本棚の孤城
花無
第1話「笑顔を見つけたくて」
死とはこの世界を失うことである。
エリザベート・ヴィクター著 死後帝国より引用
「また本を読んでいるのですか?」
「ああ、本とは頭の栄養だからね」
「面白いこと言いますね」
「ジョークでは無いぞ、ほんとのことだ」
「でも近代化が進めば本も消えるのでは?」
「怖いことを言うな」
「でも、次は電脳時代って朝ニュースで」
「なぜ人類は機械化したいんだ、分からんな」
「人間って万能になりたいんですよ」
「人のサガは人で補う、それが正しいはずだ」
「でも今の若者は、人より画面を見てるらしいです」
「万能になるためか?」
「流行や話題の中心がいち早く知れるんですよ」
「皮肉だな、流れに乗れないと生きていけないとは」
「何を言うんですか、同じ話題を持ちたいなんて、友好の証じゃないですか」
「そうだな、失礼した」
「でも、人づてに生きるアナログさもまた深みがありますよね」
「なんだ君もわかる口じゃないか」
「これでも昭和を経験していますから」
「時代だな」
「はい、時代ですね」
「ところで朝ごはんは?」
「それがトースターが故障していて」
「では、焚火をするか」
「いえ、捕まりますから」
「そうなのか?」
「はい、ここは令和ですよ」
「これも時代の流れか」
「はい時代です」
「朝ごはんどうするんだ?」
「喫茶店へ行きませんか?」
「待て待て、無理だ」
「どうしてですか」
「若者が苦手なんだ」
「どうしてですか?」
「最近の若者はすぐにおじさん扱いするからだ!」
「なるほど、でも先生、もう二十歳過ぎてますよね」
「君まで、私を、おじさん扱いするのか!!!」
「いえ、まさか、先生は尊敬に値する人ですから恩師ですよ」
「そ、そうか?でも行かないぞ」
「では魔法をかけてあげます」
「なんだ、どういうことだ」
「はいこれです」
「森本!!!君は私をたばかっているな!!!」
「でもこれを付ければおじさんとは思われませんよ」
「カツラなどいらんわ!!!」
「失礼しました」
「だが参りましたねご飯どうしましょう」
「サンドイッチなら焼かずとも食えるだろ」
「そうですね、そうしましょう」
「では、出来るまで本を読んでるから」
「先生は不器用ですもんね」
「それは余計な言葉だ」
「すみません、テヘ」
「可愛く言えば許されると思うな」
「許してくれないんですか?ウルウル」
「泣きっ面でも許さん・・・ぞ・」
「ではどうすれば」
「初めから冗談を言わなければいいだけだ」
「言ってしまったらどうすれば」
「それは・・・・だな・・・・」
「私はこのまま許されず、永遠に悶々としないといけないのですか」
「いや、そこまでは、言ってないが」
「では。どうしろと。。ああ、神様、仏様」
「わ、わ。。悪かった、許、す、ってば」
「えへ、演技です」
「森本!!!お前ーー」
「先生って純粋ですよね」
「お前のように、人をおもちゃにしないだけだ」
「カッコイイです」
「え?や/// 何?言ってんだよ/」
「やっぱり純粋、えへ」
「またもてあそんだな!!森本ーー!!!」
「いいじゃないですか、楽しくて」
「それは君だけだ」
「先生がいなくては私は笑えていませんでしたよ」
「だからと言ってだな、良心をつつくのはだな」
「すみません、でも本当は先生を笑顔にしたかったんです」
「え?」
「私は馬鹿にしてるつもりはないんです、ほんとですよ」
「そうか、君も不器用だな」
「そうかもしれません」
「な、森本、私はね、怒ってなんかいなかったよ」
「そうなんですか」
「ああ、君が好きだからね」
「ふぇ?」
「冗談だ」
「やりましたねーーー先生ーー」
「なんだ君に笑ってほしかっただけだ」
「すぐ知恵をつけるんですからー」
「でもね、好きなのは本当だよ」
「その手にはのりませんよー」
「まぁいい、ただ分かったろ、君のやり方じゃ笑わせられないんだよ」
「確かに」
「今度は笑顔をくれよ」
「ええ、頑張ります」
そうして二人は笑っていた。
「あ、今笑ってる先生」
「え?や、君もじゃないか」
と、今回はここまで、
まだ二人の話は続いていく。
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