第12話 物騒だな
―side フィル―
「クエスト?」
『今朝届いているはずなのだ〜』
確かに、そういえば今朝方、ステータスウィンドウみたいなものにレベルを上げてくださいって出てた気がする。すぐに消えてしまったので気のせいかとも思ったがあれはそう言うことだったのか。
『そうなのだ〜。ステータスウィンドウのようにダンジョンクエストと言うふうに心で唱えると出てくるのだー』
ドライアドさんの言った通り、ダンジョンクエストと心の中で唱えると、ウィンドウが表示される。そこには色々なダンジョンに関する詳細情報が書いてあった。
◯小クエスト◯
アーティファクトダンジョン:Lv1。レベルを上げるには個々の素材を使ってアーティファクトを1つ作ることが必要。
「そういうことか。近くにいる魔物を倒すして、アーティファクトを作るとレベルが上がって大きくなっていくってこと」
ふむふむ。えっ……って事は俺、ここにいる敵意のない魔物を倒さなければいけないって事?
『そういう事なのだー。まあ、敵意を持っていないとはいえ、魔物は魔物なのだー。思い切って、倒して倒して倒しまくるのだー』
「おっしきた!やろうやろう!」
『血も涙もないのだーこのダンマス』
確かにダンジョンマスターとして、自分が生み出した魔物をサクサクと倒しまくるのには思うところもあるがそれはそれ、これはこれ。
『まあ、そもそもダンジョンマスターは冒険者を呼んで、魔物を倒して貰うことが仕事なのだ〜。そこにあるのは、自分倒すか、他人に倒して貰うかの差だけなのだ〜』
「そう!そうなんだよ!それが言いたかった」
どっちにしろ、ダンジョン内の魔物はやられる運命にある。け、決して俺が魔物との戦闘が冒険者クランい入る前から大好きで、戦いたいからとかではない。
『怪しいのだ〜。戦闘狂疑惑あるのだ〜』
「まあまあ、そもそも冒険者なんて職業戦闘が好きではないとできないから」
まあ、自由すぎる職業だから好きだけでも続かないと思うのは確か。冒険者には、継続力とか忍耐力、あとパーティーリーダークラスになるとコミュニケーション力とか、マネージメント能力、金銭管理、スケジューリング能力、依頼先との仲介など様々な能力が求められる。クラン職員はその一部のスケジューリングとか金銭管理、依頼先との仲介の部分を冒険者の代わりに行うことが仕事だ。
そんな能力の中でも1番大事なのが戦闘能力である。結局戦闘が強い奴がなんだかんだで偉い。戦闘が強いと多少他がダメでも誰かがカバーしてくれたりする。勇者とか他のSランククラスになると、代わりがいない場合もある。だから、強いことは大切だ。そして、強いやつの大半が戦闘狂である。そうではない人もいなくはないけど……そう言う人は大体が国に支えている。
『それもそうなのだ〜。主人に魔物への慈しみのあるまともな人間性を期待したのが悪かったのだ〜』
「おいっ!」
そもそも、ダンジョンで生み出される魔物は野生の魔物とは全然違う。ラピスやリルみたいに野生の魔物は生きて意思を持っているけれど、ダンジョンの魔物はスタンピートが起こって、ダンジョン外に行かない限り、意思を持たない。一応、スタンピートの時の魔物は、攻撃的な意思を持って動いている。そして、一旦スタンピートを起こした元凶を倒すと、それ以外のダンジョン産の魔物は一気に冷めてダンジョン内に戻っていく。結局ダンジョン産の魔物はなんの感情もないので、淡々とひたすら処理するという考え方は、1番単純で分かりやすい。
『ダンジョンマスターもダンジョンのスタンピートに対して対策しなければならないからその考え方はとても合理的なのだ〜。いざとなったら冒険者ギルドの人たちが総出でスタンピートを押さえてくれるけど、本来、日常的に魔物を間引いて、適切にダンジョン運営をして、スタンピートを抑えるのはダンジョンを運営しているダンジョンマスターの仕事なのだ〜』
「そうなのか」
てっきり冒険者の役目だと思っていた。ダンジョンマスターも意外と大変な仕事だ。
『ま、まあ、大抵ダンジョンを運営しているダンジョン精霊や魔族なんかは、そもそも人間に興味がなかったり、人間を滅ぼそうとしていたりするので、管理を怠っているケースが多いのだ〜。ちゃんとやってればなんやかんやで大丈夫なのだ〜』
「物騒だなおい」
そんな物騒な裏話、聞きたくなかった。
『まあ、そんな感じなのだー。ちなみに、その途中で主人の鍛治レベルが上がると、ダンジョン工房のレベルが2に上がのだー。試しにダンジョン工房の部分をタップしてみるのだー』
そう言われた俺は、ダンジョン工房クエストと書かれた部分をタップする。
◯大クエスト◯
ダンジョン工房Lv1。鍛治Lv1。レベルを上げるには鍛治レベルを2にしてください。
ふむ。さっき、小クエストと書いてあったから、大クエストもあるのかな?と思ったがそう言うことか。
大クエストは、ダンジョン工房の種を育てること。小クエストはダンジョン工房が生み出したダンジョンを育てていくってことか。
『そう言うことなのだー』
「ちなみに、ダンジョン工房のレベルが上がると何ができるの?」
『設備が整って作れるものが増えるのだー。今はアーティファクトと言っても簡単なものばかりしか作れないけど、レベルが上がるとヤバいアーティファクトが作れてしまうのだー』
「ヤバいアーティファクト……」
それこそ、古の時代にあったとされる魔導大砲とか超高性能ゴーレムとかだろうか?
考えてきたら、ワクワクしてきた。
『やっぱり、考えることが戦闘狂なのだー。物騒すぎるのだー』
「ちっ……ちがっ……今のは違うだろう」
『違わないのだー。その証拠に後ろのお二方が全力で頷いているのだー』
「えっ……そう?」
「キャン!」
「ギャア!」
自覚はなかったが、ラピスとリルが全力でコクコクと頷いている。
「そこまで全力で頷かなくても……」
うーん。もうちょっと従魔2匹の好感度をいきたい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます