第127話 秘密を打ち明けるその2
「こりゃあたまげたワイ。鑑定魔法を使えるやつは滅多におらんぞ。ワシの知ってる限りは一人じゃ」
「鑑定魔法もそうだがぼっちゃん、魔力総量を意図的に増やせるってのは本当か?」
「うん、俺は増やせた。成長にしたがって自然に増えるのと、無理やり増やすのと。無理やり増やすのは魔力を使い切ることで増える。もしくはポーションとかで全回復以上に回復させると増える。さっきおやっさんとダンが力が漲るように感じたのは魔力がこの魔力水で全快以上に回復して魔力総量が増えたからだと思う」
「なんてこった。成長と共に魔力が増えるとはわかっておることじゃが、それ以外は知られておらんぞ」
「おいぼっちゃん、魔力を使い切ると気を失うじゃねーか、それでどれだけ増えるんだ?」
「一度使い切ると1増える」
「気を失ってたったの1しか増えないのか?」
「それなんだけどね、魔石があるでしょ?俺、魔石から魔力吸い取れるんだよね」
「魔石から魔力を吸い取れる?」
「それに魔石に魔力を込める事が出来る。つまり魔石に魔力を入れたり出したり出来るんだよ。だから魔力が0になった瞬間に魔力を魔石から吸えば気を失うこともないし、気持ち悪くなることもないよ。初めは吸うのにちょっと時間がかかったから気持ち悪かったけどね。ポーションで回復すると魔力回復にするのに時間かかるからこの方法は使えないんだよ。気絶したら自分で飲めないし」
俺の話を聞いてドワンがぎょっとした。
「なんじゃとっ?魔力を吸い取れる?坊主、それは人からも吸い取れるのか?」
「え?人から?それはやったことないな?なんで?」
「やったことないのか・・・なら違うか」
ドワンがぶつぶつ何かを呟きながら考えこんだ。
「おい、坊主。ワシの魔力が吸えるか試してみろ」
「え、おやっさんの魔力を?なんで?」
「いいからやってみろ。但し全部吸うなよ。少しじゃからな。いいか絶対全部吸うなよ!」
フリじゃないよね?
まぁ、言われた通りやってみよう。今魔力全快だから、魔力水に100程魔力を捨ててっと。
「じゃ、おやっさん行くよ」
俺は魔石から魔力を吸うのと同じようにしてみた。
「うぉっ」
ドワンが叫ぶ。
「おやっさん、人からも吸えたわ。便利だね」
吸った魔力をおやっさんに戻した。
「吸えるんじゃないかと思ったが、戻すことも出来るんじゃな?」
「うん、魔石の方が魔力の出し入れが楽だけど人でも同じだね」
「ふぅ、坊主、人から魔力を吸い取るのはリッチーの得意技じゃ。しかもお前さんのは無詠唱じゃからその点はリッチを上回っておる。これで触らずに離れてても吸えたら無敵じゃ」
え、離れて? てっきり触りながらするもんだと思ってたから試したことないな。
「おやっさん、もう一度試していい?」
そういって5mほど離れて吸ってみた。
「ぐうぅぅっ」
少し時間がかかるけど吸えた。
もう5mほど、合計10mほど離れてやってみる。
「ぐ、うっ・・・」
離れる程に吸う時間掛かるんだな。でも何度もやってたらもっと速く吸えるようになりそうだ。他の魔法も使う程早く、魔力消費も減ったからな。
「はい、返しとくね」
ゲイルは吸った魔力を返した。
「坊主、恐ろしいの・・・。あのリッチより恐ろしい」
「おやっさん、リッチって何?」
「ぼっちゃん、リッチてのはな、アンデット系の中でも最上位に君臨するアンデットの王だ。遭遇したらまず助からんと言われている。俺は出くわしたことないがな」
そりゃそうだろう。まず助からない魔物に出くわしてたらここにはおらんからな
「坊主、ワシらの現役時代に一度リッチに遭遇したことがあるんじゃ。あいつは聞いたこと無い言語の詠唱であらゆる攻撃魔法を繰り出すから何がくるかわからんし、こちらの魔力は吸われるし、おまけにこちらの攻撃が当たっても死なん。なんとか生き延びて逃げる事が出来たのは運が良かったとしか言いようが無い。ワシはディノよりやっかいだと思っとる」
アンデット?ゾンビとか?なんか気持ち悪そうだな。
「そんな危険な魔物を放っておいていいの?街に来たらヤバいんじゃ・・・」
