幼馴染に励まされ、また恋をしてみる

神在月

第1話 恋に敗れた

「ごめん、隆哉くんは友達って感じで…彼氏とかそんな風には見れないんだ」


 今日、坂本さかもと隆哉たかやは恋に敗れた。高校1年、初めての恋だった。恋は甘酸っぱくてそれでいて切ない美談のように語られるけど、終わってしまえば残っているのはただ辛さだけ。


 そんな辛さを抱えた僕は、何となく家に帰りたくなくて近くの公園で1人、ただただ時間を潰していた。


 すると不意に首筋に冷たいものが触れる。


「冷たっ!?」


 そして後ろを向くと、そこには幼馴染の夏井なつい綾音あやねがいた。


「やっぱりここにいたのね」


「どこにいたっていいだろ」


 俺は首筋に当てられたコーラを手にとって答える。


「おばさんがまだ帰ってきてないって連絡してきたから探してたのよ」


「そうかよ…」


 すると綾音は察した表情を浮かべて言った。


「水口さんにフラれたの?」


「分かってるなら聞くなよ」


「アンタ、かなりご執心だったものね…」


 水口みずぐち梨花りか、俺の初恋で初失恋の相手だ。成績優秀で気立が良くて、まさにクラス、いや学年のマドンナ的な存在だ。


「やっぱり、水口さんと付き合えるなんて思ってたこと自体がおこがましかったよな…」


「そんなことない!」


 綾音はそう言うと俺の方に身を乗り出した。しかしまたすぐにオズオズと距離をとって言った。


「確かにアンタは水口さんにフラれたけど、でもそれはアンタが劣った人間て意味にはならない」


「アンタの良いところを知ってるやつがいるのを私は知ってる。だから落ち込まないで欲しいわ」


 僕はその言葉を聞いてるうちに涙が出て溢れてしまった。それを見た綾音は、驚きを表情を浮かべ声をかける。


「な!?何泣いてるのよ!?」


「ごめん…でも、ありがとな!綾音のおかげで元気出たよ」


「そうだよな…失恋したのは辛いけど、でもそこから新たに一歩踏み出すのも悪くないな!」


 俺はそう言って立ち上がる。すると綾音はフフッと笑って言った。


「やっぱりアンタはそれくらい前向きな方が良いわね」


「おう!」


 そして俺たちは2人家に帰った。


 この時はまだ知らなかった。この出来事が俺の人生を大きく変えることになることを…

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