第8話 今日のカナは冒険者風
胸の部分に重さを感じる
なんだか小ぶりなプニプニした気持ち良い感触が伝わってきた。
暫くすると口に温かみを感じ……何かが口に差し込まれてくる感触を感じた。
「うんぐっ!? ハァハァ……カナ?」
「ハァハァ~おはようございます! リヒト様」
カナの顔が凄く近い。
それよりカナの口と俺の口の端が涎の糸で繋がっていて、なんだか随分エロく見える。
「カナ!?」
最初夢かと思ったが……どうやら違うようだ。
折角ベッドが二つある部屋を借りたのに、カナは俺のベッドに潜り込んできたみたいだ。
しかも……裸だ。
「リヒト様はこう言うの好きですよね? 私にキスされて嬉しいですか?」
そう言うとカナは頬を赤くして俺から目を逸らした。
自分の理想の女の子にキスされて嬉しくない訳が無い。
しかも裸なんて最高過ぎる。
「カナ、凄く嬉しいよ……だけど無理はしなくて良いからな」
「無理なんてしていません……」
そういう、カナの体は震えていた。
カナが俺の事を好きなのは本当の事だと思う。
だけど『好き』の意味が違う気がする。
カナには友達や家族がいない。
話しからしたら、ずうっと孤独に過ごしてきたのだろう。
そんなカナの前に『好きだ』という俺が現れた。
今迄一人ボッチだったカナは俺を好きになった。
だが、これは俺の考えている好きじゃない気がする。
『家族愛』それに近いんじゃないのか?
上手く言えないが、男性として俺が好きな訳でなく、子供が父親や母親を求めるような物かも知れない。
多分一番近い意味は『1人で寂しいから』なのかも知れない。
その寂しさにつけ込むのはなんだか少し違う気がする。
「だって体が震えているでしょう? 無理はしなくて良いから」
「無理なんてしていません!」
無理に否定しても駄目だよな。
「そう? だけど時間は沢山あるから急がなくて良いんじゃないかな? 普通に男女のつき合いってこんなに急ぐような物じゃないから、仲良くなって、お互いにどんどん好きになっていって、その結果……そうなる物だと思う」
「だけど、リヒト様は私の事、好きなんですよね?」
「勿論! 大好きだよ」
「私も大好きですよ! だから、このままリヒト様が好きなようにして頂いて構わないんですよ」
「そう、それなら……」
体を震えさせてまで決意してくれたんだ。
これには応えない訳にいかないよな。
俺は小鳥が啄むような軽いキスをした。
「あっ……」
カナの顔が少し赤くなる。
そして、そのままカナを抱きしめた。
カナは凄く綺麗だ。
勿論、今迄でも凄く綺麗に感じていたけど、きめ細かな肌に今気が付いた。
それに髪の毛も凄く繊細で綺麗……そして大きくて吸い込まれそうになる位綺麗な瞳。
すぐ横で見られるだけで凄く幸せな気分になる。
体は抱きしめたら壊れるんじゃないかという位スレンダーだ。
こんな子が現実にいる事が俺にとっては奇跡だ。
「このまま、少しだけ抱きしめさせてくれ」
「はい」
カナの顔が笑顔に変わった。
今はこれだけで充分だ。
時間はたっぷりある。
寂しくて孤独だから、身を差し出すのではなく、俺の事を好きになって『恋愛』でいう『愛している』そういう気持ちにカナがなる迄は……
◆◆◆
気が付くと1時間近く抱きしめていたので名残惜しいけどカナを引きはがした。
「リヒト様……」
カナも名残惜しそうにこちらを見つめてくる。
毛布から形の良い綺麗な小ぶりの胸が見える。
現実離れした可愛さ、美しさについ見惚れそうになるが今は我慢だ。
「ちょっとお風呂に行こうか?」
「はい」
またなにか勘違いされそうだが、これは違う。
本当は服を着たままでも良いんだけど、濡れないに越したことは無いからそのままで……
「それじゃ、座ってくれるかな?」
「はい、カナは構いません……」
何やら決意したような目にカナがなったけど……
前世で言う体育座りをして貰い、カナの髪の毛にお湯をかける。
そのまま、シャンプーとリンスで髪をしっかりと洗い上げた。
「こんな物かな……ちょっと待ってね。今、拭きあげるから」
「あの……リヒト様……」
「大丈夫……今、風魔法で髪を乾かすからね」
「あの……リヒト様、私は何かしなくても良いんですか?」
「うん……今は大丈夫だから」
そう言いながら俺はカナの髪を整え、ポニーテールにしてみた。
「そうですか? 本当に何でもしますから……して欲しい事があったら言って下さいね」
「ありがとう……これで良し! それじゃ、そうだ歯を磨いて用意して置いた服に着替えてくれるかな? 俺も歯を磨くから」
「私……」
「良いから、良いから……」
「はい……」
俺は手早く、歯を磨きこの部屋に設置されたキッチンで料理を始めた。
俺も現金な物だな。
ライト達の世話の時は半分嫌々だったけど、相手がカナだと思うと全然苦にならない。
大体、恋人でも無い奴の髪の手入れなんてやりたくないわ。
しかも、カナみたいに裸にする訳にいかないから服着たままで髪を洗わなくちゃいけないのに、服を濡らすと怒るし……
恋人のライトにして貰えっていうの。
自分の歯を急いで磨き、朝食の準備に入る。
パンとスープにトロトロのオムレツにベーコンこんな物かな。
この世界では貴重なケチャップを使い、パンにはバターをタップリと塗る。
サラダは忘れた……まぁお昼にでも食べれば良いか?
