深淵の悪魔
七星北斗(化物)
1.起きる
僕は一本の映画に魅せられた。人をメインに置くわけでなく、様々な花を表現するだけの異例な作品【青の花】しかし一般的な感想は、マイナー作品であることに変わりない。
世界には、たくさんの表現方法がある。簡単なものだったら言葉だったり、動きなども表現と呼ぶ。
この物語に出会った僕は、作家の卵になった。様々な表現によって生まれる【ポシビリティー】というモンスター。
ポシビリティーのことは、基本的にポビーと簡略化して呼ぶ。ポビーには知能があり、その見た目は人型の場合もあれば、妖精や異形の姿など様々だ。
作品の波長を感知して、吸収する機器のレトロウェーブ。ポビーを産み出して育てるのが、このゲームの遊び方だ。
五年かけて作った作品【鬼木の巫女】鬼が宿るとされる木に恋した一人の女の話。
物語のあらすじは、旅をする女が山の大木の下で雨宿りをするとこから始まる。彼女は、誰に聞かせるわけでもないが、何となく旅の話を語りたくなったのだ。
暗くなり少しばかり寂しくなった頃、旅の話は終わりか?もっと話してほしいと。誰かの声が山の中でやまびこになって響いた。
「誰?」
怖がらせてしまうかもしれないが、私はあなたが背を向ける木に宿った魂だという。
そんな出会いから始まり、やがて女はこの木に恋心を芽生えるといった物語。
この物語をレトロウェーブで読み込み、ポビーを生み出すことにした。ポビーには以前から興味があり、最新型を予約して手に入れたわけだが。
どうなるかな?
レトロウェーブから呼び出されたポビーは、見た目などの観点から高額で売買されることもある。
僕のポビーは、どんな姿をしているのだろう?想像するだけで胸がドキドキする。
「いざ、南無三」
レトロウェーブの画面が光を放ち、なにも見えない。しばらくすると光は収まった。
機械音声が告げる「あなたのポビーのお名前は、ベイルリッチ。たくさん可愛がってくださいね」と。
「ベイルリッチ…カッコいい名前だね。で、ポビーはどこにいるの?」
部屋の中を見渡すが、しかしその姿はない。まさか不具合?その時、ガタッとどこからか物音がする。
今度はガサガサと物音がした。どうやらリビングの方からだった。
リビングに向かうと、冷蔵庫を何者かが漁っている。その何者かは、目が合うとたらーと冷や汗を流し、ガタガタと震えだす。
そういえばポビーは、人間を極度に怖がる子もいることを思い出した。こういう場合どうすればいいんだろうか?
でもまずは服を着せないと、目のやり場に困る。
このポビーは人型で頭には角が生えており、肌は少し日焼けしたような色で背丈は中学生くらい。服などは身に付けてないため、いろいろアウトだ。
深淵の悪魔 七星北斗(化物) @sitiseihokuto
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