私の事が大嫌いだったはずの旦那様が記憶喪失になってから、私を溺愛するようになったのですがこれは本当に現実ですか!?〜Season1〜

@hayama_25

第1話

「きゃっ!あぁ、またやっちゃった」

お皿が割れた音に反応して来てくれたみたいなんだけど…


「彩花!大丈夫!?怪我してない?」

そんなに慌てなくても大丈夫なのに、

「私は大丈夫だけど、ごめんね、お皿無駄にしちゃった」


お皿を片付けようと伸ばした手を

「駄目だよ」

そう言って掴まれた。


「え、でも」

「俺が拾うから、彩花は触らないで。また指切ったりしたら俺が嫌だから」

「そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

心配症だなぁ。なんて呆れた顔で笑ってみたけど、本当はすごく嬉しかった。


前までは心配するどころか、むしろ…


「きゃっ、」

早く片付けないとこんなのバレたらまた…


「何やってんの」


「湊さん…」

彼はいつもゴミを見るかのように私のことを見下す。その目を見る度に私は…


「はぁ、」

なんて、わざとらしくため息を吐くから

「ご、ごめんなさい…」

私はそうとしか言えなくて


「皿洗いもろくに出来ないのか」

「ごめん、なさい、」

皿洗いもまともに出来ない私が悪い。


「お前は何もできないんだな」

「ごめんなさい、」

何も出来ない私が悪い。


「はぁ、ごめんなさいはもう聞き飽きたんだよ」

「っ…」

それでもやっぱり、私にはごめんなさいしか言えなくて、


「もういい、怪我でもしたら危ないから、…お前がちゃんと掃除しておけよ」

「はい…」

「はぁ、お前を見てるとため息が出る。顔も見たくない」


こんな事を言われても、それでも耐えるしかない。これは私が決めた事じゃなくて、私の両親が決めた事だから。そう言って言い訳して、本当は…自分でも分かってる。だから余計に辛いんだって。



「ほんとお前は何をやっても駄目だな」


あの日もいつものように私に暴言を吐いていた。だけど、何故かあの時だけは無性に腹が立って、言い返してしまった。今思い返してみても、本当にどうしてなのか分からない。ただ、これ以上我慢したら、壊れてしまいそうだった。


「私だって、結婚なんてしたくなかった!毎日毎日、そんな事しか言えないんですか!?」


対抗なんてすると思わなかったのか、一瞬だけ驚いた表情をした。ような気がした。

「っ、…お前が、出来損ないだから悪いんだ。誰に歯向かってるのか分かっているんだろうな」


「両親のためとはいえ…もう、耐えられません。我慢の限界。私達、もう終わりにしましょう」

「は、何言って、」

「今まで迷惑ばかりかけてしまってごめんなさい。さようなら」


「…待て」


まさか引き止めてくるなんて…あぁ、そうか、

「離してください、離婚と言う言葉が気に入らないのであれば、別居という形でも構いません。ただあなたと一緒にいたくないだけなので。私がいない方があなたにとっても好都合のはずです。もう、これ以上話すことは何もないですよね」


これで終わり。何もかも。


「待てって言ってるだろ!」

「離してください!…えっ、湊さん…み、湊さん…?」

私が強く押してしまったせいで、湊さんはバランスを崩して、頭をぶつけてしまった。


それから、彼は何日も目を覚まさなかった。私は心配で…そして、罪悪感で眠ることが出来ず、ただ、ずっと彼のそばにいた。


「んっ…」


「湊さん!」

彼が起きたらきっと辛い日々がまた戻ってくる。怪我までさせてしまったのだから尚更…


「ここはどこ…?」

「湊さんのお部屋です。あれから3日間ずっと眠っていたんです」

「あれから…?なんのこと?」

「…へ?」


もしかして、あの日の事を覚えてないの?ただ一部の記憶がないだけなのか、それとも…


.

.

.


「ところで、どうしてここに天使がいるの?」

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