第2話 実家の鍛冶屋でステータスについて考える

-side フィル-



 クラン爆散のニュースを知り、職場を失った俺はとりあえず地元に戻る事にした。

 勇者が追放されて以降、ブラッククランになってしまった職場は忙しくて帰れていなかったのもあるし、久しぶりに会う家族や幼馴染がどのようなことをしているのか気になったのもある。



「ただいま〜」

「あら?あんた!新聞見たよ!やっぱり帰ってきたのね!」



 元気な母親--カリーナが出迎えてくれる。赤い髪にエメラルドグリーンの美人なお母さんだ。



「次の仕事はもう探しているのかい?転職にも苦労しそうだよねえ。爆散とは言え優秀な勇者を追放したクランの手下と見られるわよねえ」

「うっ……」



 流石我母上、ど直球すぎる。なかなかにノンデリだ。

 自分でも自分の判断の遅さがここまでの事になるなんて思いもしなかった。

 転職できなくとも、早い段階でとりあえずクランを脱退しておけば、風評被害はほとんどなかっただろう。

 それこそ、実家の鍛冶屋に形だけでも転職しておけば良かった。なぜ、思いつかなかったんだろう。ゴテゴテだ。



「俺は真面目に仕事を淡々とこなしていただけなのに……、理不尽だ!」

「そうだけどねえ……、そんな事を嘆いていても仕方ないわよ。地に足つけて変化に対応しながら生きなきゃねえ」



 流石我が母親、本当に容赦ないなこの人。

 ごもっともだけれども。



「そういえば、タイツも心配していたよ。早く実家の家業継げばこんな事にはならなかったのにって」



 ライルというのは俺の父だ。

 コネで入ったとか言われるのが嫌でクラン……、どころか、ギルドの人たちには誰にも言っていないが、父は著名な鍛治師でうちの実家は鍛冶屋を営んでいる。

 父はお金のためというより、その人を見て仕事をするというタイプの職人なので、別にとても裕福な家という感じではないが、生活には困っていない。うちの財政は平均くらいだろう。



「そうだ!帰ってきたんだったら、うちの金回りのこと手伝って!あんたそういうの得意でしょ!?」

「はいはい、分かったー」



 ちなみに、鍛冶屋の財政面も俺が仕切っている。当初、両親に任せていたがどちらもあまり得意ではなかったらしく、俺がそういうの得意だと知ると喜んで放り投げてきた。



「ついでに鍛治もこの機会に学んだら?スキル持ってるんでしょ?」

「うーん……これから会うから、父上に頼んでみよっかな」

「おお!やっと少しはやる気になったかい!そうしなー!」



 スキルは大半が運だが一部遺伝によるスキルもあり、俺のスキルも父から引き継いだ鍛治に関わるものが沢山ある。



 現在の俺のスキルステータスはこうだ。

[ステータス]

◯魔法:火魔法Lv2、水魔法Lv2、風魔法Lv3

◯戦闘:剣術Lv3、弓術Lv3、槍術Lv2、体術Lv3、盾術Lv2

◯サポート:回復魔法Lv2、鑑定魔法Lv4、補助魔法Lv2

◯クラフト:武器制作Lv1、防具製作Lv1、修理Lv2、強化Lv1



 ……うーん。我ながら凡人。

 Lvは5が一番高く、1は初心者、2は凡人、3は才能あり、4は熟練者、5は達人。

 唯一、小さい頃から武器を見る時に使っていて、仕事で良く使っていた鑑定魔法だけは熟練者になっている。

 それ以外は良くも悪くも平均。

 冒険者だったらDランクくらいだろうか?

 中の上っていう感じ。冒険者なら不十分だが、クランの職員でこれだけの戦闘力を持っていたら充分だろう。

 魔法系戦闘系のスキルは母親が得意だということと、運が良かった事もあり結構恵まれた方だと思う。



 冒険者になるでもよし、鍛冶屋になるでもよし!というステータスをしていて結果選べず、安定してそうな仕事を選んだというわけだ。



「こんな状況だし、安定な仕事なんて選べない。いい加減どっちかになるべきか……」



 そう考えた俺は父上のいる鍛治工房に向かうのだった。



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