【短編】パティシエのなりかた
たか野む
【短編】パティシエのなりかた
「ケヒャア!」
(※小説のタイトルを誤字により、十一文字誤って記載した事をお詫びします。【パティシエのなりかた】は誤ったタイトルで、正しいタイトルは【髑髏塚銀河四周郎伝説2】でした。気になった人は【髑髏塚銀河四周郎伝説】を読んでほしいですが、この小説を読んでも決してパティシエになれないので注意してください。というか「パティシエになーろう」と思って最初にこの小説を見つけてしまったら凄まじい才能だと思います。パティシエなんてやめてカクヨム作家なんてどうです?)
髑髏塚銀河四周郎。そうは見えないが本来の職業はライトノベル作家だ。モヒカン頭に額に死の文字。首には殺害したライバルライトノベル作家の頭蓋骨をダルシムじみてつけている。極標準的なケヒャリスト作家の格好だ。
「だ、だめだよ、髑髏塚君!他の新人の頭を生クリームに突っ込んだら!」
髑髏塚の指導をしている先輩、畑木(はたき)が青い顔ならぬ白い顔をして恐る恐る注意する。先輩の顔についてるのはクリームだ。髑髏塚に先ほど、クリームが入ったボールに顔面がダイナミッククリームエントリーされた。
髑髏塚銀河四周郎はその風貌と異なり年功序列を重んじるため、意外なほど礼儀正しく返す。
「しかし、先輩。さっき先輩は『駄目だよ、先輩の顔を生クリームに突っ込んだら』と言いました。代替え手段として他の人物を生クリームに突っ込むのは普通なのでは?」
「……」
畑木は頭が痛くなった。
さて、本来、ライトノベル作家である髑髏塚がなぜパティシエをしているのか?
いや、彼の場合『
これには理由がある。
一週間前のことである。
「髑髏塚君。ここが目的地の病院だ」
髑髏塚銀河四周郎は悪鬼羅刹社(あっきらせつしゃ)より自作である「マスカットラブ」を刊行しているこう見えてもプロ作家だ。髑髏塚の担当編集、傘羅鬼祐一(がさらき ゆいいち)は身長三メートルちょうどのの筋骨隆々であり、体重は五百キロを超える。肥満では決してない。むしろマッシブである。あまりにもぎちぎちに筋肉の密度が高すぎるので、その筋肉は炭のように黒い。
「とりあえず知り合い殺ーそう♡」が方針である髑髏塚銀河四周郎も「ひゃあ! 隙を見せたな!?」と待ち合わせ場所にいた傘羅鬼に鎖鎌で襲い掛かったが「むん!」と反撃した傘羅鬼の人差し指一本の攻撃により全身の骨が砕けている。今も心なしか元気がない。
※担当編集は基本的に作家より強いです。筆者(たか野む)は幸いなことに講談社様より本を出してもらっておりますが、私の講談社担当編集も顔合わせの日にバルログじみたかぎづめを両手に付けながら虎に乗って『いけふくろう』前にエントリーしてきて、顔合わせの日に四回くらい殺されかけました。いまだに古傷の痛みに耐えながらこのお話を書いてます。
「はぁ傘羅鬼さん。今から俺が入院する病院ですか?」
病院の前で怪訝そうな顔をする髑髏塚銀河四周郎に傘羅鬼はある病室に案内する。
「ど、髑髏塚先生ですか!? 来てくれたんですか!?」
病室には一人の少女目を輝かせて待っていた。
「うわぁ! ど、髑髏塚先生ですか!? 私ずっとファンだったんです! サインください! ゲホッゲホ……」
少女は辛そうに咳をした。髑髏塚銀河四周郎にも良識はある。この少女はギリギリで「殺害してはいけない」に区分された。
「彼女は君のファンでね。マスカットラブ三巻の刊行を待ち望んでいるんだ」
「はぁ……」
お涙頂戴系の話は髑髏塚は好きではない。やる気のない返事をする。
「だが彼女は難病でね。三巻刊行前に難しい手術を受けねば生きるのが難しい状態なんだ……」
(ははーん)
髑髏塚銀河四周郎にも話が見えてきた。彼女に勇気を与えるために「三巻刊行を約束する」とか「三巻のあらすじを伝える」とか「ホームランを打つ」とかそんな約束をさせるつもりだろう。だが、傘羅鬼は思わぬ言葉を口にする。
「そこで君には一巻に登場するお菓子『マスカットのタルト』を作ってほしい」
「は?」
完全に予想外の事であった。
「私『マスカットのタルト』を食べれば手術をする勇気が湧くと思うんです……。あのお菓子、食べてみたい……タベ、タイ……おで、マスカットのタルトがタベダイ……」
きっと難病の影響なのだろう。人の言葉が喋れる化け物じみた禁断症状を出しながら少女がベッドで暴れるが、よくみると少女は鎖で何重にも縛られ、お札も複数張り付けてあるので全く動けない。
「髑髏塚君。頼まれてくれるかな?」
「いやいや、頼まれてくれるもなにも俺はライトノベル作家ケヒャよ。菓子なんて作ったことも……」
困惑する髑髏塚銀河に傘羅鬼は遠い目をする。
「……君、確かかわいい猫ちゃんを飼ってたね」
「はぁ……
髑髏塚銀河五周郎は髑髏塚銀河四周郎がこの世で唯一尊重してる生命だ。毎晩、顔をうずめては「生命(いのち)……」と呟いている。
「いや、なんでもないよ? ただかわいい猫ちゃんだから何かあれば困ると思ってね?」
「……やります。俺『マスカットのタルト』作ります……」
何かを察して泣きながら髑髏塚銀河四周郎が承諾した。きっと儚い少女の願いに感動して涙した美談なのだろう。
二重構造でわかりづらいが筆者(たか野む)が今回、お菓子の話を書きたかったのは理由がある。
