第5話 お隣の鈴香さんは、僕にとって大事な
昨日のことを思い出しただけで、身体中が熱くなって眩暈でクラクラしてしまいそうだ。
お隣の鈴香さん。
とても可愛くて、楽しい年上のお姉さん。そんな憧れの存在が、僕の部屋に来てくれるなんて思ってもいなかった。
(ピンポーン)
(ガチャ)
「きょ、今日はお誘い頂いてありがとうございます……っ! あ、あのね、これ……私の大好きな水飴キャンディー。イチゴとかフルーツとかがコーティングされていて可愛いんだよ。一緒に食べない?」
「き、緊張……? そ、そりゃするよ! だっていくらお隣さんとはいえ、男の人の部屋に来るのって初めてだし……その、それに……す、好きな人なんだもん。緊張しない方がおかしくない?」
「お、お、お酒飲もう! もうドキドキし過ぎて頭がおかしくなりそう! 酔っ払ってしまえば少しは気が紛れると思うし……! え、きょ、今日は飲んだらだめ? えぇー……! そ、そんな殺生な! 私からお酒の力をとってしまったら何が残ると思うの?」
「お酒のせいって誤魔化されたくない? ちゃんと言いたいから? ——そっか、それなら仕方ないね……(もじもじ)」
「それじゃ……おじゃま……します。間取り、同じはずなのに私の部屋とは全然雰囲気が違うね。男の人の部屋って感じ。物が少なくて綺麗だね」
「わっ、テレビ大きィねー。映画が趣味なの? へぇ、私はミュージックビデオやライブ映像見たりするのが好きだよ。家にいる時はほとんど音楽を流しているし」
「え、聞こえてる? わ、私の歌ってる声が⁉︎」
「嘘でしょ? そんなの知らないんだけど! え、それじゃ私の生活音、君に聞こえていたの?」
「ま、まさかシャワーの音とか、トイレの音とか……! へ、変態!」
(近くにあったクッションを僕に投げる)
「え、そう言った音は聞こえないって? あ、そっか……よく考えたら私にも聞こえているはずだもね。そっか、そっか……。わわっ、ゴメンね! 思わず投げちゃって! 痛くない? 大丈夫?」
本気で心配している鈴香さんをからかおうと「いたたたた」と痛がるふりをした。
すると彼女は僕の頭を撫でて、ヨシヨシとしてきた。
「ごめんね、痛かった? よしよし……っ」
至近距離で頭を撫でられ、僕は慌てて大丈夫と行為を止めた。
「大丈夫なの? そっかぁ……よかった」
「あ、そう言えば今日はどうするの? 何かテレビを見るの? それともお茶を淹れようか? 私のおすすめの紅茶を淹れようか?」
持ってきたバッグの中からお菓子などを取り出している鈴香さんの手を取って、心に決めていた言葉を紡ぎ始めた。
「昨日の……続き? ——うん、うん……。うん」
彼女は緩んだ口元を両手を覆いながら、嬉しそうに目を細めた。
「ねぇ、それじゃ……今から私達は、彼氏彼女の関係だね。急なんだけど、ギュッってしてもいい……? だめ?」
「ん、ン……恥ずかしいね。あんなに沢山話したりしたのに、この距離は……なかったし。君の身体も、意外とゴツゴツしてて、やっぱり男の子なんだね」
「え、私の身体は柔らかくて気持ちがいいって? も、もう! エッチなことばかり考えてるんじゃない? 君は全くもう〜!」
(パーン……パーン:花火の音)
「え、花火? あれ、今日って近くでお祭りをしていたっけ?」
(ガラガラガラ)
「わぁー……綺麗。夏だねぇ」
少し離れたところに夜空を彩る花火が打ち上がっている。
僕ら二人はベランダの柵にもたれながら眺めていた。
「今度は……一緒に観に行きたいね。花火とか、水族館とか。色んなカフェ巡りをしたり、旅行したり」
「だって彼氏と彼女になったんだもん。私は君と色んなところに行って、たくさんの思い出を作りたいよ」
「あ、そうだ! りんご飴じゃないけど、このイチゴ飴を食べながら花火を見れば、少しは雰囲気が出るんじゃないかな? ほら、一緒に食べよう?」
(カリ、カリカリ……)
「ん、甘……っ、美味ひぃね。でも甘いのを食べているとしょっぱいものが食べたくなるね。え、唐揚げ買ってきたの? もしかして今日、花火があること知ってた?」
「あぁー、君って奴は、何気に確信犯? ズルい男だねぇ。ふふっ、でも許そう。私のために買ってくれたんでしょ?」
「——うん、いいよ。私も君に喜んでもらいたくて買ってきたんだから。え、名前で呼んでほしいって? きゅ、急に? そんな、恥ずかしいよ」
そんな彼女を抱き寄せて、僕は耳元で「鈴香さん」と囁いた。
「んン……っ、ズルいよ、そんな……。それじゃ、私も……。———くん……、大好きだよ」
熱っぽく告げられた言葉に、耐えきれなくなった僕は、鈴香さんの頬に唇を押し当てて、少しずつ唇へと近付けていった。
(チュッ……チュ。チュ、チュ……っ)
「ま、待って、急ぎ過ぎ……! そんないきなり迫られても困っちゃうよ……! 少しずつ、少しずつ……私達のペースで楽しも……?」
「大好きだよ……私の彼氏くん……♡」
———……★ HAPPY END
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