第240話 宴会は久しぶり
今度の休みの前にモツ焼きすると言ったらアーノルドもアイナも行くと即答した。ブリックにもミーシャにも伝え済みだ。
翌日ドワンの所にイチゴを手土産に訪問する。
「次は何作るんじゃ?」
「今日は無いよ。はいこれお土産」
ドワンかぶすっとしながら食べると、甘いのと言った。
「イチゴの株を増やしてるんだけど、苗を売るか商会で農園持つか迷ってるんだ。めっちゃ甘くて大きいの、甘くて大きいの、普通くらいの、酸っぱいのと4種類に分けたんだ。今のは甘くて大きいやつだね。めっちゃ甘い奴は特別品種として他に出すつもりはないんだけど、他のはどうしようね?」
「果樹園も田んぼもあるんじゃ、今さらじゃ。ファムが来たら全部任せたらええじゃろ」
「トウモロコシもあるんだよね。全部できるかな?」
「出来るかなじゃなくてやらせるんじゃ。人手を雇って農業全般やつの担当じゃ」
なかなかスパルタだな。
「じゃあそれからにするよ。農地だけ確保しないとダメだね」
「果樹園のそばでええじゃろ。全部纏まってたほうがやつも楽じゃしな」
「そこに家建てる?土ので良ければ作っておくけど」
「それも来てから決めればええじゃろ」
「酒の醸造所はここじゃもう無理だよね」
「そうじゃな。何種類くらい考えておるんじゃ?」
「バーボン、ウイスキー、芋焼酎、サトウキビが出来たらラム酒、米でも出来たら日本酒だね」
「それは楽しみじゃの」
「あとさ、おやっさんいつもどこで飯食ってんの?」
「その辺の飯屋じゃ。旅の途中の飯屋よりマシなくらいで代わり映えせんがの」
「料理頑張りたい人がいるならそこにレシピ教えてみようかと思うんだけど。それか一から店を作るか」
「ほう、そうすればそこで旨い飯が食えるんじゃな?」
「飯が不味いと酒も旨くないって言ってたからね。どうする?」
「店を作るぞ。そうすればワシ専用の席も作れるから満員で入れんこともないからの」
ガッハッハッハと大笑いするドワン。
「場所は?」
「なぁに、隣が空くじゃろ」
ひでぇ・・・また地上げ屋みたいなことするんだろな。
それと俺にコック探しとけと言いやがった。ん料理人とかいるのかな?まぁ、居酒屋レベルでいいんだけど。
「ダン、知り合いに料理人いる?」
いるわけねーだろだって。そうだよね。
募集かけてテストしてみるか。
商会を出るときに忘れもんじゃと言われてトウモロコシを芯からとる物を渡された。そこそこ重いのでダンに任せた。
森で爆裂種を育てて種もぎをする。30キロくらい作ったので発注があっても大丈夫だな。
同じく食べる用と飼料用の種も30キロほど取った。ダンはグリグリするだけでも疲れていた。
今日は久しぶりに小屋での宴会だ。
シマチョウとマルチョウが大量と塩タン、味噌タン、カルビにロース。
刻みニンニク、ネギ、レモン、ごま油、白飯に大葉も準備完了。ほとんど仕込みはブリックがやってくれた。素晴らしい。
「親方、お疲れ様」
「お前ら親子はとんでもない仕事を押し付けよる。闘技場も遅らせるなとか抜かしおって」
さ、飲んで飲んでと皆で持ち上げながら宴会は進む。
「親方、タバサさん会いたがってたよ」
「あぁ、兄貴に聞いたワイ。それに坊主が親父をぶっ倒したんじゃろ?」
「ゲイル、お前そんなことしたのか?」
「いや、魔法使って攻撃してこいっていうからさぁ・・・」
「アーノルド、坊主の攻撃は鬼畜だったぞ。転ばして固定して動けなくしてから顔目掛けて土の弾を延々とびちびち当てよった。一撃で決めるで無く、止めてと言いかけた所に更にびちびちとな。それを気を失うまでやりおった」
クックックと笑いながらアーノルドに言いつけるドワン。ミゲルもそれを聞いて大爆笑だ。
「おまえそんな無慈悲な攻撃したのか?」
呆れるアーノルド。
「おやっさんが気絶するまで試合を止めなかったんだよ」
ドワンはバンデスがやられているモノマネをしながらびちびち言っている。ミゲルはそれを見て大笑いだ
本当にびちびちしてやろうか?
