一一、脅迫状
保健委員に頼まれていた五月の「ほけんだより」のクラス掲示と掃除が終わって、さあ帰ろうと靴箱に行くと、自分の黒スニーカーの上に何やら変な紙が置かれていることに気づく。
取り出すと、どうやらノートをポチ袋のように折ったものらしい。のりづけなどはされていないので、裏面の折り込まれているところから簡単に開いた。すると中央に大きく荒れた筆跡で文字が書かれていた。
「泉慧に関わるな。後悔するぞ」
ぎょっとした。
紙を持つ手に緊張が走り、少し震える。心臓の鼓動も早くなった。
まだ紙は半分に折り畳まれている状態だったので、開いて元の形に戻してみる。ノートからハサミを使って一枚切り離したみたいだ。端が綺麗に切り落とされ、片方だけ余白部分がほとんどなくなっている。
誰かがこれを僕の靴箱に入れた。文面の内容は、脅しだ。これ以上泉慧に近づくなと。
「脅しか。……ししおどしって、どうしてししおどしって言うんだろう?」
ふと頭に浮かんだ疑問を平静になるために口に出す。いま絶対どうでもいいけど。
一応送り主の名前を探すが、ない。一体誰が書いたのか。
宮野くん、だろうか。やっぱり。昼休み、泉くんと話していた僕に向けたあの視線。実際この前に同じような言葉を言われている。
他の可能性としては、クラスの友達、ハマか泰斗あたりが直接止めておけとは言えなくて、善意でこういう手段を取ったとかだけど……。
まあ宮野くんの可能性が一番濃厚だよね。
さて、これを受けて僕はどう対応するか。忠告を聞くか否か。それについてはもう以前に結論を出している。
聞く気はない。
今日も会話に失敗し泉くんと話すのは無理だと思っていたなら、また違ったかもしれない。でも今日は楽しく話すことができた。泉くんが楽しんでくれていたのかはわからないけど、また話したいと思うので、退かない。
家で想定していた通り、もし宮野くんが何か言ってきたなら僕は学級委員長として泉くんを見過ごせないという建前でやり過ごすつもりだ。
でもまさかここまであからさまな脅しを受けるとは思わなかった。サスペンスとしては面白いけど、実際こんな仕打ちをされると心臓に悪い。いまもまだちょっとドキドキしている。
ふとそのとき、頭に閃いたものがあった。
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