第23話・討伐後

 レンたちはサーディルの冒険者ギルドに戻ってきた。


「それじゃあ、報酬分配と行きましょうか!」


 レンは意気揚々とエールを片手に言った。

 このエールだが未成年または、設定で酒をOFFに設定したプレイヤーが飲むとジュースになる。レンは酒OFF設定のためジュースだ。アルコールの味がダメなのである。


「いやぁ、剣はレンさんですね? いいですよねエルザさん!」


 エビるは言った。

 剣は亡霊騎士よろしく防御力を犠牲に攻撃力を上げる性能を持っている。それも亡霊騎士のものより強くだ。


 だからレイドボスは攻撃されない時間を作って、討伐にかかる時間を伸ばしていた。それでも膨大なHPがあったのだ。なにせレイドボスだから。


「依存ない。レンは七面六臂の活躍をした」


 レンとしては剣は欲しかった。そのために他の報酬をかなぐり捨てるつもりだったが……。


「じゃあ、あとは霊珠を売ったお金を山分けで!」


 亡霊系のボスのドロップは基本2つだ。霊珠と武器。この霊珠がかなり高い値段で売れる。武器防具につけたときの性能は一撃死を防ぐ効果もある。だが、基本的にはもっとランクの低いユニークモンスターの宝玉で一撃死の無効は事足りるのである。よって一撃死の無効にレイドボスの宝玉……今回は霊珠を使うことはない。


「あぁ、そうしよう……」


 レンが勢いに押されているうちに、あれよあれよと配分が決まってしまったのである。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 そうしてレイドボスの報酬を山分けしたあとレンは視聴者と感想戦兼レベルアップ処理に移る。


「いやぁー、レイドボスやったけどどうだった? みんな……」


 流石にレンにも疲れが見えた。なにせ攻撃の嵐の中を至近距離で捌き続けたのだ。


スノウ:控えめに言って人外だった

朝神:無茶という言葉が辞書に載ってないんだなと思った


†黒酢†:でも最後死んだのは最高に芸人してた

アルバこぁ:パタッと倒れてそのまま死んじゃうんだもんなぁ……

ネギ侍:最後の死に方で腹抱えて笑った……

エビる:いやぁ、あそこで死なれるとは……


 エビるはもう視聴者に戻っていた。そう、基本的にはレンの配信をつけっぱなしにながら攻略をしているのである。


「あそこで死んだのはさ、僕もびっくりしたよ。これ、防御力マイナスだね……」


 防御力マイナス状態は本来ダメージが発生しないようなところでダメージが発生する状態である。もちろん攻撃なんて受けた日には、ボーナスダメージが発生する。


レンちゃんで抜き隊:切り抜きポイントだったなぁ……


「抜かないでえええええ!」


 このやり取りも定番化してきていた。

 レンちゃんで抜き隊は、忙しい。なぜなら毎日レンは長時間放送するし、切り抜きポイントもたくさん作る。超絶プレイの切り抜きポイントに、死亡切り抜きポイント等だ。


ニューラゲーム:レイドボス討伐お疲れ様です。本当に異様な上手さですね……


 また、ニューラゲームも忙しい。早くレンのデータをAIに学習させきらないと、レンが攻略の手応えを感じられるエリアが生成されなくなってしまうかもしれないのだ。

 レンがウニーカ・レーテを攻略しているようでいて、その実ウニーカ・レーテのAIがレンを攻略しているのである。


「いやいやぁ……慣れですよ。みなさんも、そのうちね」


 否、できるようにならないのである。レンの上手さは別次元なのだ。

 そんな話をしながらステータス画面を開いた。そこには三人でしか分割されていない膨大なレイドボス経験値が流れ込んでいたのだ。


――――――――――――

Lv58

余剰ポイント:80

生命力1 HP30/30

集中力10 MP300/300

体力10 スタミナ300/300

筋力16

技量40

敏捷38

知力16

耐久1

リープⅡ(ユニーク)【消費MP3】・リープⅢ【未習得】

カウンタースタブ(ユニーク・パッシブ):カウンタースタブ時攻撃力×150%

【推奨】死者の刃:瀕死状態での攻撃力×150%

――――――――――――――


 低レベルでの攻略だったためレベルの上昇値も高い。

 しかしレンはここまで技量を優先してきた。大鎌というのは技量を参照する武器で、40というステータス値は一種の大台なのだ。それを超えると、ボーナスダメージの伸びが少し悪くなる。


「一気にレベル20かぁ。うわしかも死者の刃強い。これは習得だなぁ……。あとはリープも3にして……。敏捷に全部突っ込むと敏捷118かぁ……悩むなぁ……」


 敏捷118、普通のプレイヤーは制御不能に陥る敏捷値である。だが、そのあたりならまだ適応できるプレイヤーは居る。


アリ酢:レンちゃんはどのくらいまでの敏捷に適応できる?


「ん? 多分359くらいかなぁ。そこら辺からちょっと様子見無いと……」


 そう、レンの適応できる敏捷はそんなものだ。人外プレイヤーはステータスまで人外になるのだ……。


ニューラゲーム:そのあたりの敏捷値って人間用に設計されてないんですけど……

朝神:シンプルに人外

スノウ:ダメだ、この人本格的に人外だ。


 そう、コメント欄は人外の文字で埋め尽くされた。


レンちゃんで抜き隊:この人外発言も抜きどころ


 レンちゃんで抜き隊はこれからもどんどん忙しくなっていくのである。

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