既にいないとある人物について

崇(たかし)

第1話      出会い

 私が彼と初めて会ったのは中学校の入学式。

名字が同じタ行だから座る位置が近かった。

体育館のパイプ椅子に座る同級生達の中で、メガネをかけたサラサラhairの彼の姿が偶然目につく。眠いのか、ただの猫背なのか、俯いているその姿を見て (元気がない子だなぁ) と思った。

 

 入学式が終わって、私たちのクラス1年3組に到着。恒例の自己紹介が始まる。

「26番、土井○○です。

これからよろしくお願いします。」

彼の自己紹介は名前を名乗っただけで男子にしては声も小さかった。


 その後、委員会と係を決めて、彼と同じ班になった。私の学校は2/3が内部進学生で、残りの1/3が外部生である。どうやら彼は内部生らしい。ちなみに私は外部生。既に彼らには仲の良い友達がいるから、内部生同士で楽しそうに会話をしている。


「これ終わったら、ドイん家で遊ぼうぜ~」

と、このクラスの学級委員になった快活そうな男子が周りの男子を誘っている。

「あんまりうちで騒がないでくれよ?マジで下の人から苦情きてるから。」

と、彼が言っているのが聞こえた。

彼は仲間内では明るく振る舞っている。きっと人見知りなんだろう。


「土井くんは部活何にするの?」

と私が聞くと、俯きながら

「サッカー部に入ろうと思っています。高嶋さんは何にしますか?」

と彼は切り返した。

(めちゃくちゃ敬語じゃーん)と思いつつ

「私は…吹奏楽部かな?」

「僕は音楽ができないのですごいと思います。」

「いやいや、なんもすごくないでしょ、ただ部活決めただけなのにー。なんでそんなに気を遣ってるの?」

と、ちょっと聞いてみる。

「まぁ…なんと言うか、そのぉ…、」

どうやら答えにくいことを聞いてしまったようだ。とりあえずなんか変わってる人見知りの子ってことで納得することにしてその日の会話は終わった。

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