第2話 奴隷商にて
俺は力の限り走った。
オーガの大群から逃げる時でもこんな速く走ったことは無い。
さっき奴隷商の前に積まれていた檻の中の少女。
おれの夢の中から出て来たような『究極の美少女』だった。
急がないと売れてしまっては困る。
あんな美少女、絶対に二人と居ないし、もう二度と会えるような気がしない。
クソッ、時間がかかり過ぎた。
あんなマウントつき合うべきじゃ無かった。
もうすぐ時間的に奴隷商が閉まってしまう。
「ハァハァゼイゼイ」
間一髪、間に合った。
まだ、奴隷商は開いている。
そして、店の前の檻はあった……まだ売約済みの札も貼られていない。
奴隷商のドアを勢いよく開けた。
「いらっしゃいませ、オルト商会にようこそ! もうすぐ閉店でございますが、お客様が見ている間は店を開けておきますのでゆっくりと……」
「ハァハァゼイゼイ……もう買う奴隷は決めて……ハァハァゼイゼイいる」
「左様ですか。他にお客様もおりませんし、落ち着いてからで大丈夫ですから……お茶でも」
「ハァハァ……大丈夫だ! あの店頭の檻に入っているあの子……あの子が欲しい」
「あれでございますか……」
ヤバい。
俺、金額も見ないで『欲しい』と言ってしまった。
ある程度の金額はあるが、足りなかったらどうしよう?
よく考えたら店頭にあるんだから高額な奴隷かも知れない。
あれ程の美少女だ。
エルフ並みの金額がついていても可笑しくない。
「やはり店頭の檻に居る位だから高いのか?」
「あの化け物……違った……あの奴隷、本当に買われるのですか?」
「その予定ですが! なにか問題でもありますか?」
「いえ、あの奴隷はそうですな、値段をつけなくてはならないので銅貨3枚(約三千円)で結構です。ただし、申し訳ないですが返品不可の再買取も不可でお願いします。但し奴隷紋の刻み賃銀貨3枚(約3万円)は別途頂きます……本当に買われるのですよね?」
安っ! まぁ安いに越したことは無い。
「勿論、買う、買わせて頂きます」
「あの、これは私のあくまで興味です。参考までに聞きたいのですが、どの様な用途であれを買うのですか?」
あの綺麗さ、可愛らしさ……愛玩以外ないだろう。
「愛玩ようです……あっ、まさか、安い代わりにそういう事は出来ないとかですか?」
なんで変な顔しているんだ?
「ぷっ……まぁ女性だから、出来なくも無いですが、あの容姿を見て勃つのですか? いやぁお客様は勇者だ。 あれで勃つなら動物や魔物でも勃つ……」
「おい!」
「あっ、申し訳ございません! それでは準備をして連れて参りますので、そちらでお掛けになってお待ちください……おいお茶をお出ししろ」
「はい」
店員さんらしき人が紅茶を入れてくれた。
しかし、安くて良かった。
手が届かなかったら、本当に悔やんでも悔やみきれない所だ。
◆◆◆
「準備が出来ましたので、こちらへ……」
小さな部屋に通され、そこに彼女は居た。
緑色の髪に大きな目、透き通るような肌にスレンダーな体型。
何処から見ても『美少女』にしか見えない。
まるで、俺の夢の中から飛び出てきたような美少女だ。
「あの……話しても良いですか?」
「ええっ、構いませんよ……これはもうお客様の物ですから。その間に手続きを進めますから、こちらのお皿に血をください」
短刀とお皿が差し出され、そこに血を垂らした。
「え~と、名前を教えてくれる?」
「カナです……」
「くはっ……あわわわわ、この声は……」
「どうか、なさいましたか? やはり気持ち悪かったですか……今ならまだ取り消しもききますが」
神……まさに神! 女神が此処にいる。
そう……この声は声優ボイス。
この声なら『あんた馬鹿ぁ!?』と言われても冷たく『そう』と言われても『死んでみる?』とか言われても許せてしまう。
「取り消す訳がないだろうが!」
「解りました、それなら手続きを進めさせて頂きます……お客様、クネクネして気持ち悪いからそれやめて貰えますか?」
つい、喜びの舞をしてしまった。
「コホン、すまない」
「それでは、この血をつかい右肩に奴隷紋を刻ませて頂きます……はい、これで終わりました。 これで彼女は命に係わる事以外、貴方に逆らえません……あとこの書類をどうぞ。 奴隷紋があるので重要ではないですが所有者証明です。手続きは以上です」
これで手続きは終わりみたいだ。
「ありがとうございます……それじゃカナ行こうか?」
「はい……」
俺はカナの手を取ると奴隷商から出た。
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