第44話 もう出来たよ
ミーシャとキャッキャウフフした帰り道、
「親方、本当にありがとう。いくらお金払えばいいかな?」
「いらん」
え?
「いや、そんな訳には・・・」
「材料は坊主らが用意したもんだし、労力はワシと兄貴だけだ。まぁ、遊びみたいなもんだからな。それにおもしれぇもんも見せてもらったし」
おもしれぇもの?なんのこった?
「俺と兄貴はな20歳くらい歳が離れてんだが、そりゃあ子供の頃は兄貴が怖くてな」
ドワーフの20歳離れてるってのがどれくらいかわからんな。
「その兄貴にむかって兄貴自慢のファイヤボールをブレた剣と同じだと言った時の兄貴の顔といったら・・・」
クックックと悪そうに笑うミゲル。
「聞こえとるぞ。ワシは魔法よりハンマーが得意なんじゃ。ファイヤボールはついでじゃ」
ぶつくさ言うおやっさん。
ほう、おやっさんはハンマー使いなのか。どんな戦い方するんだろ?
「坊主、後はガラスだけだと思っとったから明日で終わると言ったが、机や椅子も追加するならもう少し日にちが掛かるぞ」
「お願いしていいの?」
「構わんが、さすがに金とるぞ」
「もちろん、ちゃんと払うよ」
既に金貨2枚あるから大丈夫。
「ミゲルの親方、請求は俺に回してくれ。こっちで支払う」
おや?アーノルドが支払ってくれるのか?
「ゲイル、皆が来る時用に大きい机を頼んだんだろ?それならこっちで払うぞ」
ラッキー!ここは子供らしくお言葉に甘えておこう。
「パパ、ありがとう」
「止めろ、気持ち悪い」
ソッコー気持ち悪い言われた・・・
まだ2歳児なのに。
「ゲイル、私の事はママでも良いのよ」
それは止めとく。なんか恥ずかしい。
ちょっとアイナが拗ねたころ、商会の前まで来た。
「坊主、明日ちゃんと顔をだせよ」
「なんで?」
「もう忘れたのかっ? 便器を作るって言ったじゃろうが」
「あ、そうだった。じゃ森へ向かう前に寄るね」
「忘れんとちゃんと来いよ」
そう言って商会へ戻って行った。
歩き疲れて来たな。
今日はここまでよちよちと自分で歩いてきたのだ。
「ダン、おんぶして」
「いいけどよ、いきなり燃やすなよ」
「そんなことしないよ!」
「今朝、頭燃やしたじゃねーか」
そうだった。
「もう仕返し済んだからしない」
本当だろうな?と、ぶつぶつ言いながらおんぶしてくれた。俺をおんぶしたダンにアーノルドが話しかける
「ダン、お前が考えた稽古方法をベントにも使っていいか?」
「そりゃ、構いませんが」
「ジョンの試験まで1ヶ月切ったからな。ジョンに掛かりきりでベントの相手をしてやれんのだ。素振り中心にさせてるがどうもな」
ああ、アーノルドもやっぱりベントの剣がブレてるの気付いてたんだな。
「それじゃ、ベントぼっちゃんの木剣も作っておきやしょうか?」
「スマンが頼めるか?板はこっちで用意するから」
アーノルドはダンが作った木剣をマジマジと見てたもんな。それだけ良く出来てるってことだな。
屋敷に到着したらミゲルがまた明日なと言って帰っていった。
ー夕食時ー
「父さん達今日はどこ行ってたの?」
ベントがアーノルドに聞いてくる
「今日はゲイルの稽古をしているのを見に行ってたんだ」
「仕事休んでまで?」
「ダンに任せ切りで何やってるか知らなかったからな。どうしてだ?」
「ぼくの所には一度も・・・」
ゴニョゴニョ言うベント。
「お前はいちいち父上に見に来てもらわんと何も出来んのか?」
ジョンから容赦無い一言が飛ぶ。
「そんな事は・・・」
うつむくベント。
ジョン、そんなに責めてやるな。それにアーノルドは魔法使ってみたかっただけだぞ、と心の中で呟く。
「ベントには2~3日中に新しい稽古方法をやってもらうから楽しみにしてろ」
「え、僕の為に新しい稽古方法を?」
嬉しそうに顔を上げるベント。
既に俺がやってる稽古方法って事はバレない方がいいな。
翌朝の稽古
まだ板とダンの木剣は用意されていないがベントは嬉しそうに剣を振っている。
ジョンは身体強化したままダッシュ切り込み、バッグステップ切り上げを繰り返している。
アーノルドは闘気が魔法だということを伏せたままにするつもりらしい。。
朝食が終わり、ミゲルが来たので3人で出掛ける。
「さぁ、行こうか」
とアーノルドも来ようとしたがアイナに連れ戻されていった。しばらく作業中心になるのでミーシャもお留守番だ。
