第40話 くまガッパ

翌日、朝稽古が終わって朝飯を食べたらミゲルの親方がやってきた。


「おい、行くぞ!」


すでにアーノルドとミーシャがスタンバイ



「あれ?父さんも行くの?」

「あれ?ミーシャも行くの?」


ダンと俺が互いに聞く。


「私も行くわよ」


そして後ろから声がした。アイナまで付いてくるようだ。



なんかよく分からないけど、皆でぞろぞろと森へ向かった。


道中、ミーシャはニッコニコだ。昨日の落ち込み具合とはえらい違いだ。アーノルドは何かフンフンっと意気込んでいるし。


「ダン、なんで父さんや母さんまで来ることになったの?」


「昨日、魔法が使えるようになった話をしたら、アーノルド様がどうしても行くって言い出してな。それよりミーシャは完全に小屋が出来上がってから呼ぶんじゃなかったのか?」


「ちょっと昨日ね」


とダンにミーシャとのやり取りを話した。


「お前ら夫婦みたいになってるな」


カッカッカと笑われる。それとアイナは単に付いて来ただけのようだ。


親方が話し掛けてくる。


「おい坊主、あれから兄貴の店に顔を出してないだろ?そろそろしびれ切らしてそうだから寄ってから行くぞ」


あ、月イチくらいで顔出せって言われてたな。すっかり忘れてた。


「そうだね、寄ってから行こうか」


おやっさんの店の前まできたら閉まってる。


「あれ、休みかな?閉まってるよ」


とダンに話しかける。


「おい、こっちだこっち!」


親方が大きな声で呼ぶ。


「なんだお前ら新しい商会の店が出来てたのも知らんのか?」


呆れた顔をする親方。商会の店と呼ばれる所にくると・・・


大きな看板に

【BUCHO SHOUKAI】

と書かれていた。


いつの間にこんなの作ったんだ?


「おい、兄貴、坊主たち連れて来たぞ」


「お前ら、月イチで顔出せって言ったじゃろっ」


いきなり怒鳴りだすおやっさん。でも別に怒ってるわけではなさそうだ


「お、なんだ、アーノルドにアイナも一緒か。それと嬢ちゃんも」


「お久しぶりですドワンさん」


ミーシャがとびきりの笑顔で返事する。


「坊主、これが今月の取り分だ」


と、チャリンとお金を出してくる。


き、金貨?


「今月は金貨2枚だ。ほれ」


そう言って俺に金貨を手渡した。


「こんなにあるの?」


元の世界だと200万円くらいの金額だ。


「あぁ、新しい道具が売れまくっとるぞ。作っても作っても追い付かんぐらいじゃ」


なんもせずに2ひゃくまん・・・


「一通り行き渡るまではこの調子じゃろう。ワシだけじゃ追い付かんから人も雇ってるわい」


奥の工房らしきところに結構な人数が働いてるのが見える。そうか繁盛してくれて何よりだ。


そしてダンが慌てたように聞く。


「お、おやっさん、ぶ、武器はどうしたんだ? もしかして止めたのか?」


「馬鹿言え、ワシから武器作りを取り上げてどうするつもりじゃ。武器は注文品だけ受ける事にしただけじゃ」


武器作りは止めていないと聞いてホッとするダン。


「そういや、みんなで揃ってどこに行くんじゃ?」


「今日はね、いつも稽古している森でちょっとね」


「なんじゃい、ちょっとねとは。怪しい臭いがするな。ワシも行くぞ」


えっ?ドワンのおやっさんも?別にいいけど・・・


こうしてドワンもパーティーに加わった


「あ、父さんこれ預かっておいて」

そう言って金貨1枚を渡す。


「これはダンに」


残りの1枚をダンに渡した。


「ぼっちゃんこれは?」


「いつも支払い全部してくれてるだろ?だからこれはダンに」


「いやいやいや、だからって多すぎるだろ?」


「ん、いつも支払いをしてくれてるってどういうことだ?」


アーノルドが聞いてくる。


串肉や鉄網など全部ダンが支払ってくれてることを話した。


「ちょっと・・・アナタ」


アイナは呆れた顔をする。


「ダン、それは俺からの経費として渡しておく。ゲイルから預かった金貨は2枚ということでいいな」


「だ、旦那様。べ、別にこれくらいの支払いは・・・」


「いや、いくらお前がゲイルと仲良くしてくれていると言っても仕事としてお前に任せてるんだ。自腹を切ることは許さん。また足りなくなったらちゃんと言え」


「わ、わかりやした」


俺はずっとダンが支払ってくれてるの気になってたんだよね。アーノルドが経費として認めてくれて良かった。


そんなやり取りをしてから森に向かって歩き出した時におやっさんが聞いてきた。


「おい、坊主。なんだその頭は?流行ってるのか?」


あ、忘れてた。ダンに仕返しするんだった


「おやっさん、イメチェンだよイメチェン」


なんだそりゃ?と不思議そうな顔をするおやっさん。


「父さん、ダンにおぶって貰うから鉄網持って」


?という顔をしながら鉄網を軽々持つアーノルド。


「ダン、おんぶして」


「なんだよ、今日は甘えん坊じゃねーか」


と言いながらしゃがんでくれる。


ダンにおぶさったまま町の外へ出た時に後ろ頭にポッと火を点けてやった。


「あっちいぃっ!」


慌てて俺を下ろして頭をはたくダン


「ぼっちゃん、何しやがんだ!」


「あーはっはっはっは!仕返しだよ仕返し!俺の前髪燃えたの黙ってただろ!知らなくて恥かいたんだからなっ」


「なっ!」


慌てて頭を触るダン。


「な、無いっ!俺の髪の毛が無い」


「おやっさん、これがイメチェンだよ」


ダンの頭を見てどわっはっはっはと笑う一同。


「みんな酷ぇ・・・」


カッパ頭になったダンが呟く。


「もうあなた達、いい加減にしなさい」


笑いすぎて涙目になったアイナがぶつぶつと呪文を唱えだした。


「ヒールっ!」


ダンの頭がピンク色に包まれると燃えて無くなった髪の毛が復活した。


え、母さんの治癒魔法って髪の毛再生出来るの?すげぇ。


「母さん、俺の前髪も・・・」


「あなたは人に魔法使った罰でそのままよ」


えぇ、悪いのはダンなのに、あんまりだ・・・



森に着いたあと、自分でヒールをかけてみたが、元々自分の髪型をよく見て無かった俺の前髪は再生することはなかったのだった。


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