第11話
「んん、何時…10時!?」
アラームがなる前に起きれるなんて珍しいと思って時計を見ると長針が10を指していた。
なんで、アラーム鳴ってないよね、
急いでリビングに行くとテーブルの上に置き手紙が、
〝おはよう。よく眠れた?彩花の寝顔が可愛かったから起こさずに行くね〟
どうやら、時計のアラームを止めたのは湊さんみたいだ。
とりあえず、湊さんが帰ってくる前に、洗濯して掃除して、夜ご飯の支度して…
今日は休憩する時間ないかも
そうと決まれば早速取りかからなくちゃ
「…もうこんな時間か、」
家事をしてたらあっという間に時間が過ぎる。
そろそろ湊さんが帰ってくる。夜ご飯の支度しないと、
っ、
今、ベランダの方で黒い何かが通ったような…
気の所為…だよね、
うんうん。気の所為。昨日ホラー映画なんて見たから、勘違いしてるだけ。
そもそも、お化けなんていないし。
だけど、ここは15階なのに…人が行き来できるわけない。
やっぱりお化け…
「っ…!」
考え事をしながら料理してたから腕に火が当たってしまった。
だけど気が動転して、頭が回らなくて、逃げるべきなのかどうするべきなのかも分からなくて、真っ赤に腫れた腕をただ見つめることしができなかった。
「ただいまー」
湊さんだ。湊さんが帰ってきた。
「湊さん!」
勢い余ってそのまま抱きついた。
「おぉ、彩花ただいま。…彩花?」
湊さんはちゃんと受け止めてくれて何を聞かずに抱きしめてくれた。
「湊さん、湊さんっ、」
湊さんの匂い…落ち着く。
「…落ち着いた?ゆっくりお話出来る?」
そう言って、私と目線を合わせようと屈んで、腕を掴むから、
「いたっ、」
「…この怪我、どうした」
火傷の傷に気づいた。
声が低くなって、目が鋭くなった。
「これはいいの、それより、あそこにお化けがっ、」
「…お化け?」
「怖いの、湊さん、」
怖いものを見ると、ほんとにお化けが寄ってくるって聞いた事あったけどまさか本当だったとは。
「大丈夫だから。俺が見てくるよ。彩花はここにいて」
「駄目!お化けだよ!?何してくるか分からないんだから」
湊さんに何かあったら私…
「だからって、放置するわけにはいかないでしょ?」
「だけど、」
「俺を信じて」
そう言われると、信じて待つしかない。
「…分かった」
数分後、湊さんが帰ってきた。
「えっと…彩花、」
「湊さん!大丈夫だった…!」
「うん。その…ただの烏だったよ」
カラス…?お化けじゃなくて…?
「お化けじゃない…?」
「うん。烏だよ」
はぁ、良かったぁ
「お化けじゃなくて良かっ、っ、」
火傷してるの忘れてた。
「おいで、手当してあげる」
「ありがとう」
運がいいのか悪いのか、左腕だったから生活に支障はそこまでなさそう。
「明日から家事は全部俺がするから」
「…ん?」
聞き間違いだろうか
「ん?」
「全部?」
「うん」
手伝うとかじゃなくて全部?
「左腕だから大丈夫だよ?」
「それでも、俺のせいだから」
「えぇ、違うよ。どうしてそう思うの」
私が勝手にびっくりして火傷しただけなのに
「…昨日余計なこと言ったから」
あぁ、まぁそう言われればそうなんだけど。
「確かにお化けが出ないように気をつけてって言われて怖かったけど、そもそも私が意地を張らずに、ホラー映画なんて見なかったら良かったんだ
よ」
「違うよ。そもそも、俺がホラー映画を見ようなんて言い出さなければ良かった」
「それは、私がまだ一緒にいたいなんて言ったから。そんなこと言わなかったら、映画だって見なかったでしょ」
「それは俺の責任だよ。まだ一緒にいたいって思うほど、俺が寂しい思いさせちゃったから、」
お互い一歩も引こうとしない。
「で、でも、私、湊さんが帰ってくるまで家事とかしてたから、それが出来なくなったらすごく暇になっちゃうと思う...」
だから私に家事を…
「彩花の好きなことをすればいいんだよ」
「好きなこと…」
毎日家事ばっかりしてたから、自分が何を好きなのかすら分からない
「それじゃ、これを機に何か趣味でも見つけてみたら?」
趣味…趣味…
「ううーん、」
「俺のおすすめの映画でも見てさ」
「おすすめ…」
湊さんのおすすめってまさか、
「今度は彩花の好きそうなやつ。流石にホラー映画なんて見させないよ」
「湊さんがそう言うならそうしようかな、」
「うん」
「だけど、仕事帰ってきて家事するのってすごくしんどくない?私もてつだ『大丈夫だよ』まだ最後まで言ってないのに....」
「ごめんごめん」
「湊さんが頑張りすぎて倒れちゃいそうで怖い」
湊さんに無理はして欲しくない。
「俺はそんなに弱くないよ」
「それは分かってるけど、」
「大丈夫だから」
「じゃあ、しんどくなったらいつでも言ってね」
「ありがとう」
その日から湊さんは少しでも私に怪我の負担がかからないようにしてくれた。
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