第6話侵入者(2)
「それで?侵入者は何人なんだ?」
「はい!三人です!いかがしましょうか!?」
正直今はチュートリアルのようなもので侵入者など入ってこないと思っていたので対応に困る。
「普通ゲームを元に作ったのなら準備期間くらい用意するだろ」
「あ、あはは……。実はさっきのガチャにこの洞窟を隠蔽するための結界分の神力も使っちゃっいまして……」
「おいおいおい、マジかよ……」
頭を抱えたくはあるがあの十連がなかったら裸で異世界に放り出されていたのも事実、こいつを責めるのはお門違いというものだろう。
「ごめんなさい、ここは立地的にも準備期間くらいは稼げるだろうと思っていたのですが、まさかこんなに早く見つけられるなんて思ってもなくて……」
「いや、いいよ。それより侵入者をどうやって撃退するのかを考えよう」
「はい!……あっ!それでしたら一つご提案が!」
「提案?」
「はい!先ほどのガチャで獲得したゴブリンの召喚石を使ってみてはいかがでしょうか!」
そう言ってレイシスは自身と同じ大きさの半透明の青白い石のようなものをガチャ台のテーブルに召喚した。
「こちらがゴブリンの召喚石になります!使い方は簡単でこの石を割ることによってゴブリンを割れたその場に召喚することができます!あっ、軽く握りつぶすだけでも簡単に割れるので注意してくださいね!」
レイシス注意を受け、慎重に目の前にある召喚石を拾い上げてみる。
持ち上げてみてわかったのだがとても軽い、持ってはいるが重量を感じないので不思議な感覚になる。また召喚石を光に照らしてみると中に縮こまっている何か、生物のようなものが見える。
「これが召喚石か……」
「はい!ガチャで手に入れた召喚石は全部私が持っているので必要な時はいつでもおっしゃってください!とりあえずそのゴブリンを一度呼んでみましょう!」
召喚石を軽く握ると簡単に握るつぶすことができ、瞬間眩い光を放ち、目の前に小柄で邪悪な顔つき、全身緑色の姿をしたよく見るゴブリンがその場に現れた。
「ギギッ!」
「おお~まさしくゴブリンですね!」
「ああ、そうだな」
見た目は完全にゴブリンで武器などは一切装備しておらず腰布一枚でその場に立ち尽くしている。
「ちょっとステータスを見てみるか」
瞳を二回瞬きするとゴブリンステータス情報が赤裸々に映し出された。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:なし 種族:ゴブリン 年齢:なし 職業:なし 状態:隷属
称号:なし
スキル:なし
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……」
まあ知っていた。知っていたけど弱すぎる。すべて一桁台なのは当たり前だとしてスキルもなしとなると運用法が大きく限られてくるな。
「弱っちいですね」
「まあゴブリンだしな、そういえば状態が隷属となっているがこれはこちらの言うことに逆らったりすることはないのか?」
「ええ、この召喚石で召喚されたゴブリンには自我というものがありません。ですのでどんな命令、例えば捨て駒のような使い方でも素直に命令を遂行するんです。どちらかといえばゴブリンというよりもゴーレムだという認識があっていると思います!」
「ゴーレムか……」
弱いが命令に背くことのない駒だと考えればいろいろな使い方ができる。ただそれにはデメリットもあるわけで……。
「もちろんですがデメリットもございます。こちらから逐一命令しないと自分から動くことがありません。ゴーレムなんですからね。ですので
「まあそうだろうな」
「一応命令の距離があり今はまだ直人様から半径三百メートルを離れると物言わぬ人形状態になってしまうのでその点も注意してくださいね」
半径三百メートルか、短いな。それに多分細かな指示はレイシスが言ったように近くで逐一命令しないことには聞くことはないだろう。
「とりあえず何体、ゴブリンを召喚しますか?」
「とりあえず……」
この洞窟はどうもまだ出来たばかりで今自分たちがいる場所まで外からここまで直通の一本道らしい。
そんな場所ではまず奇襲は成立しないだろう。また百七十センチの自身の身長一点半分ほど、2.4メートルほどの高さしかないため唯一のDランク、ゴブリンチャンピオンは自身が作った設定に基づけば出すことは難しい。
ゴブリンチャンピオンは確か大きさ三メートルを超える巨体だったはず、こんな場所で出せば生き埋めになるだろうし、出せても本来の力は出せないだろう、むしろ戦闘の邪魔になる。
だからとりあえず今出すのは……。
「ゴブリンアーチャーを二体、それとゴブリンをもう一体出してくれ」
「かしこまりました!」
そうしてレイシスはテーブルの上に三つの召喚石を出す。
三つの見た目に変わりはなく砕くと先ほどと同じように眩い光を放ちゴブリンが三匹召喚される。
「「ギギギッ!」」
見た目は同じだが違いがいくつかある。まず一つはゴブリンアーチャーは弓を携え軽くではあるがしっかりとした装備をしていること。また腰にも短剣を装備しており今ある武器の中では最高の物だろう。
