第6話 俺の役目
俺は慣れてしまったその歓声たちを華麗に受け流すと、早速演説に映る。
この演説姿は優芽に見せたことは無いが、きっと見てしまったら家で怒られてしまうだろうから何も言わないようにしている。
妹を想う優しい兄の姿を体現したような男だな俺は…なんて自意識過剰はやめて演説開始。
演説をし始めてからはあっという間に時間が過ぎ去っていった。
「どうもありがとうございました」
言葉と同時に深いお辞儀をして俺は黒板前から姿を消す。
今日も結構いい感じだった。言葉でどう表せばいいか分からないが、何となく何かが起きそうな気がした。
「いやぁ、疲れたな」
ため息を着きながら席に着き俺は自分で作成した弁当箱をゆっくりと開ける。
演説は存外疲れるものであり、俺は弁当に炭水化物を多く入れるようにしている。エネルギーは大切だからな。
こんな演説をしているが俺には友人なんていない。昼食を食べる時はいつも独りだ。
もう慣れてしまっているというよりも、諦めの方が強いだろうか。多分、俺は神様から見放されているのだと思う。
女子の友人ができるとは最初から思っていない。ならせめて男の友達くらい欲しいものだが何故か上手くいかない。
俺は既に現実を受け入れてしまっているから今更何かを思うことはほぼないが。
朝の投稿の反応を確認するといいね数が今も尚増え続けている。
初日と比べれば大分成長したものだ。日増しに評価数がアップしているのは俺の努力とそして優芽の努力のおかげだろう。
作家アカウントとして全く活用していないことに自分で苦笑しつつ、ネタを考え始める。
ついこの前、投稿していた作品を完結させたばかりだったので今は何も投稿していない状態。
次はラブコメものにしようと考えていたから今の状況はちょうどいいかもしれない。
義妹ものにしようか。それともアイドルものにしようか。どうせなら2つとも混ぜてみてもいいかもしれない。
贅沢すぎるか。
今日の帰りは珍しく優芽と一緒に帰ることになっている。
優芽曰く、最近人の目が怖いらしい。
言われてみなくても分かるだろうが、優芽は絶賛有名人。
そんな人が街中をてくてく歩いていたらそれは視線を集めてしまうだろう。
視線を集めるだけではとどまらず、人混みを作ってしまうことだって有り得る。
それは街に対しての迷惑でもあるし、優芽自身にも迷惑であるのだ。
ファンがいてくれるのは幸せな事だ。それは誰もが分かっているが、プライベートは邪魔されたくないに決まっている。
芸能人の運命なのかもしれないが、優芽にはそんな嫌な思いはさせたくない。
ということで俺が一緒に帰ることになったという訳だ。
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