「それは大丈夫じゃ、ダンジョンと呼ばれる洞窟の中からは出てきたことはない。なぜだかは知らんがな」
「じゃあなんでそんな危険なところに行ったの?」
「その洞窟はちょっと不思議な所でな、単なる穴ぐらとは違ってなんというか人工的なんじゃ。それで最深部には見たことがない古代のお宝があるんじゃ無いかと言われとる。それが証拠に古代の魔法陣や魔道具はそのダンジョンから多数見付かっておる」
「で、お宝を探しておやっさん達が最深部まで到達して、そこにリッチってのが居たのね?」
「そうじゃ、それまで文献にしか出てこなかった想像上の魔物だと思われておったからの。出くわした時はリッチとは分からんかった。やつの攻撃や能力を食らって後から分かった話じゃ」
「へぇ、じゃあそこのダンジョンにまだ面白いものが残ってる可能性があるんだね?」
「そうじゃ、ワシ達が逃げ帰ったことで誰も近付かんようになったはずじゃ」
伝説のパーティーが命からがら逃げ出したとこに行く馬鹿はいないか。
「おやっさん、ありがとう。面白い話だったよ」
「ばっかもーん!人が死にかけた話のどこが面白いんじゃっ!」
あ、そこじゃ無くて未発見のお宝のことなんだけど・・・・
もう狩りに行く時間も無いので小屋にあるもので簡単に昼飯を済ませた。
「ぼっちゃん、魔力を使いきったら魔力が1増える話なんだが」
その話は途中で終わっていた。
「うん、増えるよ」
「気絶して1しか増えないんじゃ割りにあわねぇと思うんだが、ぼっちゃんはそれをしてるんだよな?」
「そうだよ。鑑定魔法が使えないと無理なやり方なんだけどね」
俺はいつもの魔力総量アップの説明をした。
「それ、鑑定魔法と魔力吸ったり出したり出来ないと無理だな。恐らくその方法がわかってもぼっちゃんぐらいしか出来ねぇ」
「そうだね、でも俺がダンの魔力吸ったり出したりすれば増やせるんじゃない?」
「そうか、ぼっちゃんに魔力全部吸ってもらったり出したりすれば魔力が上がるってことか」
「なんじゃ?お前はろくに魔法も使えん癖に魔力上げたいのか?」
「お、俺は魔剣を使えるようになりたいんだ。」
「冒険者も引退したのにか?」
「あぁ、魔剣を使えるようになるのは夢だからな。ぼっちゃん、試しにやってみてくれねぇか」
「ダンにならかまわないけど、人の鑑定したことないからちゃんと出来るかどうかわかんないけどね」
「人の鑑定はしたことないのか?」
「特に必要ないし、それよりどこまで見えちゃうかわかんないんだよね。見られたくないものまで見えちゃうかもしれないし」
「坊主、鑑定魔法って何が見えるんじゃ?」
「自分のは魔力しか見てないけど、意図せず見えちゃうかもしれないんだよ。魔力が上がるに連れて情報増えてたりするから」
「なぁに、ぼっちゃんに見られて困るような事はねぇから心配ねぇ。やってみてくれ」
「ホントにいいの?」
「あぁ、頼む」
人の鑑定かぁ、気が引けるけど本人が良いって言ってるからいいか。魔力だけを見ることに集中したら余計なものも見えないだろうし。
「じゃ見るよ」
「おう」
ダンの魔力を鑑定っと
【名前】ベアトリア・ダンクローネ
【種族】人
【年齢】26歳
【魔力】1404/1404
「ベアトリア・ダンクローネ・・・?」
「なっ!?」
「ダン、本名はベアトリア・ダンクローネって言うの?え?家名があるって貴族?」
「そ、そんなのが見えたのかっ?」
あ、しまった。ドワンもいるのに驚いて声にだしちゃった。
「あぁ、ごめん。見えちゃった・・・」
「はぁ、・・・見られて困るもんないと言ったのは俺だからな。ぼっちゃんが悪いわけじゃねぇ・・・」
「ど、どうする?このままやるなら、ダンの魔力を全部吸えるまで俺の魔力減らさないとダメなんだけど」
「あぁ、やってくれ。名前の事は後で話す。ちなみに俺の魔力量はどれくらいだったんだ?」
「1404あったよ」
「ちなみにぼっちゃんはいくらあるんだ?」
「昨日見た時は3200くらいだった」
「俺の魔力は多いのか?」
「それがよくわかんないんだよね。基準がわかんないし、成長と共に増えるのが成長期だけなのか生涯続くのか。それにその増え方がみんな同じなのかそれぞれ違うのか」
