第7話 悪夢を見る
あん? なんで実家?
「アルフレッドよ、貴様は薬師なのか? 錬金術師なのか? 一体なんなのだ、その【合成】というスキルは!? 今すぐこの家の為に役立つと証明して見せよ!!」
ん‥‥‥? あれ? クソ親父‥‥‥?
「役立たずが‥‥‥。今週中に出ていくのだぞ」
「もうこの家にお前の居場所はないって事だよ。今週と言わずさっさと出て行けよ、『無能なアルくん』」
あ‥‥‥?
バカ兄貴‥‥‥もといギルバートか。
「アンタはこの家の恥だわ。二度とこの家に足を踏み入れないでちょうだい、このクズが!!」
ギルバートの母親、ブリトニーのババアまで‥‥‥。
俺とギルバートは異母兄弟。俺の母親は幼い頃に亡くなってしまった。
三人揃って剣を構えて俺に襲い掛かってきた。三人とも剣の腕が熟達した一流の剣士だ。
対するこちらは素手‥‥‥。勝てるはずがない。
クソ親父の剣が俺に向かって振り下ろされる。どう考えても避けられない。こういう時は剣閃がまた妙にゆっくりに見える。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「うわぁぁぁー!!!!」
辺りはまだ暗かった。ここは宿舎、俺はベッドの上だった。
「はぁ‥‥‥、またあの夢か‥‥‥」
起きて着替えを探す。寝汗でびっしょりだ。
あんな家、もうどうでもいいのに‥‥‥。俺はいつまであの家に囚われるのだろうか?
せっかく昨夜は気分良く眠れたはずなのにな。
考えても仕方ない。
二度寝する時間もないし、さっさと着替えて飛竜の世話をしないとな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
半分ボーッとしながら飛竜の餌(上)を用意する。飛竜達はがっついて食べてる。相変わらずいい食いつきだな。
「アル、こっちちょっと手伝って!!」
「はーい」
つるっ! バターン!!
飛竜の糞を踏んで滑って転んでしまった、くっそ。糞だけに‥‥‥、いやうるせーよ。
「アル、大丈夫? 先に洗ってきたら?」
「ごめん、そうするわ」
「この間支給された魔法水、使っていいわよ」
「うん、ありがとう」
魔法水とは水の魔力を蓄えた魔石を利用した魔道具から出てくる水の事だ。特に消臭、消毒に効果があるのでこの職場ではたいへん重宝されている。先日のレースの優勝の賞品として支給されたみたいだから最近の話だけどな。
「ふぅ‥‥‥」
ため息を吐きながら手を出して洗おうとして右手に魔法水がかかった瞬間‥‥‥
【合成しますか?】
‥‥‥来た。こんなタイミングで?
このスキル【合成】は両手で素材?に触れている状態だと声がするのが条件ではないかと仮説を立てている。
右手には魔法水、左手には‥‥‥飛竜の糞?
えっ‥‥‥、こんなものまで素材になるのかよ?
いや、やってみるか。【はい】
パシュッ!!!!
右手も左手も綺麗になった。良かった。
出来たものはなんだろう、コレ?
ポーションのように手の中に収まるくらいのサイズの瓶で中に液体が入ってる。
ん‥‥‥ちょいまてよ。
コレをまさか‥‥‥飲むのか?
ふう、冷静になれ、アルフレッド。
元の素材は飛竜の糞だぞ。
一応試しに蓋を開けて嗅いでみた。
「ファッ!!!??」
いや、クッサ!! 臭えぇぇぇぇ!!
うわ、やだ。なんだよ、これ!?
すぐ栓を閉めた。
ムリムリ無理無理、こんなの飲めるはずないわ。
「アルー? どうしたのー? まだ〜?」
やっべ、呼ばれた。詳しい検証はまた後でいいや。
「今、行きまーす!」
飛竜の糞ポーションをそのままポケットにしまって俺は仕事に戻った。
いや、しかし本当に臭かった。まだ匂いの粒子が鼻の奥に残ってる気がするわ。
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