瞬きを二回し、ステータスを確認してみる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:なし 種族:ゴブリンアーチャー 年齢:なし 職業:なし 状態:隷属
称号:なし
スキル:なし
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
どうもアーチャーは通常のゴブリンよりステータスは高いようだ。ただやはりどれもステータスは一桁台、ゴブリンのステータスはどう頑張っても低いらしい。
とりあえず裸のゴブリン二匹にアーチャーが持つ短剣を持たせこれで戦闘の準備は完了する。
準備を終えるとレイシスが慌てた様子で直人の頭の上から飛び降りる。
「た、たいへんです!侵入者の一人がもの凄い速さでこちらに接近してきています!」
「マジか!」
「はい!い、いかがいたしましょうか!?」
「とりあえずここで迎え撃つ」
「了解です!――――っ!まもなく見えてきます!五……四……三……二……一!」
カウント終了とともに目の前にフードを被った全身黒ずくめのアサシンのような男が現れた。
多分この世界で初めて会う人間、もしかしたら話合いができるかと期待してみたがこちらを見て驚きの素振りを見せた後、瞬時に腰から二本の短剣を装備し、戦闘態勢に入る。
多分戦闘になることは避けられないのでにらみ合いで硬直している内に
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
名前:アル=ヒュルズ Lv.23 種族:人間 年齢:21歳 職業:アサシン
状態:緊張、不快、困惑
称号:アスワルド流アサシン術免許皆伝者、短剣使い、ウルフスレイヤー、B級冒険者
スキル:疾走、暗視、バッグスラッシュ、罠解除、危機察知
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ステータスが明らかに高い、それにゴブリンや自分にはないもの、レベルという概念。ただ今必要な情報はやはりスキルか。
スキルの詳細を確認してみるとこの人間一人でこちらを壊滅させられるだけのスキルを所持している。
【疾走:一分間自身の
【暗視:暗い場所で昼間の時のように見ることができる。また視力を上げる】
【バッグスラッシュ:相手の後ろへと瞬時に移動して背中を切り裂く】
【罠解除:仕掛けられた罠を解除できる。またこのスキルで鍵開けなども可能】
【危機察知:自身への不意打ちに対して反応することができる】
(えげつないな……。特に疾走とバッグスラッシュというスキル、疾走というスキルで一瞬でこちらに距離を詰められてバッグスラッシュというスキルを決められてしまったら多分即死する。なら勝負を決めるならこちらは一撃に決めなければいけないか)
「レイシス、石」
「―――?……!!」
直人は右手を後ろに回しレイシスに合図を送る、最初は理解できず首をかしげていたがこちらの思考を読んだのかこちらの意図を理解して右手にゴブリンの召喚石を手に召喚する。
相手はこちらの動きを警戒して行動しあぐねている。
まあ多対一だ、それに鑑定も持っていないようなのでこちらが弱い相手だと認識できていないらしい。ならばこちらが先手を打つ。
右手に手にした召喚石を相手の顔目掛けて投げつける。
『ゴブリン、命令だ。目を潰れ!』
投げつけた直後に目をつぶるようにゴブリンへと命令しまた自分も目をつぶる。
相手はこの行動に疑問に思いつつも即座に右手に持つ短剣で召喚石を切り裂く。
瞬間割れた石から眩い光を放つ。暗闇の洞窟内、そこで灯りを持ってないことを見るにスキルの暗視を使っているのだろう。暗い場所でも昼間のように見える目、ならその目にいきなり強い光が飛び込んできたらどうなるか、一時的にではあるが視力を失う。
「うぐぅあああぁぁッ―――――!!!」
『ゴブリンども、目の前の敵を……殺せ!』
相手が両目を抑え悶絶している隙をつきゴブリンで攻撃する。
「ぐっ……くそっ!」
スキルの危機察知の影響だろう目が見えていないのにも関わらず三匹のゴブリンからの攻撃に紙一重でかわし続ける。
「ギッ!」
「ギギギッ!!」
短剣で攻撃をガードしたりもしておりやはりまともに戦っていてはこちらが即座に全滅させられていただろう。
だからこそ後ろにいる仲間と合流されれば勝つことは困難になるだろう。だから短期決戦で仕留める。
アルという冒険者はうまく攻撃をかわし続けてはいるがそれはスキルのおかげだろう。こちらにはアーチャーが二匹後方で構えている。目が見えない状況下、うまくかわし続けていても目が見えないため無茶な動きも見られ体力はどんどん奪われ疲弊していっている、そんな中アーチャーの追撃が加わればかわすことはできないはずだ。
相手が無茶な避け方をしたその一瞬をつきアーチャーに命じて矢を放つ。
「「ギギッ!」」
それは綺麗な弧を描きアルの脳天と心臓を綺麗に射貫く。一撃、その二矢で確実に相手の命を狩りつくした。
アルが持っていた短剣が地面に落ち、体が地面へと横たわったことにより直人の初めての初戦は完全なる不意打ちという形ではあるが勝利で幕を下ろした。
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