洗脳されて目が覚めたら幼馴染が勇者になってるんだが？

第59話 司祭ラアブ

ゴーラはラアブから距離を取りつつ、周りを見渡す。土埃はまだ舞っているものの最初よりかは薄れてきて、細目で見ると人型のゴーレムが何体か見えた。

ゴーラは周りにいる数を把握した後、ゴーレムに向かい突進する。

「あらぁ？そっちを狙うのぉ？冷静ねぇ」

接近することで見えた鼠色の体をしたゴーレム、それらは全てアイアンゴーレムだ。

ゴーラに対面する幾多のゴーレムは、突進によりひしゃげて吹き飛ばされていく。

勢いが落ちた所を狙ったゴーレムは拳により殴り飛ばされる。

「残りは・・・6」

ゴーラは残りの数を把握するとすぐさま飛び出し、あっという間に全てを鉄くずに変えた。

「これで全部だなぁ！！もう護ってもらえるもんはねぇぞ！！」

意気揚々に声を放つゴーラ、しかし既に隠れて姿の見えないラアブからは焦りは感じない。

「ふふ、元気ねぇ・・・でももう手遅れ♪」

「何を言っデぇっ！」

ゴーラは上手く呂律が回らなかった。それどころか体の動きが途端に鈍く感じた。

「さっき見たでしょぉ？私の力」

「ッ！さっきの霧か！」

ゴーラは原因に気づくも既に体は蝕まれ、思考はぐるぐると巡り、動きの精彩は欠けている。

そして悠々と姿を現したラアブ

「あんなに動いたら、私の力たくさん吸ったんじゃなぁい？」

ゴーラは応戦しようと動こうにも、体は既に動かず。両膝をつき這い蹲るように体を屈める。

鎧を着たゴーラの半分ほどのラアブが上から見下ろす。

「ふふっ、ゴーレムはやられちゃったけどぉ、貴方だけで帳じりがつくわぁ、良かったぁん」

既に声も発さなくなったゴーラを見てラアブは

嬉々として近づく。

パシュッ

ラアブを覆い尽くすほどの粘着性のネットがゴーラの鎧から発射される

「きゃっ！？なによこぉれ！」

動けないはずのゴーラだったが、鎧により立ち上がりラアブを見下ろす。

そして人工的な声が流れる

「それ は 大蜘蛛 の ネット だ 」

魔道的な駆動音が鎧から響いている。

「3刻 は 動け ない ぞ」

地面に貼り付けられて動けないラアブは目尻に涙を貯めて駄々をこねる

「いやぁーん！せっかく頑張ったのにぃ！私だって頑張ったのにぃ！」

その様子を見たゴーラは自身の娘を一瞬幻想するもすぐに目を逸らす。土埃は落ち着きを見せて

遠くには扉が見えた、ゴーラは時間惜しさに迷わずに扉を開けて先に進んだ