第10話・最強冒険者爆誕

朝神:すげぇええええ

スノウ:あのNPCめちゃくちゃ強かったのに

ガメオベラ:ほぼ一方的に勝っちゃった


 そう、わすれていたのは配信をつけっぱなしにしているということだ。だから、その戦いも全部視聴者に見られていたのである。


おるとロス:てかエビるニキ居なくね?


 そう、それにコメント欄に現れなくなった視聴者も確認していなかった。

 それをレンはまるでわかっていたかのように何事もなく進行していく。


「そういえばエビるさんなのかな?」


 レンは短剣使いの男に話しかけた。


「あ、そうですよ! 僕エビるです!」


 エビるは視聴者の中でもウニーカ・レーテに詳しくプレイヤースキルも高い視聴者だった。それ故にサーディルのレンに追いつくことができたのである。


「二人はどこぞで知り合っていたか……。それと、レン。私の意思を尊重してくれたこと嬉しかったぞ」


 レンは、確かにエルザを尊重していた。それはそれとしてディルの所持金が欲しかっただけである。

 そして、その際レンは負けても失うものがなかったのだ。なにせ所持金が0だったのだから……。


「あはは……」


 負ける気がなかったとはいえそれはレンにとって気まずかったのである。


「さて、レン。私と受け付けに行こう! 冒険者登録をするぞ!」


 そう、それにレンはこれから冒険者登録をしなくてはいけない。


「そうでした! 急ぎましょう!」


 そして、資金を作り鍛冶屋に持っていかなくてはならないのだ。そうしないといつまで経ってもメインウェポンが手に入らないのである。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 そうして、冒険者ギルドの受付に三人でいったところレンは顔を見られるやいなやといった感じに受付嬢から言われた。


「あなたを冒険者ギルドにスカウトします!」


 冒険者ギルドからしたら異例の大型新人である。


「え? あれ? 試験とかいいんですか?」


 通常冒険者ギルドの加入には試験がある。それはβ版からの仕様だった。だがしかし、β版より更に膨大なデータで訓練されたNPCは自己判断能力が向上している。

 しかも……。


「あぁ、いいんですよ! だって、ディルさんは認定試験官の一人ですから! それを無傷で降参させたあなたは、冒険者として必要な戦闘能力面は完全にクリアしています!」


 そう、試験を受けるまでもなかったのである。


「試験官倒しちゃった……」


 だからこそギルドは一切の躊躇なくレンをスカウトできたのである。


「ちなみに私も認定試験官ではある」


 エルザもNPCの中でかなり上位の実力者である。


「しかし、すごいですね。サーディルの冒険者登録に必要な水準はフィースト、セカンディルに比べてかなり高いんです」


 初心者向けのゲームの進め方は、フィーストでギルドに登録し、その後ギルド推薦で次の街へ行くことだ。レンそうするとプレイヤースキルとレベルによって生まれた自身のキャラクターの実力にふさわしい場所での冒険ができるのである。


「あはは……それはそうと、冒険者登録ができたので買い取りなどもお願いできますか?」


 ゲームであるからして、当然インベントリというものが存在する。それがプレイヤーにのみ許される特権であるとプレイヤーば物流のバランスブレイカー担ってしまうのだ。よってこのゲームではNPCもインベントリを持つ。


「はい! インベントリ内に何かあれば買い取りますよ!」


 と、いったのが受付嬢の運の尽きであった。

 レンのインベントリからは亡霊騎士の素材が大量に出てきたのである。


「じゃあ、これお願いします!」


 亡霊騎士のドロップ素材の中でも換金率の高いものは魂玉といい、とても小さなものだ。それが、受付カウンターに山と積み上げられている。


「こ、こんなにですか……?」


 レンにとっては亡霊騎士は歯牙にもかけぬ相手。何体倒そうが苦にはならない。


「はい!」


 その時コメントでボソリとつぶやく者が一人……。


ニューラゲーム:自動換金システムなくしたんですよね……リアルじゃないから……


 そう、β版ではいくら素材を出そうが、換金は一瞬であった。しかし、正式版では受付嬢達による手作業に変わっていたのだ。


「みんな手伝ってください!」


 そこから受付嬢達による総出の鑑定が始まった。

 

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 しばらくして……。

 換金は無事終わり、二人には一旦別れを告げレンは鍛冶場に戻った。相変わらずぶっきらぼうなドワーフが鍛冶屋の店主であるがレンが現れると笑顔になったのである。


「おう、坊主! 金は持ってきたか?」


 彼はレンを気に入っているのだ。戦士としての確かな力量とそれを鼻にかけぬ礼儀正しさを持って。


「はい! これだけあれば、店主さんにも失礼じゃないでしょう!」


 そう言い、レンはインベントリから金貨を取り出した。すると出るわ出るわ無数の金貨。金貨だけで合計数百枚にもなる。


「おおお、まてまてまてまて! お前さっきまで無一文だっただろうが! どっからこんな金貨……いや、当ててやる! てめぇ、賭けやったな?」


 そう、ディルは強い。強い冒険者ということは金を持っているということだ。それに対して賭け決闘を行い圧勝した。


「ご明察です。それに、いい素材もありますよ……」


 すっかり悪い顔になったレンであった。

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