第10話 私のお嬢様はエッチな方かもしれません!

 目を覚ましました。


 頭が、ぼんやりとしております。


 気配がしたため――何気なく顔を横へ向けますと、お嬢様の寝顔が近くにあり、心臓が飛び出るかと思いました。その瞬間、昨晩のことがフラッシュバックしまして、あまりの気恥ずかしさに頭を抱え込んでしまいました。きっと、あれは夢だったのでしょう。そう――思い込もうとしますが、私とお嬢様ともども裸であります! シーツで隠れてはいますけども!


 私の服と下着は遠くに投げ飛ばされており、忍び足であそこまで向かうのは至難の技かもしれません。しかし、やらねばならぬのです!

 昨日、あれだけ体の隅々まで触られ、体の隅々まで見られておきながらも――私はまだ馴れていないようです。だから、この姿をお嬢様に見られるわけにはまいりません。そのため、起こさぬよう――ゆっくりと上体を起こします。


「リッカ、起きたのかしら?」


 お嬢様が、目を開けられました!


 私は胸が露出していることに気づいて、慌ててシーツで隠します。


「お、お嬢様、起きてらっしゃったんですか?」

「違うわ、今、起きたところよ」


 そうでした! お嬢様は凄く寝付きがよく、凄く寝起きがいいのでした!


 お嬢様はじっと、私を眺めてきます。


「ど、どうかされましたか?」

「リッカ……ごめんなさい」

「え?」


 お嬢様の謝罪に、私は驚いてしまいました。


「昨日、自制がきかなくて」


 本当に、申し訳無さそうな顔をなされます。


「でもね、私は幸せだったわ。リッカとひとつになれて、私は凄く幸せだった」


 お嬢様のそのお言葉で、私の心は愛おしさで満たされます。


「だから――私はまったく後悔していないわ。でもね、リッカはどう?」


 私はお嬢様の頭を撫でます。昔、よくそうしたように。


「私も、後悔なんてしていませんよ」

「本当に?」

「ええ、本当です」


 私たちは、しばらく見つめ合います。すると、お嬢様は急に私の手首を掴みます。頭を撫でていたその手を。


「リッカ――それは、私を誘っているのかしら?」

「え!?」


 な、なぜそのようなことに!?


「ち、違いますから」


 お嬢様は私の手首を掴んだまま、上体を起こします。すると、かかっていたシーツが剥がれ――お嬢様の美しい裸体が露わとなります。


「いいえ、あなたは私を誘惑した」


 お嬢様の顔が近づいてきます!


 そして、唇を奪われ――再び、押し倒されました。


 私は、朝から悲鳴をあげることとなります。


 後悔――してきました!




 ***




 行為が終わったあと、お風呂に入りました。お嬢様と一緒に。

 嫌な予感がしましたので、ひとりで入りたかったのですが、絶対に何もしないと言う――お嬢様の言葉を信じて入りました。しかし、予想通りまったくの嘘でした!

 自分の体は自分で洗うのだと、私がいくら主張しようとも、お嬢様は聞く耳を持ってくれません。まだ、普通に洗っていただけるのなら我慢できるのですが、変なところばかり執拗に素手で洗ってくるため――お風呂場でも、私は再び悲鳴をあげることとなったのです。


 もしかして、お嬢様は――エッチな方なのでしょうか?




 お嬢様はほくほく顔で廊下を歩きます。私は反対に、疲労でくたくたであります!


 お嬢様はアレックス様の部屋の前に立つと、顔つきが変わります。その勇ましいお顔に、どきっとしてしまいました。私はすぐに気持ちを切り替えるため、頭を何度か横に振ります。今は、惚けている場合ではないのですから。


「お嬢様、本当にアレックス様にお伝えするのですか?」

「当然よ。1秒でも早く、お兄様とランスにはリッカが私のものだと伝えなければ気がすまないわ」

「は、はぁ」

「何なの、そのやる気のない顔は」

「そ、そんなことありませんから!」


 私は慌てて、首を横に振ります。


「そう? それなら、いいんだけど」


 そう言った後、お嬢様はアレックス様の部屋の扉を叩きました。


 返事がします。


「アリーシャです。入ってもかまいませんか?」


 快い返事が返ってきます。


 お嬢様は私を見て、一度だけ頷く動作をなされたため、私も同じように首を動かします。


 お嬢様はどこか、緊張をなされているご様子でしたが、勢いよく扉をお開けになりました。


 アレックス様は笑顔で出迎えてくれます。


「お兄様、大事なお話があります」


 お嬢様の言葉を聞き、アレックス様はじっと眺めてきます。

 

「何だか、気楽な話をする雰囲気ではないようだね。分かった、とりあえず座ってじっくりと話そうじゃないか」


 そう言って、目の前のソファに手を向けます。

 

「ええ、じっくりと」


 お嬢様は軽く頭を下げると、ソファの奥側に座りました。


「リッカも座りなさい」


 そう言って、お嬢様はご自分の隣を何度か叩きます。私はアレックス様の方を確認しますと、笑顔で頷いてくれます。


「リッカ、何をしているの。早く来なさい」


 お嬢様の声音はどこか怒りを含んでいるよう気がして、私は慌てて指定された場所に座ります。そうすると、お嬢様は満足げに頷かれましたので、私はホッとしました。

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