第9話 私はお嬢様に昇天されてしまいますか?

 お嬢様は、私を真上から眺め続けます。


「リッカ、私は誓うわ。あなたへの――永遠の愛を」


 そう言って、お嬢様は再び――私の唇にキスをします。そして、少しだけ距離を離して、私たちは見つめ合います。


「だからリッカ、私と婚約して欲しい」


 驚き過ぎて、言葉になりません。


「まだ、あなたを迎えられる立場ではない。それでも、それが叶うまで――どうか私の側にいて、私を支え続けて欲しいの」

「私で――いいんですか?」

「馬鹿ね、まだ分かっていなかったの? リッカ、あなたじゃないと駄目なのよ、私は」


 止まったはずの涙が――再び、流れます。それを、お嬢様の指が優しく拭ってくれます。


「リッカ、いつの間にこんなに泣き虫となってしまったの?」

「お、お嬢様のせいですから」

「それは嬉しいわね。あなたを突き動かす感情の全てが、どうか――私のせいであって欲しい」


 お嬢様は再び、私の唇にキスをします。


「リッカ、私を受け入れてくれる――と言う事でいいのね? いい加減、我慢ができなくなってきたわ」

「分かりません。……でも、嬉しいと思ってしまっているんです。こんなの、メイド失格です」

「馬鹿ね、それでいいのよ」

「何故ですか?」

「だってあなたはもう、私の婚約者なのだから。この世界でたった一人の――私の大切な人」


 お嬢様の唇がまた、私の唇と繋がります。だけど、今度はただ触れ合うだけでなく、唇と唇が激しく擦り合います。舌が這い、私の口内へ入り込んできました。舌と舌が重なり、激しく絡み合います。そして、お嬢様は私の胸まで手を滑らせ、乳房を弄ります。

 止めてと言いたいのに、それが言葉にならないのです。


 こんなの――知りません。


 こんな感覚は知らないんです。


 こんな幸せがあるなんて――私は知りませんでした。


 お嬢様に求められています。


 お嬢様に愛されていると、実感してしまいます。


 それは――私の自惚れなのでしょうか?


「リッカ」


 お嬢様は何度も私の名前を呼んでくれます。


 体全体が痺れ、この快感に溺れてしまいそうです。


 私の口から聞いたことのない声が漏れてしまいます。そんな気持ち悪い声、お嬢様にだけは聞かれたくないのに、止まりません。


「リッカは、本当に可愛いわね」


 そんな、ありえない言葉を――どこか夢現のまま耳にします。


 お嬢様の唇から糸が引きます。


 それをぼんやりと眺めました。


 私を見下ろすお嬢様の顔は――今まで見たことない表情。


「リッカ――リッカは私だけのもの。そのような顔は絶対に誰にも見せては駄目よ」


 一体、どのような顔をしているのでしょうか?


 怖くて、とても聞けません。


「こ、これで、終わったんですよね?」


 私はほっとしました。


 これ以上は流石に、頭がおかしくなってしまいますから。


「何を言っているの? リッカ、まだまだこれからよ」


 その言葉に、血の気が引いていくのが分かります。


「このときが来るのを私が一体、何年待ったと思うの?」


 そんなの、知るわけがありません。


「4年よ。私は4年も待ち続けてきたの。私は自分を律するために、あなたになるべく近づくのを我慢してきた。なのに、リッカは無自覚に私を誘惑した。だから、私はいつだって自分で自分慰めることになったのよ」


 お嬢様の声はどこか恨み混じりな気がして、なんだか怖いです!


「もっとあなたを感じたいし、もっと触れたいの。もっともっとあなたが欲しいし、あなたの全てが欲しい」


 熱のこもった声を私の耳元で囁き、私の耳を舐めます。私はつい、変な声とともに、身震いしてしまいました。私は恥ずかしくなって、口元を必死に両手で押さえます。


「リッカは意地悪ね。私はもっと、あなたの声が聞きたいのに」


 お嬢様の指が私の足の上を滑らせ、捲れたスカートの中に侵入してきます。

 私は予想外の動きに、恐怖しました。


「お、お嬢様、なにを?」


 私の声は情けなくも、震えております。


「何って、決まってるじゃない。リッカの一番大切な場所に――今から触れるのよ」


 お嬢様が私の不浄な場所を、下着の上から執拗に触ってきます。未知の感覚に腰が震えます。


「そ、そんな汚い場所、触らないでください!」


 逃げ出したいのに、力が入りません。


「汚くなんてないわ。私にとってここは神聖な場所よ」


 わ、わけのわからないことを言ってきます!


「リッカはここをいじらないの?」

「い、いじりませんから」

「本当に? 私は触ってるわよ。毎日のように――リッカのことを思い浮かべながら」


 い、意味が分かりません。


「でも、とても信じられないわ。だから今すぐ調べるわね」

「え?」


 なにをですか?


 お嬢様は体を下げると、私の捲れかかったスカートの裾を掴み、上まで上げてきます。そのため下着が露わとなり、おヘソまで丸出しとなってしまいました。羞恥心が全開となります。両足の間にお嬢様がいるため、足を閉じたくても閉じることができません。

 昔は、裸でお風呂を一緒にしていました。それと比べれば、下着を見られているだけ。なのに――なぜこんなにも恥ずかしいのでしょうか?


「美しいわ、リッカ」


 恍惚とした表情で――お嬢様は口を開きます。


 そして何故か、私の下着を手で掴みます。


「な、なにをなさるおつもりですか!?」

「この中を今から確認するの」

「や、止めてください」

「駄目よ、だってもう――我慢できないもの」

「そ、そんな――それなら、せめて灯りだけでも消してください」

「駄目。だって、それじゃーよく見えないじゃない」

「そ、それでいいんですよ!」

「駄目ったら、駄目。絶対に」


 その言葉に、私は絶望してしまいます。


 お嬢様は私の下着をずらし、私の汚い場所を見て、感激? の息を漏らします。

 恥ずかしくて、今すぐに死んでしまいそうです。


 そして、あろうことか――その場所に触れ、指を入れてきます。


「い、痛いです! お嬢様!」

「そう――本当に、いじってなかったのね」


 お嬢様は指を離したため、私はホッとします。


「ごめんね、リッカ」


 その言葉に、私は優しい気持ちとなります。


「いいんですよ、お嬢様」


 お嬢様は笑って、頷きます。

 

「それでは、お詫びに舐めてあげるわ。とても、優しくね」

「え? ……それは、どう言う意味ですか?」


 私はおそるおそる尋ねます。


「馬鹿ね、決まってるじゃない。私がさきほど指を入れた場所を綺麗に舐めてあげるってことよ」


 その言葉に、私は背筋の凍る思いがしました。


「あ、あの――私、まだ体を洗っていないのですが?」

「だからいいんじゃない」


 お嬢様は笑顔で、わけのわからない事を言ってきます。


 私は小さな悲鳴を上げてしまいます。それを、お嬢様は可愛いと言うのです。


 私はもう全てを諦めました。


 長い長い夜は、中々――明けないものなのです。


 ちゃんちゃん。

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