白い悪魔

黒瀬はづき

第1話


 「休みたい」

 最近の私は寝起き開口一番でこう呟く。それでも、重い身体を無理矢理起こしてベッドから降りる。そして意味もなくネットサーフィンを始める。本当はしなくてはならないことがたくさんあるのに。顔洗って、朝食摂って、歯を磨いて、着替えて、髪を結って………。全てが面倒くさい。言葉にできないしんどさが心の奥底にはあって、それでも表面上の私の態度は単なる怠惰にしか見えなくて。

 「今日、休んじゃおうかな」

スマートフォンの画面を閉じ、そこに写った不細工な自分を見つめながらそう呟いた。


 「昨日も行けたんだから今日も行けるよ!頑張ろう?休んじゃだめ!授業置いていかれて成績下がってもいいの?」

私の心に飼ってる何かがそう呟いた。

「いや、昨日は頑張ったんだから今日ぐらいサボろ!一日ぐらいどうにかなるよ!授業なんて通知表に1付かなきゃ良いし〜」

もう一体の方もそう呟いた。普段なら前者の子の言う通りにする。けれども今日だけは違う。

 ずっとずっと前者の子もとい私の天使ちゃんの言う通りにしてきた結果がこれだ。この子は私を苦しめる黒い心を持っている。だから今日は後者の悪魔ちゃんの言う通りにしてみる。この子は私に寄り添ってくれる。天使ちゃんなんかよりもずっとずっと温かい心を持っていると思う。きっとこの子の方が素直で白い心を持っているのだと思う。

 

「七時半過ぎてるけど起きないの?」

母がそう訊いてきた。

 「頭痛いから休む」

私はそう答えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白い悪魔 黒瀬はづき @hadtuki-k

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