大笑いが一段落したあとドワンが話し出す。
「ワシは親父があんなに笑ってるのを初めて見た。ワシだけで帰ってたらあんな顔を見ることはなかったじゃろ。ワシも良く笑うようになったと言われたわい」
「親父が笑ってる顔はワシも記憶が無いの」
「親父と和解出来たのもゲイルのお陰じゃ」
下げて上げるとかテクニシャンだなおい。
「俺もドワーフの国に行って良かったよ。これも手に入ったし」
育てたトウモロコシをバーベキューの網の上に皮付きのまま載せる。皮が真っ黒になったら皮を剥いて味噌の上澄みを塗って更に焼く。最後にバター塗って完成だ。
「旨いっ!」
全員絶賛だ。
バーベキューにトウモロコシは定番なのだから当然だな。お腹いっぱいになった後もまだ飲むだろうから、枝豆を育てて塩ゆでにしておいた。食べ方はダンとドワンに聞いてくれ。
宴会が一段落して落ち着いた頃、アーノルドとドワンは二人で話していた。
「ドワーフの国はなんで国交結んだんだ?デメリットしかないだろう?」
「王から親父に宛てた手紙に坊主がドワーフと人間、エルフと人間の架け橋になるじゃろうと書いてあった。ワシは今回の話は政治的なものでは無く、坊主を守るためのものじゃと理解しとる。親父もそう思ったから了承したんじゃろ。ウエストランド王国とドワーフ王国が坊主を守るための同盟じゃ」
「ゲイルの為にそんなリスクを・・・」
「親父も坊主に惚れ込んだみたいでの、ドワーフの国に住めと言っておったぞ。他のやつらもドワーフだ人間だとか関係無しに一緒にトロッコ作ってたりしてたワイ。坊主はまるで昔からそこに住んでたように馴染んでおったぞ。今回5人ドワーフが来るがワシが声を掛けたやつは一人もおらん。全員坊主に認められて惚れ込んだやつらじゃ」
「そうだったのか。あいつは職人が来るとしか言ってなかったからな」
「まぁ、得意分野はバラバラじゃからワシの仕事は楽になりそうにないがの」
ガッハッハッハ
「ゲイルの為にありがとうなドワン」
「礼を言うのはこっちじゃ。久しぶりにお袋のスープを飲めたんじゃからな」
宴会は朝まで続いていたらしく、起きたらいつもの通りひどい有り様だった。
屋敷に戻ったあとにアーノルドに相談する。
「ちょっとボロン村に行って来ようかと思ってるんだけど」
「何しに行くんだ?」
「トウモロコシとイチゴの苗を持って行こうかと思うんだ。それ渡して育て方教えたらすぐ帰って来る。あと別件なんだけど料理人とそこの従業員を雇いたんだけど募集掛けて貰っていい?」
「ボロン村行きはわかった。料理人はうちのか?」
「いや、商会で食べ物屋兼飲み屋をやろうとかと思って。おやっさんや親方に美味しい飯を食って貰うのが主な目的なんだけどね」
「そうだな。うちはブリックがいるがドワン達は屋台かあの辺の食堂か宿屋しかないからな」
「初めは近くの食堂にレシピ教えようかと思ってたんだけど、商会で店やるって」
「募集は掛けといてやるが内容はどうする?」
「取りあえずテストはしようと思ってる。年齢性別種族は問わずにテスト結果で決めるよ。昼も夜も営業して休みは週一回、給与はどれくらいが妥当?」
「食堂なら料理人で銀貨20枚、従業員で銀貨15枚くらいが平均じゃないか?」
「じゃあそれでお願い。ボロン村から帰って来たらテストするから。テスト内容は後で通知するね」
明後日くらいに出発して馬で行って往復2日、向こうで2~3日滞在予定にして大体一週間だな。ドワーフ達が来るまでに帰って来れるだろう。ミーシャも連れて行こう。シルフィードに会いたいだろうし。
持って行くのはトウモロコシの種とイチゴの苗、ドワーフ王国のお土産くらいか。
初夏にボロン村に行くの初めてだな。どんな感じだろうか?ちょっと楽しみだな。
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