第2話 葉月夜子

18歳の葉月夜子は

多忙な日々を送っていた


朝から専門学校へ通い

夕方からは雑貨屋でアルバイト

夜は飲み屋のホステス

休みの日には一日中ファーストフードでアルバイト


家に帰ってシャワーを浴びて

少し眠ってまた家を出る


そんな毎日が繰り返されていた

まるで何かから逃げるように

夜子は働き詰めだった


高校を卒業し、専門学校に通いながら

アルバイトを掛け持ちし始めた夜子は


お金を稼ぐ事が楽しくなり

地道に勉強する事が馬鹿らしくなって

半年経つ頃に専門学校を辞めてしまった


夜子は昼にも働ける時間が増えた事が嬉しかった


その日も

いつもの様にファーストフードの

アルバイトに向かって

いつもの笑顔で仕事をこなしていた


「いらっしゃいませ...」と言ったあと

目の前に立つ客の顔を見て一瞬驚いた


見た目は普通のおじさんだけど

何かが普通では無い


「店内でお召し上がりですか?」

夜子は目を逸らして笑顔を作る


「いいえ、チーズバーガーのセット、コーラで」

「チーズバーガーセット、コーラMで宜しいですか」

「はい」


夜子はいつの間にか鼓動が早くなっていた

この人は何か変だ

「ありがとうございました」


その客が店を出ると

その不穏な気持ちは少しずつ落ち着いた


何だったんだろう

こんな体験は初めてだった






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