洗脳されて目が覚めたら幼馴染が勇者になってるんだが?

Old Voice

物語の始まり

第1話 洗脳されて目が覚めたら幼馴染が勇者になっていたんだが?

はるか昔 女神と魔神の戦いにより地上は

ヒューマンと魔物の血で血を洗う苛烈な戦いが行われた


それから時が経ち、戦争は終わらず

魔人と魔物からなる魔王軍と

人型の種族からなる連合軍の戦いが続いていた



◇◇◇




「せーのっ!かんぱーーーい!」

賑やかな酒場で俺達は乾杯の音頭を取った


「ぐいっぐいっぷはぁー!!」


俺は勢い良くエールを飲み干した

それを渋い顔をしてうちのパーティの僧侶

エルシアが諌める


「ちょっと!エルグ!そんなにイッキに呑んだら

明日のAランクバッジ授与式に響くわよ!!」


それをうちのパーティの魔法使いケルトが抑える


「まぁまぁ、めでたい日なのですから少しぐらい羽目を外さないと気も休まりませんよ」


そう俺達は最年少でAランクに昇格した

最初は俺とパーティリーダーのハルの2人から

仲間も増えて4人が集まり

ここまで長かった、13で冒険者となり

今のメンバーが揃ってから8年、、、

俺達は魔王軍が作り出した巨大なキメラと戦い

それに勝利した、その功績を鑑みて俺達は

最年少でのパーティAランクに昇格したのだ!


そこで隣りからドンッとグラスを叩きつける音が聞こえる


「おいおい!話聞いてるのかい?」


それは我らがパーティのリーダーであり

今回の戦いの主役でもある剣士ハルが顔を

近づけて聞いてくる


「あぁ、悪いちょっと感傷に浸ってたよ」


俺は悪気なく言う


「ちょっと!ハルのことを無視するなんて

どんな感傷に浸ってたか!言ってみなさいよ!」


急にエルシアが身を乗り出し聞いてくる


「そうだなぁ、俺たちもここまで来たんだなって思うと長いようで短かったような」


それを言うとハルが


「まだまだそんなこと言って、僕たちの冒険はこれからだ!」


と酒場にも向け声を挙げ、酒場は更に

上々に酔いしれていく



次の日


無事二日酔いの中でバッジ授与式を乗り切ったかと思えば、その時



「緊急ッ!緊急っ!です!魔王軍四天王がこの都市に向けて行進中です!!」


1人の衛兵が息を切らしながらも広場に声が通るような大声で言った


「なんだと!それは大変だ皆の者!準備をせよ!」


その場を取り仕切っていた領主様は声をあげて

呼びかけた。俺達もすぐさま控え室に戻り準備を行って現地に向かった


そこは地獄だった

既に都市の防衛隊が戦っていたが

戦況は劣勢、地平線の彼方まで見えるほどの大群に加えてその四天王というのは

傀儡のメルギァは倒した兵士を傀儡として俺たちに仕向ける悪辣な野郎だ


それを見た冒険者達は後退りしそうなほど

気が滅入っている

その状況を見たハルは声を上げる


「僕たちが道を切り開く!そして四天王の首を獲るぞ!着いてこい!!」


その言葉は全員に勇気を与えて無尽蔵の力を生み出す


◇◇◇


俺達は全力を尽くし、メルギァの元まで辿り着くも、紙一重の所でハルが敗北した


「ククク、、、キィカカ!」


メルギァは声を上げる、その幾つもある複眼は全てハルに注げられている


俺達パーティはもう瓦解している

あまりにも戦力に差がありすぎた

既にエルシアは魔力切れにより倒れている

動けるのはケルトと、仲間を守っていた俺のみ


「エルグ不味い、ハルが傀儡にされてしまう、、」


ケルトは怯えながらも言う

それを見て俺は覚悟を決める


「ケルト、お前確か飛翔魔法を使えたよな?」


俺は震える声色を抑えて聞く


「あぁ、使えるが最低でも15秒は、、、」


そう15秒か理解した


「ケルト俺が囮になるお前は魔法を使え」


ケルトは驚きすぐさま俺に言う


「そんな!じゃあエルグが!」


俺はそれだけ言うとハルとメルギァの間に

立ち塞がる

それを見たメルギァは俺を見て不敵に笑う

あぁまたおもちゃが来た そのような意図を感じた


俺は決めたんだ全力で守ると

「不動の聖壁!」


薄く光る膜が俺とハル達を包み込む

メルギァはそれを見て破壊しようと兵士達を

使うが


ガギィィィィン


鉄が折れるような音が重なった

それを見たメルギァは近くの兵士を総動員して

壁を壊そうとする


「さ、、、さすがにきついな」


俺は耐える、このスキルは魔力が切れるまで

壁を貼り続ける


しかし時間なら稼げるギリギリ間に合う!


「ギィィィイイ!」


メルギァは完成していく飛翔魔法の陣に苛立っていく


メルギァは魔力を貯めてこちらに振りかぶる


その瞬間にケルトの魔法陣は完成するが俺は

魔力が尽きてモロに喰らいはねとばされる


気を失う瞬間、ケルトの顔が見える

その顔は焦りと涙でぐちゃぐちゃだ

あぁそんな泣くなよ、まだ俺達は負けてないんだからな、、、


◇◇◇


そして俺は目が覚めるとなんかよく分からない

瓦礫の上だった


「え?どこ?ここ」


俺は冷静さを保てず周りを見渡すが、ここら一体が崩れた瓦礫の山で周りは特に何も見えない


「どういうことだ?」


俺はメルギァに殴られて気を失い、、そうか!


「もしや、、俺は洗脳されたのか、、?」


あんなにブチ切れて殴ってきたもんだから

殺されたかと思ったが、、、


「そうか、生き残れたんだ、、、」


俺はとりあえずこの場所から抜け出し近くにあった森の中に入った


しばらくすると森の中に街道を見つけて

歩いていくと村が見えてきた


するとそこはものすごくお祭り騒ぎだった

街の食料を全て食べ尽くすんじゃないかと言う勢いで食べて酒を飲み何が起こってるのか全く分からない状況だ


すると村の入口で突っ立ったままの俺に門番と思わしき人が言う


「おお!お前さん連合軍の兵士か?その装備からみてそうだな!!お前さんも混ざれ!今日は祭りだ!」


どうやら既に酒を飲んでいるようで出来上がっている、、、


「な、なんでこんな祭りが行われてるんだ?」


俺恐る恐る聞くすると門番は


「なんだ?お前そりゃ決まってるだろ?

勇者様が魔王を倒したんだよ!!」


俺は驚きのあまり固まってしまう

そんな様子を気にもせず門番は続けて


「しかもその勇者様ってのはSランクパーティ

【冒険の誓】の聖剣士ハル様だってさ!!」


俺はさらに驚きの余り変な声を出してしまう


「ゥェッ?ええ!?」


その様子を不思議がった門番だが、すぐに目を背け酒瓶片手に祭りに戻っていった


「うそだろ、、、」


洗脳されている間に幼馴染が勇者になってるんだが、、、

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