果実水を注いで、はい完成。
「リヒト様、着替えがすみました」
緑のポニーテールの髪。
白いブラウスに皮のベスト。
胸元には赤いリボン。
水色のミニスカートにニーソックス。
小説の中の美少女冒険者……そんな感じだ。
流石、異世界、異世界風の恰好なら幾らでもある。
魔法使い、クルセイダー、神官の服とかなら簡単に手に入るだろう。
だが、此処までくると、前世のキャラクターの服が欲しくなる。
ミシンがあれば俺でも作れるけど……この世界のミシンは大きくて足踏みタイプだから旅から旅じゃ買えないな。
いっそうの事……家も買うか……
「朝食出来ているよ……食べよう!」
「リヒト様が作ってくれたんですか!?」
「まぁね、勇者パーティで雑用をしていたから家事は得意なんだ……冷めないうちに食べて」
「ああっ……ありがとうございます……昨日もそうですが、今日もまたこんなご馳走を頂けるなんて……このあとの討伐もしっかりお手伝いします」
うん!? 討伐?
「まぁいいや、本当に冷めちゃうから食べよう」
「はい!」
笑顔で食事をするカナについ見惚れてしまう……うんうん、癒されるな。
◆◆◆
食事が終わり、紅茶を入れクッキーを出した。
これはマリアーヌ達の為に用意して収納袋に入れておいた物だ。
もう、退団している訳だし俺が買った物だから俺達が食べて問題無い。
最初カナは遠慮していたが、甘い物の魅力には勝てないようだ。
「ご主人様、これ甘くて凄く美味しいですね」
そう言いながらもう5枚目だ。
「そう、それなら幾らでも食べて良いからね」
「はい、その分、今日の討伐は私も頑張りますね!」
カナはガッツポーズを取るけど......行かないよ。
「今日はゆっくりするつもりだよ! 外に行きたいなら散歩でも買い物でも付き合うけど?」
「ですが、この装備や服……」
「それファッションだから、カナに似合うと思うから買っただけだよ」
「ですが、これもそうですが、昨日の服といい、高いんじゃないですか?」
「そこそこね」
また泣きそうな顔しているし……
「リヒト様、なんでこんな……こんな親切にしてくれるのですか……ううっひくっ」
大きな瞳から涙が流れる……反則だよ。
「これは親切じゃないよ……可愛いカナが見たいから、服を買ったりしているだけ、だからね。俺の為だよ」
「だったら、食事は違うじゃないですか? 普通は奴隷は床でもっと粗末な食事をしている物ですよ……」
そんな鬼畜な事俺には出来ない。
「それはカナの笑顔が見たいからだよ。前にも言ったけど俺がカナに求めるのは奴隷じゃなくて恋人だからね」
「恋人ですか……」
「うん……」
自分で言っていて顏が赤くなる。
そう言えば前世も今世も俺、恋人っていなかったわ。
人形が恋人って言うなら沢山居たけどな。
「カナには良く解りませんが、それがリヒト様の望みなら、頑張ります!」
頑張らなくても良い……本当にカナがただ一緒に居てくれるだけで俺は充分楽しいんだから。
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