……え!? マ、マッサージって聞いた来たんですが、もしかして今、カクヨムで書かされてます? こんな紐みたいな水着着せられて、これ本当にマッサージなんですか!? カクヨム投稿じゃないですよね!?「大丈夫、みんなやってるよー(カクヨムローションで筆者のリンパを刺激しながら)」
マッサージと騙されてリンパを揉まれながら書かされているのは確かだが、それは「事情」であり書いてる「理由」ではない。
さて、急に筆者の余談が入り申し訳ないが、筆者は一日のサラリーマン業務が終わった後、日課のフィットボクシングや趣味の小説執筆、ゲームや読書等を終わらせた後、楽しみにしていることがある。
そうだね、お酒を飲みながらニコニコ動画を見ることだね。
主にみるのはアニメとかではなく、動画投稿者たちが作ったくだらない動画だ。
こういうことを言うと、ニコニコ動画のクリエイター全方面に喧嘩を売ってしまうのだが、筆者は映画は大好きだが「映画はきちんと作られすぎていてお酒をのみながら雑に見るのに適していない」のだ。もちろんニコニコ動画とは言え、クリエイターの労力がかかっており、それを「くだらない」と評するのはどうかと思うが、私は誉め言葉として「ニコニコ動画は非常に雑に消費できることにとても価値がある」と思っている。クリエイターは全員尊敬している。
……だが勘のいい読者ならお気づきだろう。そう。この小説を書いているときニコニコ動画は大規模なサイバー攻撃を受けて見れなくなっているのだ。(書き始めは2024/7/16)
筆者のつつましい人生の中で大きな楽しみが奪われてしまった。許せん某国! たまにボソッとデレろ! あとの楽しみは「Slay the Spire」と「ウマ娘プリティダービー」と「FGO」と「読書」と「映画鑑賞」くらいしかないが、これをお酒を飲みながらやればいいと思いきや、問題点がある。
「動画鑑賞以外の趣味は手がふさがり、お酒が飲みづらく、映画は前述のように真面目に作られすぎていて雑に消費できない」のだ。あと筆者は「Slay the Spire連続クリア勢」なので(ソフトリセットを使ってるので真のガチ勢ではないが)もし酔ってミスって連続クリアが途絶えたら目も当てれない。一番得意なのはサイレンスで19回連続クリアしている。(なぜあと1回でミスったんだ……!)
話を戻すとそこで急遽、筆者はニコニコ動画の代替え手段を探すことにした。代替え手段というか代替え作品である。筆者は映画用にサブスク動画サイトには結構入ってるので、これは「肩の力を抜いて見れる作品」だ。
実は筆者は滅多にアニメを見ないのだが(それでも少しは見るので一般認知的に「アニメオタク」でいいとは思うが「アニメオタク」からすれば全然見てない半端者だ)、この際アニメでもいいだろうと探し出した。
見つけた。
そうだね「ダンジョン飯」だね。
まず最初に言っておくと私はダンジョン飯の原作大ファンだ。そして私には悪癖があり「原作が大好きなもののアニメ化が見れない」のだ。で、でもダンジョン飯が動いてるみんながちょくちょくタイムラインに流れてきて楽しそうだったんだもん……。
はっきり言ってダンジョン飯は全く持ってくだらなくない。本来は真剣な表情で奥歯をかみしめながら見るに値する作品だ。しかし、同時に肩の力を抜いて見れるのは事実である。
ライオス……チルチャック……マルシル……センシ……イヅツミ……お前らみんなかわいいよ……カブルーもかわいいよ……カブルーは原作では初登場辺りは嫌い寄りだったけど、大好きだよ……。
お酒を飲みながらダンジョン飯を見る時間はとても幸福な時間であったが一つ欠点があった。
……二クールって案外短いのだ。すぐに見終わってしまって、私はダンジョン飯の影響かあり「か、肩の力を抜いて見れる食事のアニメ!」とネットの海を探し出した。
見つけた。
そうだね「美味しんぼ」だね。
美味しんぼ結構面白くてびっくりした。漫画にある強火の思想も、たまにしかでない(たまに滅茶苦茶強火の思想が貫通してでる)。しかも全120話くらいあるので、これならニコニコ動画の復帰まで持つだろう。(全然持たなかった。今、もう最後の話である「日米コメ戦争」だ)
とにかく美味しんぼで筆者が感動したのは「うわー、色々な問題が料理で解決しますねぇ!」という点だ。
本当に色々な問題が料理で解決するのだ。「五年目のパスタ」とか絶対に料理で解決してはいけない問題だと思う。
前振りが非常に長くなったが、つまり筆者は「色々な問題がお菓子で解決しますねぇ!」という小説を書きたい。そう思って本作を書きだしたわけだ。
さてそんな筆者の願いを叶えるように泣いてる女性と冷めた目でそれを見ている訳ありっぽい若い男性が、髑髏塚銀河四周郎が働く喫茶店にいた。なんと都合の良い。早速お菓子で問題解決だ。都合がよいというか、書いてるの私だし、配置も自由自在だ。今、この男女の横に飢えた殺人グリズリーも配置できるんですよ? うふふ。
髑髏塚銀河四周郎が男女に近づき注文を取る。
「あー、サクランボのタルトにあとクリームあんみつ」
男は髑髏塚銀河四周郎の容姿に少し驚くものの、泣いてる女を無視して髑髏塚銀河四周郎に注文を告げる。
なんかうまい具合に菓子で解決させるチャンスだ! 美味しんぼなら料理で解決してるぞ!
