第14話 俺が選ばれた理由

-side フィル-


 

『アーティファクトダンジョンを攻略するのだ〜』

「キャンキャン!」

「ギャアギャア!」



 ダンジョン工房内を一通り見た俺たちは、工房でアーティファクトを作るためにアーティファクトダンジョンを攻略する事にした。

 ラピスとリルからは楽しみ〜という感情が伝わってくる。どうやら、やる気満々のようだ。

 正直、俺だけだと心許ないから、ラピスとリルがいるのはかなり心強い。

 というか、ダンジョン攻略で2人が手伝ってくれるのって普通にチートだと思う。



 工房内転移で早速着いたので、門を開ける。



「おお〜ここが。珍しい鉱物とかも沢山あるんだな」

『そうなのだ〜アーティファクトに必要な素材が自動で生成されるダンジョンなのだ〜』

「やばすぎる」

 


 今まで突拍子のない事が起こりすぎて感覚が麻痺していたが、そもそも、世間一般的にはアーティファクトを作れる事自体がとんでもない事だ。

 アーティファクトとは、神秘の力が宿っているマジックアイテムだ。つまり、それを作る素材もまた特殊で珍しく、滅多には手に入らないので高価なものばかり。

 それが、自動生成されるとはどういうことなのか。実家の工房の金勘定をしている俺はその場で即座にそろばんを弾く。

 うん、やばい。



「それって、素材を外に持ち出す事もできる?」

『もちろんなのだ〜』



 尚更やばいことになるな。これは。

 とりあえず、市場を壊さない程度に慎重に実家に持って帰ろう。

 ちょっとしたプレゼントとかだったら、父さんたちはきっと喜んでくれるはずだ。

 何せ研究大好きな人たちだから。

 ただ、まだダンジョン工房の詳細については秘密にしよう。流石にこれが公になれば、国やら貴族やら大商人やら教会やら研究機関やら……ありとあらゆるおっかない組織に狙われてもおかしくない。

 少なくとも個人で手に負えるような案件でないのは確かだ。



「まったく……エレメンタール様もとんでもないものを押し付けたものだ」

『同感なのです〜だけど、人選的に納得でもあるのです〜』

「納得?人選?」



 失礼だけど、そんなことができるような能力のある神様のように見えなかったけど……


 

『失礼すぎるのだ〜フィル様はエレメンタール様を舐めすぎなのだ〜まあ、舐められる原因はエレメンタール様にあるから自業自得ではあるのだ〜南〜無〜』

「ドライアドさんが1番舐め腐ってない?」



 何が、無〜無〜だよ。しかも、全然棒読みで全く心がこもってないし。


 

『まあ、別に事実だから否定はしないのだ。そんな超絶どーでもいいことより全然もっと重要なことがあるのだ〜』



 お、おう。今、舐め腐ってることを超絶どーでもいいって言い切ったよ、この人。いっそ清々しいな。


 

『エレメンタール様があなたを選んだ理由、なんというか、フィル様は欲がないのだ〜』

「え?」



 一応、それなりに安定して生活したいなあとか、決まった休日が欲しいな〜とかの欲はあるけど。



『そう、それなのです。フィル様は……なんというか、自分のやりたいことに執着があまりないような感じなのだ〜』

「ふむ?」

『元々、興味分野が幅広いのかもしれないからかもしれないのだ〜。だから、こう……地位名誉財産基本全てに興味がなさそうなのだ〜』



 まあ、確かに?それだけ聞くと、確かに俺が選ばれる可能性について納得できる部分がある。



「けど、別に俺は清廉潔白を目指しているとか、品行方正が特別にいいとかではないぞ?」

『それを胸を張って言わないで欲しくはあるのだ〜開き直るななのだ〜』

「唐突など正論パンチきた」



 グサッ!サクッ!と軽快なテンポで貫かれるマジレスだ。

 


『でも、そういう飾らないありのままのところが魅力的だとも言えるのだ〜それを長所にして、武器として磨いて欲しいのだ〜』

「うっ……あ、ありがとう」



 今度は急に褒められて照れてしまう。



『まあ、余談はさておいて、早速素材集めをするのだ〜ちょうど、あそこの魔物を倒したら後ろにある鉱物を倒せそうなのだ〜。さっさと、倒すのだ〜』

「分かった」



 冒険者クランの職員時代、一応、ダンジョン研修は受けてある程度までは戦えるように扱かれたはずだけど、なんせブランクがある。あの時、一緒に付き添ってくれた勇者シオンはもうここにはいない。

 今度は自分が彼がいたポジション、最前線で戦うし、若干心配だけど、頑張るか。



『グズグズ言い訳してないでさっさといけなのだ〜!』

「え……っと……っと……っと、うわっ……!』



 そんなことを思っていると、ドライアドさんにいきなり最前線に突き飛ばされたっ!




「ななな、何してくれとんじゃーー!」


 


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