世界を救うヒーロー(悪役)【にゅふふ】-2話完結-

ますぱにーず/ユース

魔法少女、いきなりピンチ!

『私は、ベルティナ。この世界を破壊し、万物を統べる神になるものだ。…止められるものなら、止めてみろ』

 そんな声が、【ライフメーカー悪の組織】のアジトに設置された大きなモニターから流れてくる。

「せっかく溜まってたアニメ見ようとしたのにぃ」

 私はそう不満を零しながらも、流れてきた声を聞き逃すことはなかった。

「止められるものなら…ね。…にゅふふ」

 さてさて、【レインズ魔法少女】は止められるのかなぁ?

 楽しみだなぁ、にゅふふ。

「こらっ!勝手にアジトの中のモニターでア〇プラ見ないの!」

「え~、溜まってたアニメあるのにぃ~」

「後にしなさい、それどころじゃないのよ」

聖女フォールシスター】の視線の先を見る。いつの間にかア〇プラからニュース番組に切り替わっており、速報が流れていた。モニターには、赤い球体とそれを中心とした同心円が回転していて、放たれた赤い光線は東京の地を焼いていた。

「にゅえ?…わぁ、何あれ」

「分からないけど、これは好都合だわ」

「にゅ?それってどういう?」

「分からないの?【レインズ魔法少女】を倒すためにあれと協力するのよ」

「…にゅ~…そんな簡単に協力してくれるかにゃ?」

「それをするのが貴女の役割でしょう?【◆◆◆◆◆】」

「にゅやー、アニメ見せてー」

「ほぉら、さっさと仕事する!貴女も【あの方】に気に入られたいでしょ?」

「にゅやー、たすけてー」

聖女フォールシスター】に首根っこを掴まれて、アジトの外に放り出される。

「いきなり交渉っていうのは…フォシちゃん、急ぎ過ぎじゃにゃいかにゃ?」


 悪役あるある、その1。

 未知の敵と協力するために最初に駆り出される奴は、大体死ぬか洗脳されて敵になる。

 悪役あるある、その2。

 メタい悪役は生き延びる確率があがる。

「にゃーんてにぇ。…仕事するかー…ア〇プラでアニメ一気見しようと思ったんだけどなぁー。フォシちゃん、アニメ見たいがために私を放り出したとかないよね?」

 まあ、真面目なフォシちゃんの事だし大丈夫だとは思うけど。


◆一方その頃◆


「よし!やっとア〇プラの席が空いた!」

 溜まってた恋愛アニメ一気見しますわよ~!世界滅亡なんか知る物ですか!

 あ、このOP好きですわ。でも早く本編見たい~!サビの曲名表示だけ見てスキップです~!



 …なぁんか、アニメのOPみたいな音がアジトから聞こえるなぁ。

 あ、スキップされた。そのアニメのOP結構いい曲なのに。…サビには入ってたし、曲名だけ見てスキップしたな?

 あーあ、一体どこのフォール〇〇〇〇ナントカさんがアニメ見てるんだろーなー。

 ずるいなー、私だけ仕事にほっぽり出して自分はアニメ見てるの。

「あーあーずるいなー」

 仕事やめとこっかなー。でも怒られるの嫌だなぁー。フォシちゃんの説教長いし、全部的確に的を射ててクリティカルだから言い訳できないのもなんとも。


「にゅやー」

 おしごとやだー。ずっとア〇プラみてたいー。アニメ溜まってたのにぃー。




「―――ま、うだうだ言っても仕方ないかぁ」

 ちゃっちゃと済ましてフォシちゃんからア〇プラの席を奪還しよっと。

「東京…東京ねぇ…」

 遠くはないけど…。うん。やっぱり空にあんな赤い光線放つ如何いかにもなの物あったら違和感しかないや。




変身メタモルフォーシス】して、走って東京都庁に向かう。

変身メタモルフォーシス】で上がった身体能力なら、都庁までは2分とかからない。


 都庁の敷地内には影が差し、上空にはアジトから見た時とは比べ物にならない程大きな赤い球体と付属品があった。

「さて【レインズ魔法少女】。君達に私を止められるかね?」

「ふざけないで!止めて見せるに決まっているでしょう!―――「「変身!」」」


「にゅや、【レインズ魔法少女】。フォシが居たら間違いなく突っ込んでっただろうけど…」

レインズ魔法少女】、今の君たちには無理だよ。

 残念だけど、君たちにはあれを止める術はない。もっとも、"今のまま"ならね。

「はぁぁぁ!―――うわぁ!?」

「おりゃぁ!―――きゃあっ!?」

「うりゃぁああ!―――ひぎっ!?」

レインズ魔法少女】3人の攻撃は、ベル…ベル…名前なんだっけ。…ベルティ………、ともかく彼に簡単にいなされて、返り討ちになっている。

 スカイレインは特に酷い。攻撃をいなされた後に腹に一発、それから彼女の頭を掴んで紫色の槍の様な攻撃で体を何度も貫かれている。

 …見せしめ、って奴かな。

 感心しないね。ベル…なんとか。


「ぐっ―――がっ―――助け―――ひぎぃっ!」

 貫かれても血は出ない。何度も何度も体中を貫かれて、痛みだけを感じているようだ。

「痛―――あがっ―――やめ―――」

「【レインズ魔法少女】とはこんなものか」

「っ…ひぎ…いや、やめ…痛い…痛いよぉ…いたい…おかあさぁん…たすけ…あ゙っぁ゙!?!???!!~~~~っ!?!!?!!ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙!!!!」

 …いやぁ、酷い。

 ドサッと地面に倒れ込むようにして落ちるスカイレインは、涙目でただ全身に感じる激痛に悶えて苦しんでいるようだった。声すらも出せず、その場に蹲って苦しんでいる。

 変身が解除されて、スカイレインはただの少女に戻る。

 その所為か、苦しみはより一層増したのか、彼女は蹲って悶える事も、呼吸すらもままならなくなっていた。


「【レインズ魔法少女】。君たちの今の実力では、私を倒すことはできないようだな」

「…っ!…っ!?―――~~~~っ!!!!!!っ!…っ!?!!?!!?!!」




「…ベルティナっ…!」

 怒りを瞳の中で燃やし、揺らすサンレインが、ベルなんとかの事をそう呼ぶ。

 そう、ベルティナ。そういえばそんな名前だった。


「さぁ、君たちは一足先にあの世に行ってもらおう。安心しなさい。すぐに皆、そちらに向かう」

 そう言って、赤い光線が【レインズ魔法少女】に近付いていく―――。


――――――――

作者's つぶやき:はい、かなりの絶望局面ですね。

…本来の魔法少女系なら、ここから不思議な力がどうとか…で持ち直すんでしょうけど、まだ劇場版で言えば序盤。一度敗北を喫する場面です。最初は押されて、負けて、復活して、不思議な力に目覚めて…。え?『にゅや』とか『にゅふ』とか言ってる人はなんだって?…はて、何のことでしょう()。

――――――――

よろしければ、応援のハートマークと応援コメントをポチッと、よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る