木々と共にエイプを吹き飛ばした。


「ぼっちゃん、やり過ぎじゃねーか?この辺り何にも無くなっちまったぞ」


「だってあいつら鬱陶しいんだもん」


スカッと広場になった森の中。空から見たらミステリーサークルみたいになっているだろう。


ちょうど良いのでここで一泊する。土小屋を建てて持ってきた牛肉とご飯でがっつり行こう。


「こうやって落ち着いて飯食うの久しぶりだな」


「そうだね。毎日ずっと気配探りながら飯食うのも疲れるもんだね」


「冒険者時代はこれが当たり前の生活だったんだがな、街での生活に慣れちまうと疲れるもんだ」


「今日は時間も早いし風呂も作ろうか」


「そうしてくれ」


もうひとつ風呂小屋を作り、シルフィードから順番に入った。気を使わないように1時間交代と決め、3人ともゆっくり風呂に浸かって眠る事が出来た。


それからも毎日昼夜問わずエイプに襲われる。何匹いるんだこいつらは? 寝ている時は土の小屋の中だから襲われる心配はないが小屋に向かって石をガツガツと投げてくるからうるさくてたまらない。その度に竜巻で吹き飛ばすとどんどんミステリーサークルが増えてしまうので自重している。


「ぼっちゃん、キリがねぇ。このエリアから走って抜けようぜ」


「賛成」


3人で身体強しながらひたすら走る。シルフィードの魔力量の事があるのでダンが前方を露払い、俺が撃ち落とす役をする。シルフィードは走る事に専念させた。


3日ほどその行動を繰り返すと少しずつエイプの数が減ってきた。


「エイプどもの縄張りから抜けたかな?数が減ったよね」


「その代わりの魔物がいやがるだろうけどな」


エイプの代わりにゴリラみたいな魔獣がチラホラ出現し始める。ここの広大な森は猿系の魔獣が集まってる場所なのだろう。


コングと呼ばれる魔獣はエイプほど数は居ないが1匹、1匹がデカいし瞬発力とパワーがハンパ無い。あんな一撃貰ったら頭とか吹き飛びそうだ。アイナパンチ並だ。


イデデデデデデっ


「どうしたぼっちゃん?」


「いや何でもない。ここも早く抜けよう」


瞬発力はあるが持久力は無いみたいでエイプのようにしつこく追って来ないのが幸いだ。土の小屋も破壊される恐れがあるので、仮眠して移動を繰り返す。



「ようやくコングの縄張りを抜けたみたいだが、今どの辺りなんだろうな?」


昼夜問わず走ったせいか今いる場所の見当が付かなくなってしまった。


「村跡から結構移動したと思うんだけど、あんな魔獣だらけの所を通って来てたとは考えにくいよね。エルフの里はこっちじゃないのかも」


「どうするよ?ここがどこだかわかんねーぞ」


「戻ってやり直すしかないね・・・」


このまま進むっていう手もあるが自分達の居場所を見失ってしまった以上やみくもに進むのは悪手だと思える。戻ってやり直すのが吉だろう。


「取りあえずここで2日ほど休んでから戻ろうか。コングの居るところを探して、それからエイプの居る場所を探せばいいから」


さんざんな思いをした森を探しに戻る。自分の言った言葉に嫌気がさしてくる・・・


取りあえず丈夫な小屋と風呂を建て、2日ほどここで体力を回復することにした。出発したころよりずいぶんと暖かくなったのは気のせいだろうか?いや、出発してから1ヶ月近く経ってるはずだから気のせいではない。


風呂に浸かりながらちゃんと日付数えておくんだったと後悔したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る