第20話 恋の始まり
虫の声と川の音だけの暗い夜道
葉月夜子は水無月歩夢と歩いていた
化粧直ししてカウンターに戻ると
水無月歩夢はニコっと微笑んで
「おかえり」
と言った
夜子はほっとして笑顔になった
そんなに化粧崩れて無かったし
気にしすぎちゃったかな
笑顔のあゆむを見て
また隣の客と楽しく話した
客も少なくなってきたので
そろそろ帰ろうとすると
「危ないから送っていくよ」
と、あゆむが声をかけてきた
いつも1人で帰ってるし
慣れてるから大丈夫…と思ったが
あゆむともっと話したい
「…いいの?」
「うん、少し待ってて」
あゆむはママに声をかけて
帰り支度をすると
トコトコと夜子の隣に立った
「おまたせ」
奥のテーブルのママとおじ様たちから
「夜子ちゃんありがとうまたね!」
「若いっていいねぇ」
「真っ直ぐ帰るんだぞー」
という野次を受けて、2人は店をあとにした
どこに住んでるとか
いつもどうやって帰るとか話しながら
大通りに出た
「歩こうか」
と、あゆむが微笑む
もっと長く話したいと思っていた夜子は
同じ気持ちなのかなと嬉しくなった
大きな橋を渡り
川沿いを歩く
思っていたよりあゆむは
話すのが上手くて
夜子は色んな話をした
専門学校をやめた事
この仕事が楽しい事
あゆむの母の事
美術の向井先生が兄だという事
「もう母さんとそんな話までしてるの?」
とあゆむは照れ臭そうに優しく笑う
そして…文月菜々の事は聞けなかった
「少し座って話す?」
と、あゆむが川辺の石段を指さした
「うん!」
高校の時は
静かなグループの村人Aとして過ごした話
あゆむの仕事の話
あゆむの声も話し方も
全てが優しくて居心地がいい
夜子は久しぶりの楽しい時間に
幸せを感じて高揚していた
何でも受け止めてくれるような
包み込まれているような気分になり
この人なら私を
ずっと1番にしてくれるかもしれない
そんな気がする
この人が欲しいと夜子は思った
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