「一体全体、何があったケヒャか?」
髑髏塚が泣いてる女性を見かねて尋ねる。
「うるせーな。こいつの妹と浮気してるのがバレて、妹が孕んじまったんだよ。こいつは泣き続けるし、話にならねぇ」
……これ、お菓子で解決するの無理じゃないか?
いや、頑張ればできる。美味しんぼ的な感じで「このチェリーがあなたと彼女で、このリンゴが妹さんです」的な説明で相手をハッとさせて差をつけろ!
「うるせぇ! お前が悪い!! 死ねぇ!! 死ねえぇぇぇ!」
髑髏塚は男性の後頭部をつかみ、テーブルに叩きつけた、
(※「色々な問題がお菓子で解決しますねぇ!」は誤った記述でした。「色々な問題が暴力で解決しますねぇ!」が正しい記述になります。これが私が書きたかった小説です)
叩きつけられた男性は白目をむき、額から血を流し、ピクリとも動かない。
ハッとした泣いてる彼女が男性の脈をとる。
「し、死んでる!?」
(※「色々な問題が暴力で解決しますねぇ!」は誤った記述でした。「色々な問題が暴力で解決しませんねぇ!」が正しい記述になり、私が書きたかった小説です。暴力はよくない)
その後、殺人グリズリーが急に乱入したおかげで話がうやむやになり、髑髏塚はそこそこ真面目にお菓子修行を続けた。
髑髏塚のライトノベル作家時代の月間キルスコアは百五十前後だが、パティシエ修業時代は三十程度なので彼がまじめに修行し、一日一人くらいしか人を殺していないことがわかる。真面目だわ。
一か月後。
「さぁお待たせケヒャ。『マスカットのタルト』ケヒャ」
髑髏塚銀河四周郎が病室にマスカットのタルトを持ってくると少女の姿はなかった。
「ケ、ヒャ……?」
「髑髏塚君。彼女はもう……」
無念の表情で髑髏塚の肩に手を置き、傘羅鬼が首を振る。
一か月も経てばまぁ仕方ないことだ。一緒に病室に来た畑木が膝から崩れ落ちる。
「そ……そんな……」
そんな一行へ今日、退院予定の少女が笑顔で声をかけた。
「あれ、髑髏塚先生!? タルト、作ってくれたんですか!? わー嬉しいなぁ!」
「は?」
傘羅鬼が説明する。
「いや彼女の手術は二週間後だった。手術は成功。術後の検査入院で今日退院だが、菓子作りに一か月もかけた君が悪い。そんな真剣にやると思わなかったよ」
髑髏塚は病院の天井を見ていた。
「タルト、切り分けましょう! 皆さんで食べていいか先生に聞いてきますね!」
笑顔の少女、その顔面に髑髏塚はタルトを投げた。
「うるせぇ! 死ねぇ!! 死ねえぇぇぇ!」
さすがにまだ十二程度の少女にこの仕打ちは畑木が言葉を失う。
「髑髏塚君! 何をしてるの!? ほら謝って!!」
畑木はそう言うが顔面をクリームまみれにした少女は訓練された髑髏塚ファンなので何度も頭を下げて「ありがとうございます! ありがとうございます!」と言い、畑木は困惑して「どういう情緒……?」というしかなかった。
●「髑髏塚銀河四周郎伝説」は二作出来てまして、「これ、無限にかけるのでは?」とたか野無むは考えたので本作を書きましたが、今作の方が明らかにパンチが弱いので、急遽これを2にしました(たか野む)●
【短編】パティシエのなりかた たか野む @takaNOmu
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