「そうか、なら例えばファイアボールだとどれくらい魔力使うんだ?」
「前にゴブリン燃やしたのが1しか使ってない。同じ魔法、同じ威力でも使って行くうちに魔力消費量って言うのかな、どんどん消費魔力が減っていくよ」
「坊主、ゴブリンを倒すファイアボールなら3000発以上撃てるということか?」
「そうなるね。ブランデー保管用の地下室作った時も初めは魔力ものすごく使ったけど、だんだん魔力の減りが少なくなったから。ファイアボールもたくさん使ってればゴブリン倒すくらいのファイアボールなら何発撃ってもほとんど魔力減らないと思う」
「ダン、坊主の言う事が事実ならその辺の魔法使いより多いかもしれんぞ。理論上お前は1400発はファイアボールが撃てる魔力量だな」
なるほど、そういう風に推測するのか。ダンは魔力使いきったこともそんなにないだろうし、自然に増えた分だけだとは考えにくい。あれ増えるの月にプラス2とかだったしな。あとなんか増える条件なかったっけな?・・・あ、強い魔物を倒すってのがあったか。すっかり忘れてた。それでダンの魔力量がこんなにあるのか。
「そうか、俺がファイアボール使えたらそんなに撃てるのか。魔法使いも真っ青だな」
「ダン、使う人によって魔力使用量が違う可能性高いよ。最大限効率的に使ったらの話だから。効率が悪ければ最悪2~3発しか撃てない可能性もある」
「何っ?どういうことだ?」
「俺の場合はお告げがあったから魔法の効率化に優れている可能性が高い。自分で言うのもなんだけど」
「そうじゃな、坊主を基準に考えるのが間違いじゃったわ。詠唱なしで教えられなくても、どの魔法でも使えるようなやつはおらんからな」
「これは推測でしかないんだけど、ダンの魔力量は多い方だとは思う」
「どうしてそう思ったんじゃ?」
「成長と共に増えるのがあるでしょ。俺の場合は毎月2増えてたんだよ。1年で24増える。俺と同じ増え方してたと仮定したら20歳でも480でしょ」
「それだと計算が合わんな。ダンの魔力の増え方が坊主より高かったということか?」
「もうひとつ魔力が増える条件思い出したんだよ。強い魔物を倒したら増えるってのがあった。俺には関係無いから忘れてた」
「それならその可能性が高いな。ダンはかなり魔物を倒してるはずじゃからな」
「そうか、俺の魔力量はある方なんだな。そいつは朗報だぜ。しかし、もっと増やせるのが分かったんだ、もっと増やすぜ。さ、やってくれ」
「了解」
俺は1500ほど魔力を魔力水に入れて準備を整えた。
ダンの背中に手を当てる。
「じゃ、いくよ」
「おうっ!」
ズズッと魔力を吸い上げ始める。
「ぐおぉぉ。待った待ったっ!ぼっちゃん待ってくれっ」
「どうしたの?ダン」
「なんだこの感覚は?身体中の何かが引き出されるような嫌な感覚がする」
「ダン、そうじゃろ?リッチの攻撃がそんな感じじゃ」
そういやさっきドワンも変な声上げてたな。魔力吸われるってそんなに辛いんだ。
「おやっさん、先に言ってくれ・・」
「ダンやめる?」
「いや、せっかくだから魔力増やしたい。構わんからやってくれ」
大丈夫かな?
「じゃ、やるね」
ズズッーーー
「ぐおぉぉぉぉ」
ダンは必死に耐えている。そろそろ全部なくなるな。
魔力が0になった時にダンはひときわ大きく吠えたのですぐに1戻す。それっ0→1→0→1→0・・・
魔力が0になる度に吠えるダン。
「ぼ、ぼっちゃんギブ ギブっ!」
20回ほど0→1を繰り返した時にダンはギブアップした。
「はぁはぁはぁっ。ぼっちゃん、今のでいくつ増えたんだ?」
「えっと20増えた。」
「あんな思いをして20増えただけ・・・」
「なぁぼっちゃん、本当に俺の魔力量は多い方なんだな?」
「多分ね。一般の人の3倍以上あると思うよ?」
「じゃあもういいわ。ありがとよ」
よっぽど辛かったのかダンはぐったりしていたのだった。
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