後輩ちゃんに質問したら!?

神田(kanda)

後輩ちゃんに質問したら!?

「ねえ、後輩ちゃんって、愛とかって信じる?」

「はい、信じますよ。先輩のこと愛してますから。」

「なるほどね、そっか............へ?」


放課後、部室で後輩と二人きり、ゆっくりとした時間を過ごしていた。私は恋愛小説を読んでいたのだが、ふと、興味が湧いて、ほんのいたずら心ぐらいの気持ちで、毎日のように一緒に放課後を共にしている後輩ちゃんに、聞いてみたのだ。

すると、予想の斜め上の回答が返ってきた。


「えっと、愛してるっていうのは、どういう...?」

「そのままの意味ですよ。先輩のことを恋愛的に好きで好きでしょうがないってことです。」

「あ、へぇ~...そう...なんですね......。」


私は後輩ちゃんから目を逸らして、下を向いた。どう反応したらいいのか分からなかったからだ。もちろん、後輩ちゃんのことが、嫌なんてことはなくて、むしろ私も好きなんだけど、恋愛的にっていうわけではないような気がするから......

何て返事をしたらいいのだろうか。


「先輩......大丈夫?」


いつの間にか後輩ちゃんは隣の席に座っていた。心配そうな顔をしている......と思いきや、何やらニヤニヤしていた。まるで私の反応を楽しむようだった。


「ねぇ、後輩ちゃん。」

「はい、何ですか?」

「その、私のことが、恋愛的に好きなんだよね、?」

「はい、そうですよ。大好きです。」


何のためらいもなく、満面の笑みで返された。


「先輩、顔真っ赤ですよ?」

「だって、急にそんなこと言われたら、こうなっちゃうでしょ!?」

「先輩、かわいい。」

「もー!」


はぁ、とため息をついてから、再び質問する。


「えっとさ、その、好きっていうのは、冗談とかではないんだよね?」

「はい、そうですよ。」

「それじゃあ......私と付き合いたいってこと?」

「はい、そうですね。」


後輩ちゃんの目をちゃんと見る。顔はいたずらっ子みたいな顔をしているけれど、その目は本心から言ってくれているようだった。


「気持ちはすっごく嬉しいんだけどね。私は、まだ恋愛感情とかよくわからなくて......」

「ふふ、先輩、それって本当に本当なんですか?」

「へ?」


後輩ちゃんはいたずらな笑みを浮かべながら、私の首に手を回す。顔が目の前に迫ってくる。

まばたきの音が聞こえそうなほど近くに、私の視界が、後輩ちゃんの顔でいっぱいになるほどに。

後輩ちゃんまで、少し顔が赤くなっているから、私も照れてしまう。だけど、さっきまでと違って、目を逸らすことができなかった。

目の前にいる、かわいいかわいい女の子から、目が離せなかった。


「ねぇ......先輩。先輩は鈍感だから気づいてないんじゃないんですか?自分の気持ちに。」


甘い、甘い吐息が聞こえる。胸の辺りが、どんどん熱を帯びている。私は、「えっと...その...」と言うだけで、ほとんど何も喋れなくなっていた。


「先輩って、本当は私こと好きでしょ?」


ああ、もう、ダメだ。本当は、分かっていたのかもしれない。ほんのいたずら心で聞いた質問も、何かそういう意図があったから聞いたのかもしれない。私もやっぱり、恋愛的に好きなのだろうか。でも、そうでないと説明が付かない。こんなにもドキドキして、胸が熱くなったかのような感覚が止まらないのは、そうでないと、理解が出来ない。


「いや、でも、やっぱり分からないよ...。」

「じゃあ、無理やりにでも意識させてあげますよ。」


私の、「それってどういうこと?」という質問は紡がれなかった。その疑問を口に出す前に、その質問が頭に浮かぶよりも先に、唇に温かい感触があったからだ。

その子の顔はよく見えない。

片目までかかっている髪の毛と、部室しか見えない。だけど、その子の腕に包まれる感触、唇の温かい、湿った感触、私の心臓がきゅーとなって、いけない気持ちになってしまう感覚は、明確に、はっきりと分かった。その子の甘い声が、口の中を通して聞こえてきた。それが、さっきの感覚をより強くした。


ほんの数秒のキスは、長い長いものに感じたようで、ほんの一瞬にも感じられた。

後輩ちゃんは、顔を真っ赤にしながら、


「先輩、先輩のこと、ほんとに好きなんです。好きで好きでしょうがないんです。先輩は、どうですか?」


と言った。

その時の顔は、さっきまでと違った。さっきまでのいたずら気な笑みではなくて、甘い甘い女の子の顔だった。私はもう、答えを知っていた。何て返事をするべきなのか、分かっていた。

私はすっと、その席を立ち上がった。


「先輩......?」


私は後輩ちゃんの膝に正面から座って、後輩ちゃんの可愛くて可愛くて仕方がない顔を、両手で優しく包みながら、言った。


「.........好き。きっと前から、好きだった。」


後輩ちゃんの顔はよく見えない。

だって、後輩ちゃんの唇と私の唇を重ね合わせているから。


それから、お互いを求めるように、ずっとキスをした。お互いの甘い声を聞いて、どんどん求め合った。「好き」という言葉をいっぱい紡いだ。

お互いの体をより近くになるように、抱き合って、手をつないで、愛を確かめあった。




結局、30分くらい、ずっとしていた。


「幸せです、先輩。先輩からあんなにもいっぱい求めてくれる日がくるなんて。」

「あの......思い返すと恥ずかしいので、やめてくだしゃい......。」

「ふふふ、先輩かわいいですね。」

「むー......。」


後輩ちゃんは立ち上がると、隣の席に座っていた私の後ろに回り、ぎゅーっとバックハグをする。視界の中に、ちらっと後輩ちゃんの唇が映るたびに、胸がドキンっとなる。


「ねぇ、後輩ちゃんって、いつから私のこと好きだったの?」

「んーと、そうですね......部活に入って、先輩と関わりが出てきてから、少しずつって感じです。」

「そうなんだ......何か特別なことがあったとかでもない感じなんだね。」


そう言うと、後輩ちゃんは、私のことを横からじーっと見た。


「先輩って、やっぱり気づいてなかったんですか?」

「えっと......何に?」

「先輩は、他の部員の子には同級生にも後輩にもスキンシップとらないのに、私にだけ距離近いですし、スキンシップとってくれますし、何より、しょっちゅう目が合うし、合う度に顔赤くして、目を逸らすし、それに......」

「わーー!ちょっと待って、恥ずかしくなってきたから、一旦ストップストップ!」


確かに、言われてみれば........

あれ?もしかして、私、結構そういうことしてた!?というか、そんなことしかしてない気がする!?


「あの......思い返すと、確かに、おっしゃる通りです......。」

「そうですよ。先輩、私に対してベタベタでしたからね、私が好きなっちゃうのも時間の問題でしたよ。まあ、それはともかく......」


後輩ちゃんは、私の頬に、軽くキスをして、


「これから、よろしくお願いしますね。先輩。」


と言った。それに対して私も、


「うん、これからよろしくね。」


と言った。




それから、部室に来るのが二人だけの時は、たくさん、いちゃいちゃするようになった。

ほんのいたずら心の質問から、こんなことになるなんて夢にも思わなかった。

私は本当に、幸せである。

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