第11話 財閥内の亀裂

直人と私の関係が公になった翌日、オフィスは相変わらず緊張感に包まれていた。社員たちの視線が痛いほど感じられるが、私は平然と振る舞うよう努めた。これからの行動が私たちの未来を左右するのだ。デスクに着くと、直人からのメッセージが表示された。


「会議室に来てくれ。重要な話がある。」


私は急いで会議室に向かった。部屋に入ると、直人が既に待っていた。彼の顔には疲労の色が濃く浮かんでいたが、目には強い決意が宿っていた。


「美香、ありがとう。来てくれて。」直人は私に微笑みかけたが、その笑みはどこか緊張していた。


「直人、大丈夫?」私は心配そうに尋ねた。


「美香、状況はますます厳しくなっている。結衣の支持者たちが動き始め、私の失脚を狙っている。私たちは彼らの動きを先手で防がなければならない。」直人は重い声で言った。


「何をすればいい?」私は真剣に尋ねた。


「まず、結衣の動きを掴む必要がある。彼女が何を計画しているのか、その詳細を知ることが重要だ。」直人は机に広げた書類を指し示した。


私は書類に目を通しながら、直人の言葉に頷いた。「了解。私もできる限りのことをするわ。」


その夜、私は一人でオフィスに残り、結衣の動きを探るための資料を整理していた。直人は取締役たちと会議を重ね、彼らの支持を得るために奔走している。私も彼に負けていられない。


突然、ドアが開き、関田が入ってきた。「美香さん、あなたに見せたいものがあります。」関田は冷静な表情で言った。


「何ですか?」私は彼の言葉に興味を持ち、手を止めた。


関田はファイルを広げ、重要な書類を見せてくれた。「これらは、結衣さんが密かに進めているプロジェクトの詳細です。彼女は財閥の資金を不正に流用して、新たな事業を立ち上げようとしています。」


私は書類を見ながら、驚愕の表情を隠せなかった。「こんなことが…直人にすぐに知らせないと。」


関田は頷いた。「そうですね。彼に知らせて、対策を講じる必要があります。しかし、注意してください。結衣さんの支持者たちは手段を選ばないでしょう。」


直人に連絡し、私たちは関田が提供した情報を元に緊急会議を開くことにした。会議室に集まった取締役たちの顔には緊張が浮かんでいた。直人が書類を見せながら説明を始めると、彼らの表情はさらに険しくなった。


「皆さん、これが結衣の進めている不正なプロジェクトの証拠です。彼女は財閥の資金を私的に流用し、新たな事業を立ち上げようとしています。私たちはこれを阻止しなければなりません。」直人の声には強い決意が込められていた。


「しかし、これが事実だとしても、彼女の支持者たちが黙っているとは思えません。」一人の取締役が不安げに言った。


「その通りです。しかし、私たちは正しいことをしなければなりません。財閥の未来を守るために。」直人はきっぱりと答えた。


私はその場で直人の隣に立ち、彼を支えるように手を握りしめた。「私たちは共に戦います。結衣の不正を暴き、財閥を守りましょう。」


取締役たちはしばらく黙って考え込んでいたが、やがて一人、また一人と賛同の意を表明した。直人の決意が彼らの心を動かしたのだ。


その夜、直人と私は再びオフィスに残り、今後の対策を練った。彼は深い疲労を感じながらも、その目には希望の光が宿っていた。


「美香、ありがとう。君がいてくれるおかげで、僕は頑張れる。」直人は微笑みながら私に言った。


「私も同じよ、直人。私たちは一緒にこの困難を乗り越えましょう。」私は彼の手を握り返し、強い絆を感じた。


私たちは新たな試練に立ち向かうため、再び立ち上がった。結衣の陰謀を暴き出し、財閥を守るために、私たちは全力を尽くす。

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