第7話 急所

一緒に帰ると言っても、俺と優芽の関係は何ら変わらない。朝と同じく会話がない状態で2人で横に並んで歩いているだけである。


 だがこれでいいのである。思春期真っ只中の兄妹が、しかも義理の兄妹が仲良く話しながら帰っている方がかえって不自然だと思われるだろう。


 道を歩いている途中、よく視線を感じることがあるがその時は俺が睨み返して追い返している。


 俺はそこまで強く睨み返しているつもりは無いのだが、案外効力は強いらしい。

 おかげで俺といる時は比較的平和でいられると。


 俺的には本望だから問題ナッシングだし。


 家までは少々時間を取るが、特別長いと言う訳では無い。家バレはされないように俺が家ら辺に近づくと秘密技を使ってないバレないようにしているぜ。


 え、その秘密技を教えて欲しいって?それは無理な相談だな。


 この技は俺と優芽、家族以外には知られる訳にはいかないのさ。


「ねぇ、ゆう…義兄さん」


「ん?…はっ?」


 普段絶対に自分から話しかけてこない優芽が俺に話しかけてきたのを聞いて突然大声をあげてしまった。

 なんだ天変地異の前触れか?


 俺、まだ死にたくないんだが。まだまだ趣味を満喫させてくれよ神様。


「ちょ、なんでそんな大声出すし」


「あぁ、すまん。それでどうしたんだ?優芽から話しかけてくるなんて珍しいな」


「別にいいでしょ。兄妹なんだし」


「そうだな…」


 優芽の口から兄妹という言葉が出てきたことに少し感動したところで俺は質問し直す。


「それでなんだ?」


「義兄さんってさ。シャーベットのファンなの?」


 皆さんご存知の通り、シャーベットは優芽が所属している今や優芽が支配しているといっても過言では無い日本中で大人気のアイドルユニットだ。


 学校での演説に当たって、やはりシャーベットのことをよく知らないと行けないだろうと多くの曲を聴き、色々な情報を調べていくうちに最初は全くファンではなかったのに今ではれっきとしたファンになってしまった。


 優芽には内緒だが、シャーベット公式チャンネルとメンバーシップに入っているほどだ。これだけは死んでも優芽には言えない。


「そうだな。嫌いじゃないぞ」


「ふーん」


「興味ないんかよ」


「それならさ。シャーベットって私と叶と葉月といる訳だけどさ」


 最近は葉月ちゃんも色々と努力しているらしく、シャーベットは3人揃って大人気。素晴らしいことだ。

 もちろん俺がいちばん応援しているのは優芽だけどな。


「推し…とかいるの?」


「ぐはっ!」


「えっ、大丈夫義兄さん?!」


 今やシャーベットオタクになってしまっている俺に、推しから推しっているの?なんて聞かれてしまったら気絶しそうになるのも仕方ない…よな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る