「行ってらっしゃい!」
にこやかに手を振るミーシャ。
仲間外れにされて無かった事を実感したのか、たらふく鹿肉を食ったからか一昨日までとえらい違いだ。
ミーシャに軽く手を振り出掛ける。
商会までたどり着いたので、勝手に中に入る。ここは俺の商会らしいからな。
「おう、来たか。ここへ作ってくれ」
と、工房に案内され、従業員に見守られながら便器を作って行く。うにょうにょと便器を形作って行くと おぉっと驚きの声が上がった。
「おやっさん出来たよ」
「おうご苦労。お前らこれをどうやって量産するか考えやがれ」
「親方、この子供をうちで雇えば・・・」
「バッカヤロー」
ガスっと殴られる従業員。
「こいつはなぁ、このしょ・・、いいから考えろっ!」
おやっさん、俺が商会のトップだとか言いかけただろ?この分だとそのうちバレるな。
「おやっさん、陶器がいいと思うよ」
「陶器?」
「ほら、ツボとか土を焼いて、なんか掛けてツルツルにしてあるじゃない」
「形はどうすんだ?」
「木なんかで型作ってやれば便器の形が統一出来ると思う。蓋と便座をはめるのには工夫がいるかも」
「そうか、型を作っちまえばいいのか。あと陶器の職人も呼んで試してみるか」
「後はみんなで考えてね」
そう言って商会を出た。
てくてく歩き方ながらふと考える。あれ?便器って陶器だったよな?白いから磁器か?いや、そもそも陶器と磁器の違いってなんだっけ?
テレビで良い仕事してますねぇ~とか言ってた器とかまったく理解出来んかったから違いがよくわからん。しかし、今さら陶器と磁器の違いを調べようもないし気にしても仕方がないな。ノーヒントで作り出すより陶器というヒントがあっただけで良しとしよう
うんうんと自分に納得し稽古場に到着
「木材はまだあるのか?」
「いや、昨日でほとんど使っちまったな」
「じゃ、稽古場周りの木を切るか」
そう言ってミゲルは斧をダンは剣を持った。
剣?
そう思ってると二人とも金色の光に包まれていく。なるほど身体強化でやるんだ。
二人とも一撃で木を斬り倒す。チェーンソーより断然速い。おい地球、現代科学が負けたぞ。
10本程の木を斬り倒した後、枝もスパスパ斬っていく。
丸太になった木を二人で担いで小屋まで持って行くが、あれ何キロくらいあるんだろ?人間技とは思えない。重機いらずだなこの二人。
「おいダン、この丸太を角材に出来るか?」
「おう出来るぞ」
フンッ
ズバッ
フンッ
ズバッ
フンッ
ズバッ
フンッ
ズバッ
「これでいいか?」
「上等だ。今日はこの1本でいいぞ」
「分かった」
ダンが角材にしたやつをノコギリで切っていくミゲル。今日は材料作りにあてるようだ。角材にし終わったダンはアーノルドに頼まれてた木剣を作りに行った。
じゃ俺も増築するか 。
先ずはキッチンになる部分を作ることに。どうしようかな?竈とオーブンがこの辺で、そのうち冷蔵庫とかいるかもしれん。洗い場も必要だし、調理する場所も・・・
取りあえず大きめに作っておけば良いだろう
8畳くらいのコンテナを元の小屋に繋げるように作って、後から壁くり貫けばいいか。魔力見ながら作ろ。
【魔力】60/75
便器作ったから減ってるな。 魔力ポーションも持って来たから早めに作ろう。
うにょうにょ
うにょうにょ
箱形の土が盛り上がる。
1/3くらいの高さになった
【魔力】10/75
思ったより魔力使ってないな。一度作った物は慣れとかで魔力少なめで作れるのかもしれん。魔力ポーションを飲んで続きを・・・
【魔力】80/80
やっぱりポーション飲むと魔力増えてるな。ステータスも出しっぱなしにしてると新たに魔力は使わないようだ。これも新発見だな 。
うにょうにょと高さを上げていく。もう少しだけど魔力が足りないな。
追加でポーションを飲む。
【魔力】85/85
おっ、やっぱり増えた。そういや魔力ポーションってどれくらい回復するんだろ?今のところ全快というか元より増えてるんだけどな。そう思いつつ増築部分を完成させた。
元の小屋より小さく壁も1箇所少ないとはいえ1日で出来るとは思わなかった。
この小屋作るのに1ヶ月掛かったんだけどな。魔法って不思議だらけだ。
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